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厨二病の真骨頂は転生後  作者: 琴熊
11/12

手ほどき魔法の威力

 日が少し落ちて、空は明るさを残しながらも遠くの山は影に覆われ始める刻。

 夕立が降りそうな薄暗い雲の下を、鳥が群れをなして低く飛んでいる。


 雨が降る前に手ほどき魔法を試しておきたい。

 ご飯の準備もあるし、あまり時間はとれないな。


 ジーマと2人で家から数百メートル離れた広場までやってきた。

 広場とは言っても草むらが開けただけのただの大きめの平地だ。

 もし万一魔法が暴発して草にでも燃え移ったら後処理が面倒だからな。


 時間もないので早速実験体のジーマに正面に立ってもらって、ミルの魔法を受ける体勢を整えてもらう。

「連続でいくよ、ジーマ!」


 ジーマは面白そうにニヤッと笑って、両手を前に構えて腰を少し落とした。

 ミルも心身にオーラを満たして準備を整える。


「やはり魔力の流動が息をするようにできるようになっている、恐るべき成長率…」

 感心するジーマに向けて、まず火属性の手ほどき魔法を3種類使う。


【火花】シレークス

 火花を発生させて火種を作り出す魔法。


【熱伝導】カロルダクト

 空間や物質に熱を与える魔法。


【軽炎操作】イグニス

 炎をある程度操作する魔法。シレークスで発生させた火種を主に使用する。



 まずシレークスで火花を散らす。

 この時点で既に大きな炎弾が出来上がっているのだが、この状態で攻撃を飛ばすと制御できないのだ。

 こないだは家に飛んでったし…


 そこで軽炎操作魔法イグニスを使用すると、ランダムに弾け飛んでいた炎弾がミルの意思のもとに統率されるのだ。


 何度も言うが、自分で作った魔法だからイメージはバッチリ。

「イグニス!」


 ミルの詠唱とともに花火のように広がっていた炎弾が再び一箇所に集約され、一つの大きな炎となって宙に留まった。

 ミルの思考がかなりの精度で炎の動きに伝わっている。


「そのままジーマに突撃!」

 ミルが念じると、炎はその場で高く燃え上がり、ジーマのいる方向へと真っ直ぐに伸びていく。


 ジーマはその直線的な攻撃を容易に躱すが、ミルの操作は終わらない。

 ジーマが避けた方向に炎の軌道を修正すると、再びジーマへと火の手を伸ばす。

 しつこく追い回しているうちにミルも炎を動かす感覚をつかんできた。


 ジーマの油断をついて炎を壁状に広げた。

 これで逃げ場はない。

「どうだ!降参するか!?」


 ミルが問いかけると、ジーマはその言葉を鼻で笑い飛ばして大きく息を吸い込んだ。

 息を吸い終えたかと思えば、口から高圧で吹き出す。

 そのブレスでミルが作り出した炎の壁は容易く吹き消されてしまった。

 ミルの負けだ。


 くそぅ、バケモンめ!

 自身あったんだけどな…

 やっぱり炎の威力がまだ低いらしい。

 …まあ手ほどき魔法だから仕方ないし!全然落ち込んでないし!



 悔しさを噛み殺して次の魔法を繰り出す。

「カロルダクト」


 熱伝導魔法。

 魔力を純粋な熱に変化させる。魔力を高精度で練るほどに高温を作り出せる設定だ。


 まずは気温を操作してみよう。

 魔力に宿る熱を全方位に放出するイメージに集中する。

 広範囲だと集中力がいるので、ひとまずこの広場だけの気温を上げてみる。


 ミルは使用者特権で熱伝導による自身への影響をオンオフ切り替えることができる。今はオフにしているから、ミルには気温の上昇が感じられない。

 ジーマの様子はどうだろうか?


 うん、やっぱり平気そうな顔している。ミルの攻撃はどうやっても効かないな。



 何度くらいまで上がってるのかな?

 あれ?なんか地面が割れてきてるような…

 昔テレビで見た干ばつ地帯みたいになってる。


 まさか気温が上がりすぎて地中の水分が蒸発してたりなんてするわけないよね?

 それだったら地表百度超えてるってことだよね?ありえないよね。

 それが、あり得たのだ。

 突如地面に亀裂が走ったかと思うと、その中から大量の水が吹き出た。

 それはジーマを直的した。


「ぐあぁー!」

 何やらダメージを受けている。

 水道管の水が地中で沸騰し、噴出したのだ。

 そりゃあ熱かろう。


「ミル君、参ったからそろそろ解いてくれないか…?」

 よし、ジーマに勝った。

 いくらミルの攻撃がジーマに影響しないとは言っても、こういった間接的なダメージは与えることができるらしいな。

 熱湯や地割れによるダメージで降参してるし、魔力を抑えて気温を元に戻してやろう。


 あ。

 この魔法って気温上げることはできても冷ますことも現状復帰もできないんだった。

 魔法を解いた途端、広場に留まっていた高温の空気が外部に流れ出した。

 熱は温かいほうから冷たい方に流動するから、広場一帯の灼熱の空気はその周囲の空気と循環してゆっくりと元の気温に戻る。


 つまり、外部に熱風が吹き出るわけだ。

 広場の周りの草が萎れていく。

 そこまで計算して魔法使ってなかった、こんな弊害を及ぼすなんて…


 いや、呑気に見てる場合じゃない!

 ヤバイヤバイ!

 広場を中心に草原の枯死がどんどん広がっていく。

 熱による侵食は凄まじいスピードで家まで広がり、高い草が倒れてゆく。

 見晴らしが良くなり、広場から家が見えるようになった。

 ということはもちろん家にいるあのお方からも、広場の様子とこの惨状が見えるということだ。


 うん?遠くてよく見えないが、家から人影が現れたみたいだ。

 草を踏み分けてこっちに歩いてくる。


 …シュリアだ。

 ヤバい。ヤバすぎる。

 この状況、言い訳もできない。


 ジーマは疲れて倒れている。

 ミルは暑くもないのに汗が止まらなくなった。


 のしのしと歩み寄るシュリア。

 数百メートルあったはずの距離を歩いてきたはずなのに、もうすぐそこまで来ている。


 よし、逃げよう!


 ミルは後ろを向き、走って逃げ出そうとした。

「どこにいくの?」

 後ろから肩を掴まれた。


 捕まった!!

 シュリアの顔を見るのが怖い…

「ちょ、ちょっと散歩に….」

 自分でもわけのわからない言い訳をしていると、シュリアがこれまた思いもよらない発言をした。


「ジーマを倒したのね、おめでとう」

 …え、今それ大事なのか?


 辺りは灼熱地獄、草木は枯れ果て、大地は干ばつ状態。

 その中で、ジーマを倒したとか一番どうでもいいことを言い始めた。


「私の呪いに穴があったのね、迂闊だったわ。あなたの勝ちよ」

「あ、そうなんですね…ありがとう…」


 しばらくシュリアの出方を伺う。

 シュリアは悔しそうに唇を噛んでいるが、別に怒っていなさそうだ。


「シュリア、この気温とか枯れ草については聞かないの?」

 ミルの方から聞いてみる。


「どうせ魔法の特訓でもしてたんでしょう?

 初級の魔法のわりに派手にやったわね」



 確かにこの惨劇、手ほどきのレベルじゃない。

 熱伝導にしても、エアコン適度のつもりで作った魔法だ。

 なにも干ばつを起こそうなんて思って作ってない。

 俺って実は結構怪物なんじゃない…?

 自分の才能が怖いな。



「うん…そうね、でも自分でやったんだから草原はちゃんと元に戻して帰ってきなさいよ」


 えっ?

 何か手を貸してくれるのかと思ってた。

 自分でなおせ?

 この荒地を緑豊かにしろと?


 でも早々とシュリア帰っちゃったし…


 やるしかないか!

 ものは試しだ。


 ちょうどいい手ほどき魔法があるのだ。


【草本創生】フロンス・木属性

 魔力で自然の力に干渉し、草木を生やす。


【水滴】ロスラクリマ・水属性

 水滴を凝結させ、水分量や湿度を操作する。



 まず水滴を地面に浸透させて大地の潤わせ、草本創生で草木を復帰させる。

 脳内でイメージはできているので、早速魔法を実行する。


 干ばつした大地は広場を中心にだいたい半径80メートルくらい。

 ミルの尋常じゃない量の魔力を360度に広げて、その大地を覆い尽くす。

 ここまでの量の魔力を緻密に操作することは、常人にはそうそう真似できない芸当だ。


「ロスラクリマ!」

 広げた魔力に慎重に水滴が凝結するイメージを流し込み、実体化した水滴を一斉に大地に降らせる。

 内部まで浸透するまで待ち、続けて地中の湿度を上げていく。

 最初は苦戦したが、すぐに感覚を掴んで大地に潤いをもたらした。

 ミルはこうしてあっさり水滴魔法をもマスターし、大地を再生した。


 続けて草本魔法。

 水滴を振らせるために広げていた魔力を木属性に変換して、草木を育む自然の力と融合する。

 魔力とは自分の力だけではなく、自然から借りた力も含まれるのだ。


 その力の融合をミルは経験したことがない。

 ぶっつけ本番だ。


 大地のエネルギーに干渉してゆくのはあまりに感覚的で高度な技術。

 いくら天才のミルでも容易くできることではなかった。

 しばらくミルは自然に語りかけ続けた。

 大地のエネルギーを感じ取ることはできる。

 しかしどう力を借りるのか、どう干渉するのか、まだイメージができない。


 そんな時、フロンスの魔法を作り出した時のことを思い出した。


 高校受験の勉強でイライラしていた時だ。朝の登校中にどうしようもなくイヤな気分になって、その日は通学路の川の土手でサボることにした。

 その時、草の上に寝転んだんだっけ。

 そしたら風に靡く草の先っちょが首筋に当たってくすぐったくて、地面についてた手は草の汁がついてて、体が草の香りに包まれてて…

 この草はみんな生き生きしてるなって感じた。


 この生命力に感化されて、草本創生の魔法作ったんだった。

 今思えばなんて寒いこと考えてるんだ、中3の俺…


 しかし今はその寒い厨二理論が必要なんだ。

 この大地に俺は生かされている!そこに俺と自然の魔力の繋がりを見出すのだ!

 大地を覆うミルの魔力は次第に大地から発せられる力を蓄え始めた。

 まるで、その力を借りて魔力に生命力が宿されたように。


 ミルの魔力にはその時、確かに自然のそこはかとない生命力が託された。

 自然の一部となり、そこに干渉しうる存在となったことを自身も直感的に理解している。


 清々しいまでに澄んだ自然のオーラと融合した瞬間は快感そのもの。

 体内の雑味がゴッソリと取り除かれるような…

 ミルはしばらくそのオーラに酔ってしまったが、すぐに気を取り戻して魔法行使へと移行する。

「フロンス!」 


 広場に張り巡らされたミルの魔力が自然の力によって草属性に変換される。

 もともと何もなかった広場に、ポツリポツリと緑が見えはじめる。

 その数は次第に増えて、足元は低い草で一面覆われた。

 フロンス成功だ。


 しかし草が枯れた範囲は半径1キロにはなる。

 流石のミルもその範囲全てに魔力を膨張させて一度に草木を生やすことはできない。


「地道に歩き回ってやっていくしかないか…」

 そう肩を落としていると、シュリアが再びやってきた。


「そんな時間ないわよ、もうそろそろご飯にしたいんだけど」

 そんな時間か、気づけばもう空も暗くなりかけている。空模様も怪しい。


「草の枯れた範囲が広すぎて、全部元どおりにするのがちょっと厳しくて…」

 すると、シュリアがここにきてはじめてミルに魔法の使い方を教えてくれた。


「自然に干渉する魔法は、はなから魔力を広範囲に押し広げるんじゃなくて、こうする方が効率的よ」

 シュリアが手本に、自然と融合した魔力を手に集中させると、緑色の魔力の光球としてエネルギーが具現化した。

 それをそのまま地面に優しく押し当て、緑色の魔力をまるで地を這わせるように放射状に広げる。

 その波動に大地が沸き立ち、光の粒があちらこちらで舞い踊る。

 そうして波動の届くところ、みるみるうちに緑に萌え上がる。

 高い草木、潤った大地、なんなら元々なかったような可愛い花や蕾なんかも出てきている。


 なにこの人、神?

 そう見紛うほど鮮やかな魔法。

 圧巻のスピードとパワー、さすがシュリアとしか言いようがない。

 そして勉強になった。


 ミルが呑気にパチパチ拍手していると、「ミルもまだまだね」と一蹴された。


 そういえばシュリアは魔法を使うときに詠唱してないんだよな。

「詠唱しなくても魔法って使えるの?」

「詠唱という行為は、杖とかの魔法道具と同じで補助的な役割をもつの。

 決まった呪文とかはなくて、イメージさえできれば詠唱なんて何でもいいのよ。

 まあ私みたいに魔法が洗練されれば詠唱しなくてもそのままの威力で魔法が繰り出せるようになるんだけどね」


 へぇ、魔法って案外テキトーなんだな…

 律儀に呪文考えて詠唱してた俺が馬鹿みたいだ。

 ミルの秘術の書では【シレークス】など一つ一つの魔法に対応する呪文を考えていたが、正直あってもなくてもいいみたいだ。


 訓練段階では魔法を実際に使う感覚を得るために詠唱してもいいのだが、実践時はミルの実力なら無詠唱でもいけるだろう。

 うん、いちいち叫ぶのも恥ずかしいし…

 事実を知ってしまうと尚更だ。


 手ほどき魔法だけは訓練用に一応は呪文を残しておくが、簡易以上は呪文を撤廃しよう。

 単純に【炎柱】とか日本語で魔法の名前決めたほうが絶対わかりやすいし。

 手ほどき魔法に使用している呪文は、元の世界でラテン語やらアラビア語なんかを調べてテキトーにつけた名前だ。

 厨二はラテン語の響きが好きなのだ。

 でも時々意味がわからなくなるし、まず自分でつけた名前が覚えられなくてウンザリする。


 最初の訓練中は詠唱して感覚をつかみたいが、それが終わったら脳内イメージだけで簡易魔法を繰り出す特訓もしていきたい。


 ミルは魔力操作も魔法のレパートリーも問題ない。現時点では属性の苦手もないようだ。

 あとはやはり知識と経験が必要なのだ。

 そのためにも魔法学校に行って勉強する必要があるのだ。


 とにかく今のうちにシュリアから学べるものは学んでおきたい。

 気まぐれなシュリアからどこまで引き出せるかは未知数だが。


 色々あって、もう晩御飯の時間だ。

 結局火属性と木、水の一部分しか実験できなかった。

 でもどの魔法も手ほどきってレベルの効果じゃない、明らかにヤバめの威力があった。

 あまり軽く見ないで、使いどころを考えよう。


 そう心に決めて、残りの魔法は今度試してみることにする。

 さてそろそろ晩御飯の準備を手伝いに行かないとシュリアに怒られる。


 ジーマもすっかり回復しているようだ。

「いやぁ、一本取られましたなぁ!」

 苦しんでたわりにケロッとしてるじゃないか。

 こりゃぁ明日からもお相手お願いできそうだな。


 聞けばジーマは夏派じゃなくて冬派だそうで、暑いのはちょっと苦手らしい。

 なるほどそれは災難だったな、異常気象にしてごめん。

 むしろあの中でどうやって生き延びたのか…



 家に帰るとシュリアがちょうど料理を始めようとしている。スライムも手伝おうと三角巾をかぶって台所に入っていく。


 シュリアは野菜を洗おうと、蛇口をひねった。


 その時、あの冷静なシュリアが「きゃっ」と声を上げた。

 3人は何事かとシュリアの方に振り向く。


 シュリアはその場に佇んで呆然としている。

 近くにいたスライムが急いで駆け寄ると、シュリアの手が真っ赤に腫れているではないか。


「だ、大丈夫?シュリア!?」

 スライムも動揺してジタバタする。

 ミルもすぐに駆けつける。

「火傷?」

 どうやら蛇口を握って手を火傷したらしい。


 シュリアが涙目になっている。

 自身の治癒魔法を使うのも忘れるほどショックを受けているらしい。

「早く水で流せ!!」

 ジーマが慌てて蛇口を触り、同じく火傷する。

「ギヤァーッ!!」

「アホか!なにやってんだ!!」


 ミルは咄嗟の判断で氷属性の手ほどき魔法を繰り出す。

 …しゃあない、ちょっと恥ずかしいとか言ってる場合じゃないな。詠唱するか。 

「グラキエス」

 冷却魔法だ。

 熱を奪って冷気を与える効果がある。

 もちろんシュリアの身体の負担を考えて、効果はしっかり調整してある。


 そのお陰でシュリアの手にこもった熱はすぐに治ったが、まだかなり痛そうだ。


 こんな弱気なシュリアは始めて見たな。

 もしかして、実は打たれ弱かったりして?


 そうだ、治癒魔法があるんだった。

 ミルの木属性の回復再生魔法を使用する。

「…デアクラート」


 シュリアの手に翳して緑色の光球を発する。

 癒しの波動というイメージの魔法だから、形式はさっきのシュリアがやったやつを真似てみた。

 シュリアの手に生命力の波動が行き渡り、手の腫れが瞬く間に引いていった。

 もとの綺麗な白い手になった。

「よかった、成功した。傷も残ってないね」


「…ごめんミル、ありがとうね」

 シュリアが珍しく素直にお礼を述べた。

 よかったよかった。

 え、ジーマ?あいつは勝手に治すだろ。

 これ以上は恥ずかしいから呪文を叫びたくない。 

 横でのたうちまわってるけどとりあえず放置でいいだろう。


「それにしてもなんで蛇口が高温になったんだろう?」

 ミルとシュリアが推測していると、同時に全く同じ結論にたどり着く。

 シュリアは冷たい目でミルを見つめ、ミルはシュリアと目を合わせないように虚空を見つめる。


 水道管は川から川上から通されていて、ミルが特訓していた広場の地下にも繋がっていた。

 その真上で超高熱の熱伝導魔法を使った影響で水道管内部で水が沸騰、管は破裂した。

 しかし管が破裂する前に既に超高温の水は管を伝ってシュリアの家まで流れ込んでいたので、間接熱で蛇口まで高温に熱せられたのだ。


 つまりは完全にミルのせいなわけだ。

(あ、やばい。これはコロされる。)

 逃げようとするミル。


 シュリアは拳を握りしめて、笑顔でミルに迫る。

「あんた、覚悟はいいかしら?」

 しかし治療してもらったこともあるし油断した自分も悪いしと思い直して、ギリギリのところで自粛した。

 あの程度の温度、常に防護結界で体をコーティングしているシュリアなら本来火傷することはない。

 しかし料理するときはリラックスしてつい結界を解除してしまっていたのだ。

 いくらシュリアでも生身で触ればちょっとは熱い。


 本人は隠しているつもりだが、かなりビックリしていたようだ。

 そして、そんな姿を見られてものすごく恥ずかしかったようだ。

(怒るのもかえってみっともないし…

 私としたことがあんな凡ミスするなんて…

 消えちゃいたい…)


「とにかくあの危険な水道があるから悪いのよ」

 とゆうことにして、応急処置としてミルのグラキエスで蛇口と水道管を冷却して、なんとか使えるようにした。

破裂した水道管もミルの責任となり、すぐさま直しに走らされた。


 この日の晩御飯のハンバーグは心なしかミルの分だけが小さかった気がしたが、擁護のしようもなくミルの自業自得だ。


 これから魔法使うときは周りを確認するようにようにしよう…

 密かに反省するミルであった。


【手ほどき魔法】


〈火〉

○火花 シレークス [火花を散らして火種をつくる魔法]

○熱伝導 カロルダクト[熱を生み出し伝導する魔法]

○軽炎操作 イグニス[火をある程度操作する魔法]


〈水〉

○水滴 ロスラクリマ[水滴を作り出し水分量を操作する魔法]

○水砲 マイムアルマ[高圧で水を発射する魔法]

○軽水流操作 アグアウィテ[水をある程度操作する魔法]


〈風〉

○風圧 ウェントス[風で圧力を発生させる魔法]

○つむじ風 アウラ[真空を作り出す風を起こす魔法]

○飛翔 カエルム[魔力を飛行力に変換する魔法]


〈土〉

○土人形 ギグノゴーレ[土を捏ねて操作する魔法]

○鉱物創造 クレアナイト[魔力から鉱物を生み出す魔法]

○礫 ラピスクロペトゥム[石を操作して飛ばす魔法]


〈木〉

○草本創生 フロンス[植物を生やす魔法]

○回復再生 デアクラート[治癒や再生を行う魔法]

○吸収 アッキピオ[体力や成分を吸い取る魔法]


〈氷〉

○霜包 アルゲオ[霜や雪を作り出す魔法]

○冷却 グラキエス[熱を奪う魔法]

○霰 グラニソ[雪や氷の粒を周囲に振り撒く魔法]


〈毒〉

○滲毒 ウィールス[毒を生み出す魔法]

○解毒 テリアカ[特定の毒の抗体を作り出す魔法]

○毒霧 ヤートネブラ[軽毒を霧状にして流す魔法]


〈雷〉

○静電気 エレクポルトゥ[触れた物に電気ショックを与える魔法]

○電波 マウジュアルラディオ[電気信号を送る魔法]

○軽電流 フルーメン[弱い電撃を飛ばす魔法]


〈光〉

○蛍 ルシオラ[球状の光を発生させる魔法]

○小結界 モエニア[身の回りに防護結界を張る魔法]

○小光線 ルストラール[弱い熱光を発射する魔法]


〈闇〉

○黒霧 ザラーム[黒い霧を発生させる魔法]

○操影 イングリムザ[影を伸ばす魔法]

○幻投影 ファルサミラ[黒い霧に幻影を投影する魔法]




なお、面倒なので呪文はそのうち叫ばなくなると思われます。

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