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災厄の魔女  作者: ニムヒ
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災厄の魔女

 そこの旅人さんや、知ってるかね?

 この街の遠くから見えるあの森。

 その深く、陽すら覆い隠すほど鬱蒼とした暗い森の奥。そこには昔から魔女が住んでいるのさ。

 いつから住んでいるか、誰も知らない、謎だらけの魔女。この街に少しでも滞在するなら聞いといた方がいいよ。話の種にもなる。

 だから少しだけお金を分けてくれないかね?


 おお、ありがとう。


  さあ、続きを話そうか。

 魔女は森から出ることはない。 人目につくこともないから森の魔女の正体は誰も知らない。

様々な訳あって、魔女に会おうと森の奥深くに入った人もいたけれど、帰ってきた人はただの1人もいなかった。

 恐ろしいだろう?だからこの街で魔女の姿を知っている住民はいないのさ。


 え?誰も見ていないのに、魔女がいるなんて分かるかって?


 確かに旅人さんからしたら疑うのもおかしくはないだろうねぇ。旅人さんの言う通り、今は魔女を見たことある人はこの街の何処にもいない。

 だけどね。今から200年以上前には、魔女はあの森からこの街に出入りしていたのさ。

 それも100年以上ずーっと前から。

 それだけじゃない。魔女はどれだけ時が経とうと、姿が変わることはなかったらしい。

  不気味だろう?そんな魔女が何の目的で100年以上も度々街に出入りしていたかは今となっちゃ謎さ。

 それでも1つだけ語り継がれて分かっていることはある。


  今から100年前に魔女はこの街に災厄をもたらしたんだ。それは疫病。一度罹ればほとんどの者が死に至る疫病を魔女は振り撒いたのさ。

 魔女は疫病を振り撒いた後も何度もこの街の様子を見に来た。

 けれどほどなくして、魔女は街には現れなくなった。きっと実験の成果を見るために来ていたんだろうねぇ。街の住人達がこの疫病の犯人が魔女だと疑い始めたのは疫病が収まってしばらくしてから。

 どういうわけか、他の街には疫病は蔓延はしていなかった。隣町でさえ、ね。

 こんな不可解な事を起こせるのは魔女しかいない。

 きっと魔女はこの街だけをターゲットにしたのさ。 あの魔女がもたらした災厄は未だに街の痕跡として残っている。旅人さんも街を訪れた時に見ただろう?

 あのびっしりと墓標が立ち並んだ一際目立つ墓地を。あれは全て疫病の被害者さ。

 あの墓地では100年経った今でも毎年、街の住人は疫病で命を落とした住民に黙祷を捧げる。

 そこで誓うのさ。もう二度と災厄が起きないようにってね。話を戻そう。

  触らぬ神に祟りなし。これ以上の惨禍を起こしたくなかった街の住民達は魔女の行いを問い質すことなく、黙って見守ることにしたのさ。

 だからこの街ではあの森に入ることはおろか、近づくことさえ禁止されておる。これはしきたりであり、これを破るということは禁忌を破るということ、それ相応の罰則は受けてもらうってね。

 それでも納得できない住民も少なからずいたさ。

  家族が魔女の行いのせいで死んだのだからね。

 怒りに駆られた一部の住民は魔女の住む森の奥深くへと入っていった。けれど、最初にも言った通りあの森に入ったが最後。帰ってきた者はいない。

  全てが無駄。街の住人達は泣き寝入りするしか無かったんだ。

  そして災厄をもたらした魔女はしばらくしてこう呼ばれるようになったのさ。災厄の魔女、と。

  以前は名すら無かった森にも名前が付いた。

 災厄の魔女がいるから災厄の森。

 安直だが、近づきたくなくなる名前だろう?

 それのおかげか今じゃ災厄の森を訪れようとする馬鹿は何処にもいない。来るとしても数年に一度自殺志願者が訪れるくらいだね。

 ーーだから旅人さんや。命が惜しければ災厄の魔女がいる災厄の森には入ってはいけないよ。

 決して、決してね。




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