不老不死の半獣とトラウマ
ずっと一人だった。けどね、貴方が来てくれたからひとりぼっちじゃなくなった……毎日がとっても楽しくて、愉快で、心地よかった。ただ……段々、年老いていく貴方を見ているのが辛かった、嫌だった。もう誰も失いたくなかった、もうあのひとりぼっちの生活に戻りたくなかった……!けど、時間という獣はとうとう貴方の寿命をも食い尽くしてしまった。
最後の日、泣きじゃくる私に、貴方は……
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「へぇ!結構中は広いんだなぁ」
「うるさいわね、黙って歩けないの?」
新たな発見をしては、一々口に出すドルフをコフィーは疎ましそうに睨めつけ毒づいた。
「べっ、別にいいんじゃんか……会話が弾めばすぐ仲良くなれるじゃん」
すると、コフィーは死んだ魚のような表情でこう言った。
「はぁ……?あんたと仲良くなるつもりなんてさらさらないから……家に上げてあげたってだけで勘違いしないでよね。」
なんということでしょう。癒やされるツンデレ発言もあら不思議、真顔で言われると癒やしどころか精神を壊せるほどの凶器と化すのであった。
案内されたのは広さ六畳はあろうかと思われる部屋だった。
「ここがあんたの部屋、十年ぐらい使ってないから掃除しといて。」
「十年も使ってなかったのか…?」
確かに、部屋にはホコリが積もっていてかなり汚い。
「そうよ?だってこの家広いんだもん、使わない部屋だって出てくるわよ」
確かにコフィーの「城」は一人で住むには広すぎる。
______ずっと一人でこんな広い所に?
改めて考えると、なんだか胸がキュッとした
「……?何よ、その捨てられた子犬を見つめるような目は?」
「いや、ちょっとね……君も可哀想だなぁって思って。」
「………可哀想?」
瞬間、その場の空気が凍るような殺気がコフィーから吹き出した。
「やめてよ!!そんな言葉聞きたくない!!」
城内でコフィーの悲痛な雄叫びが響き渡る。
「コフィー!?一体どうした……」
「可哀想だとか!寂しかったねとか!辛かったねとか!そんな薄っぺらい言葉はもう聞きたくないんだよお……!」
そのままコフィーは頭を抱えて座りこんでしまった。
コフィーの頭であの「思い出」がフラッシュバックする。
______嫌だっ!死なないで!おじさん!死なないでぇ!
________スマンなぁ、コフィー……俺は結局、「可哀想」なお前を救えなかった。
そう言い残し、あの人はこの世を_____
突然、コフィーの視界に映るもの全てが歪みだした。
「あっ……うっ!」
「おっ……おい!大丈夫か?」
「賢者」の声を遠くに聞きながら「半獣」の視界は暗転した。