01 プロローグ
遥か昔、科学文明の発達したZ王国があった。
Z王国はある科学実験に失敗した際偶然に、空間に裂け目を生成してしまった。
その裂け目からは高エネルギーの青い光が放たれていた。どこからどうやって湧き出してくるのか、
原理は全くわからなかったが、そのエネルギーは尽きることなく放射され続けた。
やがて、Z王国はそのエネルギーを取り出すことに成功した。
「ブルーマテリアル」と名づけられたそのエネルギーは小豆大に結晶化されてコロコロと量産され、様々な機械の燃料として利用することが可能になった。
宝石のような青い結晶には信じられないほど莫大なエネルギーが圧縮されており、日常生活では小さなかけらでさえ使い切るのが大変なほどだった。
Z王国はブルーマテリアルを燃料にする機械やエネルギー変換器に、王族の「許可」が定期的にないと作動しない仕組みを施し、
運用や税の管理がしやすいようにして国民に使わせた。
無尽蔵ともいえるエネルギー源を得たZ王国は、永きに渡り栄華を誇るかのように思えた。
ところがしばらくして、人間が魔物に変身し人間を虐殺するという恐ろしい事件が全国で指数関数的に発生しはじめた。
一度魔物化した人間は、元の人間の心に戻ることなく人間を襲い続けた。
人間が魔物化する原因の追求やその対策は間に合わず、Z王国とともに科学文明は消滅してしまった。
だが圧倒的な強さを持つ魔物と対峙しながら、人類はしぶとく生き残っていた。
身に付けていると魔物化しない「守護石」を発見したのだ。
数千年後、Z王国があったことすら忘れ去られた荒れ果てた大地に、人間が住み着いた。
その中に、大陸のあちこちで発掘される先史文明の機械を作動させることができる一族がいた。
その一族を王族とし、B王国が興った。
B王国もまた科学が国を豊かにすると信じ、科学技術を発達させていった。
同じ頃、隣国のA王国には自然との調和を重んじる民族が暮らしていた。
A王国の民族は念じることで微かな火を起こしたり、手を触れずに小さな物を動かしたりする超能力を持っていたが、
ほとんどの人間の力は微々たるもので、あるのか無いのかわからない程度のものだった。
極稀に戦闘や格闘の実践で使えるくらい強力な超能力を持った人間が存在し、王族の近衛として仕えることができた。
B王国とA王国には親交があり、現在の王同士は旧知の仲でお互いを厚く信頼し、子供が産まれたら結婚させようと約束していた。
B国王は娘を一人授かったものの若くして病気で妻に先立たれた。
A国王は子宝に恵まれて三人の男の子を授かり、第三子をB王国の婿にすることになった。
お互いの子供たちはすくすくと成長し、B王国の娘が12歳の誕生日を向かえた後、A王国は13歳になる第三子を、A王国で行われる婚約の儀式へ出席させるため、
数人の近衛をお供にB国へ出発させた。