冬、想いはばたく聖夜
初めて出会ったあの時も確か同じ日だったと思う。
初めて会ったあの時は、俺のことを遠巻きに見ていた。そして、俺も同じように遠くで眺めているだけだった。
そして、俺たちは少しづつだが、近づいていった気がする。時間はいくらかかってもいい。だって俺たちには時間があるんだから・・・・・・・。
気付けば季節は冬。
そして、いつの間にか一年が終わる数日前。
今日は、十二月二十四日。いわゆる聖夜ってやつだ。まあしかし、今のところ俺にはそんな日はどーでもいい。
どうせ、カップル共がいちゃつく口実になっているだけの日なんて。どーでも良いんだ!
と、言う事で俺はダチとともに、イルミネーションされクリスマスソングなんか流れている街の商店街なんかに来ている。本当に寂しすぎるクリスマスパーティーが始まるわけだ。
さて、俺はそんな感じでダチとの待ち合わせ場所の指定された、街のメインストーリートのクリスマスツリーの下で待っているのだが・・・・
「遅い!」
すでに集合時間は過ぎている、大体三十分遅れとか流石にそろそろ帰ろうかとか思っている最中だ。
「はぁ~」
マフラーで隠した口元から小さくため息が出る。その理由は、目の前を通過し続けるカップルの群れ・・・・。
もう、そんな光景なんか見飽きた。そんなときだった、突然声をかけられる。
「あのぉ~今暇ですかぁ~」
明らかに女の子の声、俺はとっさにそちっちの方向を向く。
「ちぃ、お前かよ・・・・・。」
顔を確認するや否や、俺は少し明るくした表情を崩し、不機嫌面へと変化させた。
「引っかかったぁ~」
そこには妙にはしゃいでいる小さい少女。
「それで、何しているのお兄ちゃん?」
そいつは俺の家の隣に住んでいる、俺より一歳年下の女の子。もう、かなり長い付き合いで、俺のことを兄と慕う唯一の人物だ。
「待ち合わせだ・・・・・。」
と、俺は彼女に対して言葉を返した。
「男友達とかぁ~寂しいねぇ」
はっきり言っていやみを通り越してなんか頭にくるレベルの話になってきました。大体、俺がどこで何をしようが、こいつには全く関係ない話なんだけど・・・・。
「大体お前にそんな事言われたくないね・・・・お前こそ、ここで何してんだよ?」
不機嫌そうに俺はそんな言葉を投げた。
「いろいろと思惑があって・・・・。」
「ん?なんか言った?」
彼女の言葉は、街の喧騒の中に消えてしまい、俺の耳までは殆ど届いていなかった。
少し、伏せた顔を彼女はとっさに上げて、俺に質問を返す。
「お兄ちゃん、今暇?」
そんな明るい言葉に俺は不満げに言葉を返す事にする。
「暇じゃあねぇ・・・・・。」
そこまで俺が言葉を出した時だった、ジーンズの右ポケットに入れてある携帯がメロディーを奏でながら、振動していた。
俺はとっさに、その携帯を出してディスプレーを確認する。新着メール一件、それは今日待ち合わせしているダチからだ。
俺はそのメールに眼を通し、すぐにたたむとポケットにしまいなおして、言葉をつなげた。
「暇になった・・・・・」
内容は簡単だ。急遽用意が入ったから、今日お前と遊ぶの無理になった、ごめん。的な内容だ、むしろこのままだったと言ってもいいレベル。と、言う事で暇になった。
「じゃ、帰るから。」
流石にこれ以上の長居は無用だ。散々バカップル見てMPが殆ど無いんだ。
「お兄ちゃん・・・・暇になったならコーヒーでも飲んで帰らない?」
そう、彼女は俺に提案してきた。まあ、寒空の下に居たんだ流石に体も冷え切っているし、家に帰ったところで誰もいない。それこそ、歴史に残る最悪な聖夜になりそうな気分だ。
「そーだな、それも悪くないな・・・・・。」
そんな事を俺は言ってから、近くの某コーヒースタンドチェーン店へと足を進める事にした。
イブの割には空いた店内のボックス席に俺たちは腰を下ろした。まあ、空いた店内と言っているが、客層の殆どがカップルという現状はどーにもならないんだなと、思ってしまう。
そんな、店内の隅で俺たちは、コーヒーとカフェラテなんかを飲んでいる。
「温まるねぇ~」
先に声を出したのは俺の前に座るやつからだ。
俺はその言葉に無言のままで何を考えないまま、ただボケっとしている。
別に俺は今のままで良いとは思っていないんだ。できれば彼女だってほしいし、休日にはデートとかしたいし、健全なお付き合いというものには憧れている。まあ、そんな事を思って早数年・・・・代わり映えのしない日々も悪くは無い。
学校にはダチが居て、近所には俺を兄と慕う幼馴染。そんな風景も悪くは無い。
「ねえ、お兄ちゃん聞いてる?」
そんな事を考えていると、不機嫌な顔をした女の子が俺の顔を覗き込んでいた。まあ、ぶっちゃけると、こいつは普通に可愛いし魅力的だと思う。
「ああ、何だ?」
そんな心を悟られまいと、不機嫌な様子を見せて言葉を返す。
「やっぱ聞いてなかったんだぁ~」
そう、頬を膨らませて彼女は言う、そして言葉をつなぐ。
「お兄ちゃんはいつになったら、私を女の子として見てくれるの、って話だよぉ!」
「ああ、ちゃんと見てるよ・・・・。」
不意に俺はそんな言葉を返してしまった。ほんと、ニアミスだ。いくら、上の空だと言ってもこんな言葉を言ってしまうとは思っていなかった現実。
「それって・・・・・。」
明らかに、トーンダウンした声色で彼女はそんな事を言った。なんだか、ここまで来たらもう全部打ち明かしてしまっても良いんじゃ無いかと思っている。
だが、その反面・・・・今の関係性が崩れてしまう事を恐れている俺も存在するんだ。
「お前こそ、いつになったら俺を『お兄ちゃん』から、普通の男として見るんだ?」
言ってしまった、場の空気に流された感の否めない俺の言葉は、目の前に座る血縁関係の全く無い妹にぶつけていた。たぶん、俺の目は・・・・相当本気色だったと思う。
それは、彼女が困惑の色と驚きの色を混在させた眼をしている事から、推測はできる。だから、と言うべきか、俺は言葉をつなぐ事にした。
「俺は、お前が俺の前に現れたあの日から・・・・・ずっと、一人の女の子として見ていた。」
言ってしまえば楽な事だが、本当に最悪な状況に陥る事だってあるんだ。もし、彼女がここで拒絶したらすべては終わる。だから、どちらもこの事柄に触れずに、今まで微妙な関係性を保ってきたんだ。
「フフフ」
突然、彼女は困惑と驚きを消し去り、小さく笑って見せた。
その笑いが、『冗談やめてよ、お兄ちゃん』って言っているように見えて仕方ない。むしろ、そうやって笑い飛ばしてくれた方が俺としては・・・・うれしいのかもしれない。
「お兄ちゃんの友達が言ったとおりだったぁ。」
予想を裏切る言葉。
その言葉に俺は疑問符を浮かべる。そんな様子を見てなのか、言葉を追加する。
「今日ね、偶然を装ってお兄ちゃんの前に来たけど・・・・・。」
そう、良いながらカフェラテに口をつけ、俺に眼差しを向ける。
「ほんとはお兄ちゃんの友達と打ち合わせしてたんだ。無理言って、お兄ちゃんを街に誘い出して、私とあわせるって言う作戦だよぉ。」
そう、苦笑してから『子供っぽいよね』とつなげた。
「でも、最初に頼んだときね言われたんだぁ~『そんな事する必要性は無いと思うけどな』って。今その意味が良くわかった・・・・。」
苦笑していた顔は、笑顔に変わっていた。
そして、俺の疑問は解けていた。だが、今は言葉を出すタイミングではないと思う。何でだろうな・・・・。
「さて、当初の目的に戻りますかぁ~」
と言う。
そして、俺の顔を直視して、まっすぐな眼のままで、彼女は口を開いた。
「あのね、お兄ちゃん・・・・」
そこで、一度言葉をとめてから、息を大きく吸う。
そして意を決した様子で最後の言葉を続けます。
「好きです・・・・。」
その言葉を聴いて、俺の肩から一気に力が抜け落ちる事がわかった。今まで背負ってきた肩の荷が下りると言うべきなんだろうか?
俺は、「ふぅ~」と小さく息を吐いてから、言葉をつなげました・・・・。
最悪だと思っていたイブの夜・・・・それは聖夜と呼ばれるそんな日に、二人の想いが大きく羽ばたいたようですね。




