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秋、想いつなぐ社

神社の境内、長く高く伸びるご神木は永遠にも似た時間の中で、あまたの人々を眺めてきた事だろう。

そんな、永遠の内の一瞬に俺はいたんだろう。

いつもじゃれ合う俺たちがその時間の中に居るんだろう。そしてそんな時間が終わっても、この木だけはずっと人々を見つめていく事だろう。


神社の境内の裏。

表と違い人気の少ないこの場所は、リア充共がイチャこらするにはうってつけの場所だと思う。

今日は年に一度の秋祭り。別にいまさら祭りを楽しもうとかいう雰囲気ではない。もうすでにお疲れモードだから。

「くそ、バカップル共・・・・・抹殺してやる!」

俺は社の裏手の手すりに座ってそんな連中を見ている。

大体、年齢=彼女居ない暦の俺にとっては、世界のカップル共が憎くて仕方ないんだ。

「はぁ~」

そして、長くため息を吐いてから缶コーヒーに口をつける。

「あ、こんなところに居た!」

突然、後ろのほうから声がする。大体誰か俺はわかっているから大きなリアクションなんてとらない。

「なに、バイトの癖にサボってるの。」

そこに来たのは幼馴染の女。まあ、この神社の娘で巫女の真似事なんてしている。

今日も、ばっちり巫女服姿で祝詞を踊っていた。まあ、俺は短期バイトでその祝詞を唱える神主(彼女の父)のサポート役。バイト代が弾むとオッサンに言われたから俺は今日ここに居る。

「もう、一通り終わったんだから良いだろ。」

コーヒーを煽りながら俺は不機嫌にそんな事を言った。

「まだ終わってないって・・・・町内会の重役さんの接待があるんだよぉ!」

「要するに、見知ったオッサンに酒を渡して適当に話して来いという事ですね、うん。却下します。」

俺は幼馴染にそれだけ告げると、バカップルの動向を見ている。

「まったく・・・・・頼んだ人間違えたよぉ~」

と情けなく言うと、俺の隣に腰を下ろした。

長い髪に巫女がつけている髪飾りをあしらい、赤と白で統一された巫女服と言う物はなかなかの破壊力がある。それが、幼馴染だとしてもそれ相当の破壊力だ。

何せ、こいつは面がいい。今日だって、こいつ目当ての参拝客も多いし、裏では高額で写真が売買されている事を俺は知っている。

そんな彼女に俺は言葉を返した。

「お前は行かなくて良いのか?」

俺はそんな質問をぶつけてみた。

「あんまり行きたくない・・・・・。」

うつむき加減で彼女は力なくそんな言葉を言い放った。まあ、大体心理は理解できるし、俺が行きたくない理由と若干かぶっていると俺は思う。

「まあ、その気持ちもわからないでもない・・・・。」

俺は小さくそんな言葉を出し、またコーヒーに口をつける。

少し大きい衣装。穿き慣れない袴は帯が食い込んで立ったり座ったりする動作が面倒だし、この季節でも重装備は暑い。だが、それが理由ではない。

「いつになったら結婚するんだぁ~って聞かれるし、旦那はどこに行ったぁ~って酔った勢いで聞いてくるんだよ・・・・・。」

彼女ははぁ~とため息を吐いてから長い髪を掻き揚げる。そんな動作でも、雰囲気がある。

家業の手伝いでいつもこいつは巫女服着ている。短期で雇われる俺とは違って慣れている。

「オッサン方はシラフでもそんな感じだ。」

俺もそれに釣られて小さくため息を吐く。

「ほんと・・・・・疲れるよぉ~」

そう、小さく苦笑して彼女は俺の顔を眺めながらそんな言葉を言う。

そしてその後に言葉を繋げた。

「でも、君と一緒だとなんか落ち着くなぁ~昔から、こうやってずっと一緒で・・・・・。」

俺から目線をはずし、少し遠い眼で境内の裏にある立派なご神木を眺めて、そんな事を言った。

「君はさぁ~」

そして、少しの沈黙の後にやはり彼女が一言発した。

「君は・・・・・変化を望む?」

不意に浴びせられた言葉。

なんとも意味深な言葉だったと今になっては思えてくる。だが、そんな言葉を俺ははぐらかすようにして返す。

「人間は変化を嫌う・・・・・でも、時として変化を望む生き物だ。そんな感じで作られた人間は、存在が矛盾なのかも、な。」

「詩人だねぇ~」

そういい、フフフと笑って見せて彼女はまた遠くを眺める。

「じゃあ、私が変化を望んでも・・・・・その想いって矛盾しているのかぁ?」

なんとも難しい問いだ。

流石に俺の頭では解析できるだけのCPUは無いし、それを考えるメモリーにも不足がある。彼女が何を考えて、何を言いたいのか・・・・わからない。

「矛盾があるから、面白いんだろ・・・・・人間って。」

否、わかろうとしていないんだと思う。

本当はわかっている。彼女が何を思っていて、何を伝えたくて、誰にそれを伝えたいかって事も。

だが、変化と言う物は人間関係だけでなく、その世界すら変革する。だから、人間は変化を嫌うのだろう。

そんな事を、短い人生と時間で俺はいつの間にか気付かされていた。

「そっか・・・・・。」

少しの時間を置いて、彼女は小さく言葉を出した。

「でもね、少しくらい変化する関係も悪くないと思うんだけどなぁ~」

サァっと流れる風は、ご神木の葉を揺らし、彼女の長い髪も揺らした。その、乱れる髪を押さえながら、彼女は俺を見え小さく微笑む。

静かに流れる時間。どうやら、風は俺の心も少し揺らしてくれたらしい。

「さて!」

そう彼女は言うと勢い良く立ち上がり、俺を見下ろしながら言う。

「一緒に接待行こ・・・・・。」

笑顔で彼女は俺の手を引いて無理矢理立ち上がらせて、そのまま手を離さずに宴会会場まで俺を引っ張っていく。

そして、宴会場に入るとザワっと声が上がる。軽く茶化す感じの声も聞こえる中、俺たちは町内会会長さんに挨拶をしに行く。

「本日はお疲れ様でした。」

まず、俺が頭を下げてから、それに釣られるように隣の彼女も小さく頭を下げた。そして、俺たちは少し言葉を交わした。

「いやぁ~仲良く二人での登場だったねぇ~」

まあ、昼間から酒を飲んでいた会長さんは、もう結構酔っている状況に俺は見える。たぶん普通に酔っているんだと思う。

「いえいえ、途中でばったり会ったんですよ。」

と、俺は笑顔で切り返す。

すると、会長さんはハハハと盛大に笑ってから俺たちを見つめて言う。

「それで、結婚はいつなんだい?」

「会長さんったら」

とそんな言葉に対して、冗談よしてよって感じで彼女は笑いながら言い返した。

それを俺は見て、口元に笑みを作って彼女の言葉につなげた。

「結婚はまだですけど・・・・・ちょっと位は変化したいと思いますよ。」

その言葉に、隣の彼女ははっとした表情を俺に向けた。

すると、会長さんは笑顔で聞き返す。

「変化かぁ~どれくらい?」

にやりと笑った顔は、酔っているとは思えないほど鋭い目つきをしていた。

「そーですね、まずはお付き合いくらいですか?」

「え・・・・それってぇ?」

俺のその言葉に即座に反応したのは隣の幼馴染。

だから、俺も恥ずかしいのだが言葉を返す。

「俺と、付き合ってくれないか?」

まったく・・・・。

町内会の重役のおじさんと、彼女の父母の居る前で告白するなんて思っていなかったよ。大体、アンチリア充とか言っていた俺がまさかこんな事言うなんてね・・・・。ため息が心の中で漏れるよ。

「え、えっと・・・・そ、そのぉ~」

彼女は信じられないといった表情で、口をパクパクさせて、眼をキョロキョロさせる。

その一連の動作が終わった後に、

「う、うれしいぃ~」

と、目頭に少し涙をためて言いました。

秋の境内ではお囃子が聞こえてきます・・・・・秋空の下、どうやら想いはつながったようですね。


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