追憶と花火
ドンと花火の音が遠くからする。
窓際のライムグリーンのソファーに、背中を預けて冷たい窓に触れていた。
今度は近くから聞こえてくる。
夏空に赤い花が咲いた。
水だけしか入っていない金魚鉢に、赤い花が写ってゆらゆらと揺れる。
あっという間に散った花と同時に、金魚鉢の花も消えた。
部屋の天井を見上げて、ローテブルに手を伸ばし、適当に何か掴む。
それは今年の祭りのビラと、あいつの落書きが描かれたわら半紙だった。
あの時を思い出して、後悔が渦巻く。
なんて馬鹿だったんだろう。
窓が黄色く光り、水と揺らめく黄色い花に吸い込まれていった。
ここはいつかの教室。
砂埃が上がる校庭、それをあの時の私とあいつが眺めている。
ここで私はあいつの転校を告げられた。
たった一週間前に。
幼なじみのあいつのは、兄弟みたいで半分そう、錯覚していた。
あいつの口が開く。
ぼんやりしていて、よく聞き取れない。でも内容は分かった。いや、分かっていた。これを聴いたあとの私の反応も。
あの時の私は、ショックを受けた顔をして、無愛想に言葉を投げた。
嗚呼、もう忘れたいのに。
傷口に塩を擦り込まれたみたいだ。
あの時の私は、何も言い返さないあいつに、更に酷い言葉をぶつける。
あいつの辛い気持ちも分からずに。
原因は親の離婚だった。あいつだって、打ち明けたかったはずなのに。
でも、私に心配させまいと黙っていたのに。
あの時の私は、記憶と同じ行動を取った。
教室から、走って出て行ったのだ。
まだあいつの何か言いたそうな顔が焼き付いている。
しばらくしてから、あいつは私の居なくなった教室で呟いた。耳が良いから、私が忘れ物を取りに戻って、教室に入れないでうろちょろしている事に気づいたのだろう。
私が、あの時意地になって無理矢理忘れた言葉。
「再来年、またあの祭りで会おう。」
事務的だったのに、私の心に響いた。
私は、これを思い出したかったんだ。
教室の色が入り乱れぐちゃぐちゃに溶けていく。
気がつけばうたた寝をしていたようだ。
もう花火は終わってしまったのか。
花火は祭りのクライマックスだった。
私は行けなかったのか。
無駄だと知りつつ、時計を見る。
嘘だと思った。何度も目を擦った。
でも、針は一昨年あいつと祭りに行った時、家を出た時間ピッタリだった。
今行くよ。
家を飛び出した。
祭りで上がった花火は凄く綺麗だった。
木陰のベンチで少年と少女は手を繋ぐ。
花火が照らした二人の横顔は、楽しそうで嬉しそうだった。
そして、花火に負けないぐらい輝いていた。
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