少年は戦場へ
「……行くのですか?戦場へ…」
少女は悲しそうに僕の顔を見て言った。
「行くしかないよ、国が僕を待っているからね…」
「でも、貴方が行く必要はないと思います!貴方は…!」
少女は僕の袖を掴んで叫び声に近い声で僕に戦場へ行くなという。
それもそうだろう。
なぜなら…。
「右足がなくても、国の役には立てるよ」
僕には、右足がない。
左足と松葉杖で立っている状態だ。
「何を馬鹿なことを言っているのですか!!脚がない貴方は、国にとって、ただのコマなのです!お願いですから、戦場へは行かないで下さい!!」
「……もう、決めたんだ」
自分でも驚くほど静かな声で少女に告げる。
この戦いで右足を失ってから決めたこと…いや、違う。
戦いが始まる前から決めていたことがある。
―――国のために戦うと。
例え、右足を失っても他の身体の部分を失っても、この国の為に戦うと決めていた。
そう。全ては国の為であり、少女の未来の為でもある。
僕と少女は幼馴染だ。
小さい頃から、貧しい生活をお互いしてきた。
貧しいながらも僕たちは幸せに生活をして来たのだ。
そんなある日。
演説でこの国の偉い人が言った。
『戦争をして勝てば、貧しさから救われる!だから、戦おうではないか!貧しい思いをしないために、戦おう!』
演説を聴いて思った。
戦争をして勝ったらもっと裕福な暮らしができる。
少女の笑顔が毎日見ることが出来ると。
「……行かないで……」
「っ!」
自分の世界に入り込んでいた僕を少女の声が引き戻してくれた。
少女の気持ちも分かる。
分かるけど…!
僕は決めたんだ。
「確かに僕には、右足がない。まともに歩けないさ。でも、右足がないからこそ出来ることがあるかもしれない」
「でも…」
「右足がないなら、右足と松葉杖で器用に戦うだけだよ」
「……」
「まわりから、どう思われようと僕は戦場へ行く。この国に勝利を収めてみせる!僕は君にそれを言いに来たんだ」
僕は少女に自分の思いを話すと、左足と松葉杖を上手に使いながら志願場所へと向かって歩き始めた。
「--行かないでっ!」
後ろから聞こえる少女の声に気づかぬふりをして……。
そう。僕は、今から……。
絶望という名の戦場へ少女の未来を勝ち取るために戦場へと向かう。
「―――僕は、国の為に戦士として志願します!」
志願場所に着いた僕は受付の案内所で声を張って宣言した。