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お前ら!武器屋に感謝しろ!  作者: ポロニア
第六章 竜鱗の盾

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第84話 師匠師匠って連呼するなって

「まったく。無理が通らにゃ力ずくかよ。言っとくけど、特務機関で通用しても世間ではただの暴力だからな」


 ようやく強烈な握力から解放された肩をグルグル回すと、掴まれた部分がジンジン痛んだ。これ、絶対に痣になってるだろうな。


「すいません。つい力が入ってしまいました、師匠」

「だから師匠は止めろって」


 しょげた顔をしてガックリと肩を落とすシンナバル。なんだよ、まるで俺が悪いみたいじゃないか。

 痛む肩を軽く揉んでから溜息を吐く。そしてクレインクライン・クロスボウの歯車を動かしてはご機嫌な様子のセハトに声を掛けた。


「ずいぶんと気に入ったみたいだな、セハト」

「むふむふふ。なんかこう……カチカチカチカチッ、って手応えが堪らないよね」

「そのレスポンスの良さに気が付くとは、お主、なかなかやるな。ところでさ、好きに遊んでていいから少し店番しててくれないか」

「ん、どっか行くの?」


 ホビレイル族らしい大きな手でクロスボウの暴発防止スイッチをカチカチさせながら、セハトは目線だけをこちらに向けた。

 俺は、そんな玄人好みな感触を味わうマニアック少女に「ちょいと屋根裏にね」と、天井を指差した。

 俺とセハトのやり取りを、何やら羨ましそうな目で眺めていたシンナバルに「付いて来い」と促すと、赤毛の少年は名前を呼ばれた犬のように嬉々として付いてきた。尻尾が生えていたらブン回している事だろう。あれほど敵意を剥き出しにしていたのに、手の平を返すとはこの事だ。

 

 経験上、魔術師や錬金術師などの「ナニナニ師」って、尻に「師」が付く連中は、頭は良いくせに単純な奴が多い。いや、単純というより純粋(ピュア)と言うべきか。

 そもそも魔術師や錬金術師は、戦士や騎士とは違い、戦闘そのものを目的とはしていない。研究の成果が戦闘に役立つことがあるだけで、本来は、より深い魔術の理解や世界の成り立ちの探求といった学術的な目標を持っている。

 だが、素質や能力の高い「ナニナニ師」ほど、「大丈夫か、コイツ?」と、不安を覚えるほどの「純粋さ」を感じることがある。なんて言うか、「信じ込んだら、どこまでも」みたいな? 

 特務機関の指令を疑いもなく遂行し、ルルティアを「姉」と慕い、俺を「師匠」と呼ぶ少年は、その点では資質十分だろう。


 屋根裏部屋に続く急傾斜の階段を前にして、ふと後ろを振り返った。透き通るような赤い瞳と目が合う。少年は「何ですか? 師匠」と、屈託もなく嬉しそうに言った。

 俺は、思わず階段に掛けた足を下ろし、シンナバルの紅い瞳に向き直った。


 深い知性を感じさせるくせに、どこか頼りない瞳。

 明け透けな好意を含んだ、それでいて何かを求めている眼差し。

 血は繋がっていないはずなのに、あいつにそっくりな――――


「師匠?」

「あ、いやぁ、アイザック博士を襲ったのは、どんな奴だったのかな、と思ってさ」


 誤魔化す為に適当に思いついた事を言ったが、特に(いぶか)しがる様子も無くシンナバルは答える。


「それが……後ろから頭を一撃されまして……」

「姿は見ていないのか」

「一瞬だけ後姿を見たのですが、すぐに人ごみに……。夕方とは言え、人通りのある路地でしたので油断しました。護衛失格です」


 そう言ってシンナバルは項垂れた。頭に犬耳でも付いていれば、耳を伏せて萎れているところだろう。


「言い訳しないだけでも偉いぞ少年。しかし、人目のある路地で襲撃とは大胆な犯行だな」

「気を抜いていたからか、全く気配を感じませんでした。でも、だからこそ心当たりがあります」

「心当たり? 特務機関にケンカ吹っかけるくらいだ。並大抵の相手じゃないと思うぞ」

「絶対に公安部隊の仕業です。あいつら特務機関を目の敵にしてますから。気配を消して待ち伏せするのは奴らの得意技です!」


 顔を赤くして興奮気味に捲し立てる少年を片手で制した。


「落ち着けって。だったら何故、殺さなかった? 嫌がらせにしては場所もタイミングもリスキーだ。気持ちは分かるが、感情を先走らせるのは間違いの元だぞ」

「じゃあ、師匠には犯人の見当は付きますか?」

「無茶言うな。推理小説じゃあるまいし。だが、博士もお前も無事って事は、逆に考えれば殺す気は無いって事だ。おそらく、『奪われた荷物』ってのが目的だろう。中味は何だ?」

「それが、護衛の俺も中身は聞いていません。錬金術の研究資材らしいのですが、博士は今でも落ち込んでいます」


 護衛でも荷物の中身を知らされていないとなると、博士に近しい人物が噛んでいる、と考えるのが自然だろう。魔導院内部、いや、特務機関の人間か? だが確証は無いし、少年に聞かせるには酷な話だ。

 話は終わりだ、と言う代わりに「そんな少ない情報で犯人が分かったら、武器屋畳んで探偵でも始めるわ」と答えたが、シンナバルは、それをどう受け取ったのか、


「じゃあ、俺、探偵助手やります!」


 と、目を輝かせてアホな返事を返してきた。冗談を真に受けるな。



*****



「すっ、凄い! ここは一体、何ですか?」


 俺の後ろから階段を上ってきたシンナバルが、屋根裏部屋を見渡し、呆然とした顔をして聞いてきた。

 

「まあ、強いて言えば、トレーニングルームってトコかな」


 剣士二人が優に立ち合える、ワンフロア分の広さのある床には衝撃吸収性に優れる錬金製クッションフロアを敷き詰め、灰色煉瓦の壁一面には耐魔術結界の護符を張り巡らせてある。そして壁掛けラックには使い込んだ数々の武器と、大量の薬瓶や魔術の巻物が納められている。

 ここは、かつて婆ちゃんを相手に剣の修業に明け暮れた屋根裏部屋に、改装に改装を重ねた戦闘訓練室、及び新作商品のテストルームだ。


「これは……第五位魔術までは完全に遮断する護符ですね。魔術科の実験室と同じレベルの結界ですよ!」


 壁に貼り付けた護符に触れながらシンナバルが感心したような声を上げる。


「まあな。「炎の杖」の試し撃ちなんて、外じゃ出来ないからな。ここで商品のチェックをしているんだ」


 まだ学院の生徒だった頃、第二位魔術「火の風」が使い放題って触れ込みの「魔術の杖」を、大枚叩いて手に入れた事がある。自信満々で戦闘中に使ったところ、火どころか煙しか出なかったのは苦い思い出だ。

 今でこそ客ウケの良い「あるあるネタ」だが、一歩間違えたら笑い話じゃ済まなかったところだ。痛い経験を元に、売り物の「魔術の品(マジックアイテム)」は、ここで必ずチェックをしてから店に並べるようにしている。


「さすが師匠!」

「まぁ、ウチの商品が原因で死人が出たら目覚めが悪いからな」


 熱っぽい視線から逃れるために、天井からぶら下がる草臥(くたび)れたサンドバッグを二、三発叩いてみせた。


「他にもな、腕が鈍らないように、ここで運動してるんだ」


 まだ少し肩に違和感が残る。首を回しながら壁掛けラックから黒猫愛用の投げナイフを手に取り、柱に括り付けた巻藁(まきわら)目掛けて投げつけた。

 黒いナイフはクルクルと回転しながら、「サクッ」と、小気味良い音を立てて、人に見立てた巻藁の喉元に突き立った。「わぁ!」と、シンナバルが感嘆の声を上げる。


「大したモンじゃないさ。俺の投擲技術はディミータさんの足元にも及ばない」

「でも、命中させるだけでも難しいと思います。師匠」

「俺がこうして一本投げる間にディミータさんは五本は投げる。しかも、彼女の投げ方はナイフが手から離れる瞬間が見えないんだ。あれは初見では避けられない」


 今度は東洋の投げナイフ「苦無」を手に取り、下手投げで投げつける。笹の葉に似た形をした刃物は、巻藁の胸元に刺さった。


「いいか、シンナバル。戦闘中にボケっと突っ立ってナイフの餌食になる敵はいないぞ」


 熱い視線を送ってくる少年にそう言ってから、壁際に立たせた腰の高さ程度の身長の人形を抱えてシンナバルの前に置いた。

 

「これは何ですか? デッサン人形みたいですね。師匠」

「確かにな。こいつはルルティアに頼んで作ってもらったんだ」

「姉さんが? じゃあ、この人形は錬金仕掛けですか。師匠」

「正解だ。攻撃を避ける事だけに特化した錬金人形だ。それから、師匠、師匠って連呼するな」


 そう言って俺は、金属なのか木材なのかも定かでは無い正体不明の材質の、目も鼻も無い人形の頭をコンコン叩いた。これが起動の合図だ。

 糸繰り人形のようなギクシャクした奇妙な動きで錬金人形が動き始める。コミカルといえばコミカルだが、糸が無い分、不気味と言えば不気味な動きだ。

 俺は壁のラックから両端に分銅の付いた鎖を取り外した。左手で短めに鎖を持ちつつ、右手は長め鎖を持ち、分銅の重さを利用して回し始める。


「師匠、それ、なんですか?」


 シンナバルの質問に、風を切ってブンブンと音を立てる分銅を回しながら、「これは分銅鎖(ボーラ)って武器だ」と答える。


「慣れないと扱いが難しい武器だが、攻撃範囲が広く」


 奇妙な動きで左右に揺れる錬金人形に狙いを定める。


「更に軌道がトリッキーだ。だから避けるのは難しい――――せいっ!」


 必中のタイミングを計り、分銅鎖を投げつける。狙い通りに鎖は左右に拡がり、どちらに避けようか決めかねたように左右にガタガタと震える人形を絡め取った! ように見えたが、鎖が直撃する寸前、人形は見事な跳躍で分銅鎖を避けた。鎖は壁に当たってガチャガチャいわせながら床に落ちた。


「と、まぁ、お前の姉ちゃんの作った錬金人形は大変高性能です、って事が証明された」


 俺はシンナバルに肩を竦めて見せた。その間に錬金人形は動きを止めて大人しくなった。


「俺にはネイト隊長のような圧倒的な戦闘力も無ければディミータさんのような人並み外れた速さも無い。あるのは経験と勘、それと弱いからこその創意工夫だ。さて、魔術師のお前は、錬金人形にどうやって攻撃を当てる?」

週一での投稿を心掛けたいのですが、月末は忙しくて筆の進みが悪いです。

その間に、


http://blogs.yahoo.co.jp/lulutialulumoni/9848549.html

↑シンナバル

http://blogs.yahoo.co.jp/lulutialulumoni/9989717.html

↑セハト

http://blogs.yahoo.co.jp/lulutialulumoni/10420989.html

↑噂の寮長さん


以上の新規画像をヤフーブログに投稿しておきました。飛ぶのが面倒な場合は活動報告からどうぞ!

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