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お前ら!武器屋に感謝しろ!  作者: ポロニア
第一章 お前ら!武器屋に感謝しろ!
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第7話 第七等級呪物

 さて、神聖術の理解が深まったところで話を戻そうか。


 事件は急転直下、正に青天の霹靂(へきれき)ってヤツだ。

 午後から予定されていた魔導院風紀委員会の捜査員による尋問は中止になった。あっさりと俺たちは解放され、あっさりと捜査員は帰っていった。

 ビーフィンが死体になってまでも固く握りしめていた、例の紅い短刀の鑑定結果が出たからだ。

 魔導院の鑑定科が総力を上げて鑑定した結果、短刀は「第七等級呪物」の指定を受けたんだ。


 ***だいなな・とうきゅう・じゅぶつ***


 分かんねえよな。顔に書いてあるよ、お前ら。

 ほら、あれだ。「呪われたアイテム」、お前らの大好きな冒険物の本にも良く出てくるだろ? 最近は「らいとなんとか」って言うんだろ? 否定しなくても良いよ。俺も好きだし。

 柄を握ったら「手から離れなくなるロングソード」とか「装備したら脱げなくなる鎧」とかお約束だよね。

 その程度の呪物は「第一等級呪物」に認定される。嫌がらせとか悪戯のレベルだよな。カワイイもんだ。

 「被ると混乱する兜」とか「たまに味方に当たる弓矢」とかは困るな。命に係わる。この等級の呪物は「第二等級呪物」から「第三等級呪物」にあたる。危険度が上がるほど、等級も上がる仕組みになっている。

 これらの呪物を誤って装備しちまった場合、武器屋としては可及的速やかに教会に駆け込むことをお勧めする。

 教会に行って「呪物を解呪する神聖術」を施してもらえば、「血塗られた斧」は何の変哲もない「ハンドアックス」に戻る。

 「折れた剣」とか「腐った革鎧」に至っては、装備したヤツの頭ン中身が呪われている可能性が高いから、とっとと医者に連れて行け。もはや神聖術では手に負えない。




 最高等級にあたる「第七等級呪物」は恐ろしいぞ。数が少ない分、レアなアイテムとも言えるが危険度は致死的だ。


 「ダンス・マカブル」って、聞いた事があるか? 履いたが最後、死ぬまで踊り続けという呪われた靴だ。

 呪いの効果は単純に「踊り続ける」だけなのだが、どうにもこうにも止まらないから解呪が出来ない。力づくで抑え込もうにも、呪いの効果で「早さ」のステータス数値が人間離れするほど上昇するので、ひらりひらりと逃げ踊られて捕まえる事すら難しい。魔術抵抗をはじめ、各種抵抗力もほぼ一〇〇%となるので、魔術で眠らせたり麻痺させる事も適わない。

 結局のところ、「ダンス・マカブル」を履いてしまった者は、脛が折れ、大腿骨は飛び出し、背骨がグダグダに砕けて死ぬ。

 これは、とある踊り子がライバルに仕掛けた呪いなんだ。「そんなに踊るのが好きなら、死ぬまで踊ってろ」といった暗い情念、妬み、恨みがダンスシューズを呪物に変えたんだ。

 「呪物」ってのは、魔女が森ン中でイモリの尻尾とか蝙蝠の羽を煮込んで作ってるんじゃないんだぞ。


 「死の指輪」ってのは知ってるか? 嵌めたら抜けなくなる上に、少しずつ生命力を奪う「第五等級呪物」だ。これは意外にも解呪すると男物の結婚指輪になる事が多い。

 こいつはな、嫉妬深い妻の情念が「若い娘の太ももを眺めた」とか「巨乳ちゃんの胸元を覗いた」ってだけで、結婚指輪を呪いの指輪に変化させたんだ。

 そして、意外だと思うかも知れんが、指輪には「夫を護る」といった願いも込められているため、装備した者の「運」のステータス数値が上がり、毒や睡眠に対する抵抗力なども上がる。愛憎ってのは表裏一体って事なんだな。お前らにはまだ理解出来ないかもな。


 さて、お前ら、彼女がいる奴は手ェ上げろ! ……全員彼女無しか。哀れだな。

 まっ、いいや。じゃあ、彼女がいると仮定しよう。で、この女がさ、浮気癖のある女だったとする。なに? 俺の彼女は浮気なんかしないって? さっき、彼女いないって言ったよな? おいおい、存在していない彼女の話で熱くなるなよ。ちょっと怖いよ、キミ。


 とりあえず、架空の彼女は置いといて。

 浮気されたく無いなら、浮気癖のある彼女に「浮気したら殺す」って呪いをかけるのもアリだろう。

 だが男って生物(ナマモノ)はさ、「彼女の事は大好き、でも浮気相手の男が憎い」ってなモンなんだ。分かるだろ? そしたら「彼女に近づく男を殺す」ってのはどうだろう。それじゃあ自分が死んでしまう? そうだ、お前、センス良いな。じゃあ、どうしようか? 「彼女の、あんなところを触った自分以外の男を殺す」とか「彼女の〇〇〇に〇〇〇を〇〇した、自分以外の男を殺す」は、さあ、どうだろう? これが「彼女を呪物化」するって事だ。

 でもなあ、こんな面倒くさい呪いなんて、ありえないんだ。呪いなんてのは単純な内容ほど、その効果が強く発現する。まあ、精神を病むほど彼女を強烈に愛したうえ、彼女の浮気相手を猛烈に憎むような怖い男なら、ありえなくも無いか。お前ら、気をつけろよ。呪いをかける側に回りそうな奴が数名いるとみた。



 注意点が一つ。良く聞いておけよ。呪物を鑑定する際の一番の問題点なのだが、鑑定士には「呪いの内容」までは鑑定出来ないんだ。

 「ダンス・マカブル」の恐ろしさは、そこにある。呪われている事は分かっても、どんなデメリットが出るのか不明な癖にアイテムとしてのメリットが魅力的過ぎる。「脱げなくなるくらいかも」、「足が痛くなるくらいかも」と呪物を過小評価して、「困ったら解呪すれば良いか」なんて軽い気持ちで足を入れてしまう女性がいるんだ。

 また靴の外見も魅力的なんだよ。小ぶりな宝石が散りばめられた、女だったら老若関係無く心躍る美しい靴。服屋に置いてあったら、買わずとも履いてみたくなる欲望を押さえるのは難しいだろう。見た目も呪いの一部だったのかも知れないな。

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