第15話 ひのきの棒をお付けします
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と、まぁ俺の昔話はこんなところだ。
どうした? お前ら泣いてるのか? そうか。そんなに感動したのか。ほれ、これで涙を拭けよ……ようし、拭いたな。それ『魔法の地図』だから。ダンジョンの歩いたところが勝手にマッピングされる便利なヤツ。知ってんだろ?
なに? いらないって? お客さん、困りますなぁ。一度お使いになられた物を返品するなんて、人間性が疑われますよ。でも、ご安心下さい! 今ならキャンペーン中でして、なんと! この、ひのきの棒を一本付けさせていただきます。
ほら、つべこべ言うなよ。こんな良い話を聞かせて貰った御代としたら安いモンだろうに。
……ったく、結局あいつら何にも買っていかなかったな。最近の若いヤツらときたら……しっかし、あんなに簡単に人の話を鵜呑みにして大丈夫かね? かなり脚色してあるんだぜ、あの話。特に彼女のルックスなんて、思い出補正コミコミ五割増しに盛ってんだけどね。だって俺の元カノだよ。そんなに上玉な訳ないっしょ。まあ、『ショートソード+1』ってとこさ。中の上って感じかな、へへへ。
でも、普通って良い事だよ。
俺だって人間だ。嫌がらせをされたら怒るし、騙されれば憎む。でも、呪うのは駄目だ。憎いアイツを呪ったところで良い事なんて一つも無い。『人を呪わば穴二つ』って東洋の古い諺があるくらいだ。呪った方も、呪われた方もロクな事になりゃあしない。
だが、俺が一つ呪物を破壊したその瞬間にも、どっかで新しい『呪物』が生み出されているんだ。
正直、俺は少し疲れた。
鋼玉石の剣にかけられた呪いは「血に連なる最後の一人が果てるまで呪物を狩る」だ。前所有者だった婆ちゃんの死期が近いから、俺が呼ばれたのだろう。もしも俺が子を生さなければ、やがて親戚の誰かの元にコランダムが現れる。そして、否応無しに『呪物破壊』に狩り出される、って仕組だ。
コランダムは、英雄の遺物であるのと同時に第七等級呪物でもある。呪物ってのは、そういうモンなんだ。
……参ったな。昔話なんてしちまったから、余計な事ばっか考えちまう。
さぁて、今日はもう風呂に入って寝るとしようかな。
***第一章・完***
最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。いわゆる処女作でしたが、いかがでしたでしょうか?
駄文。つまらん。読む価値無し。ご批判ご批評を承ります。
また読んでいただけたら幸いです。本当にありがとうございました。