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八雲レポート  作者: 和尚
25/26

星に願いを

「も……もう……お腹いっぱいですって……」

「もう? まだフランクフルトとお好み焼きとたこ焼きとチョコバナナとクレープしか食べてないじゃない。未来人の胃袋って貧弱ねえ……」

「い、いやその……それはちょっと違う気が……」

 とまあ、八雲の無尽蔵の財力を武器に露店を片っ端から攻めたり、



「ちょっ……これ生きてますけど!?」

「当たり前でしょ? 剥製の金魚すくって何が楽しいのよ」

「いや、そういう意味じゃ……」

 と、金魚すくいの金魚の活きの良さにビビる八雲を笑いながらキャッチ&リリースで金魚すくいをやったり(花見で……ってのも珍しいわね)、



「若葉さん若葉さん! こ、これ、食べにくいんですけど!? てかこれただの砂糖ですよね!?」

「いいのよ砂糖で……って、あーあー顔何よそれ!? ベッタベタじゃないの!」

 と、小学校低学年よろしく口の周り……というより顔中ベッタベタにしながら綿あめと格闘する八雲の顔におしぼりを叩きつけてやったり、



「……何してんですか? 桜井先生……」

「あ? 見りゃわかんだろ? 勤務中だ勤務中、琥珀、お前の監視の」

「あの、翡翠姉さん……勤務中に堂々と飲酒ってそれ……」

 八雲の監視ついでに堂々とカップ酒を飲んでいる桜井先生(隠れて監視する気ゼロ)を発見したりしながら、私たちは花見を満喫した。

 そして一通り花見を見終わった私たちは、今度は街に出た。

 ついでにそれ以降、桜井先生がおおっぴらにパーティに加わった。

 ……で、



「うわっ……ま、また負けた……って、若葉さん強すぎません?」

「そーぉ? 私だってそんなにやったことないわよ?」

「ったく、わが弟分ながら不甲斐ねェなぁ……ほら、代われ琥珀」

「ん? 先生格ゲーでき……うおっ!? え、ちょ……あれ!? 空中にいる間にやられた!?」

「ひ、翡翠姉さん!? 何でこんなに強いの!?」

「ふふん……ざっとこんなもんよ」

((……まさか……ちょくちょく来てるんじゃ……?))

 とまあ、またしても無尽蔵の軍資金を武器にゲーセン中のゲームで遊んでみたりとか。

 クレーンゲームでは私がお気に入りのぬいぐるみを根こそぎ取り(得意)、

 格闘ゲーム・レースゲーム・シューティングゲーム・リズムゲームでは、桜井先生が9回ほど全国ハイスコアを叩き出し、

 クイズゲーム・パズルゲームでは八雲がいずれも難易度MAXで全問正解&最高得点(99999999pt)という偉業を成してゲーマー達から神格視されてしまった。



 その後は駄菓子屋に行って、

「これ……工業用接着剤じゃないんですか……?」

「水あめよ水あめ。罰当たりなこと言わないの。ふがし食べる?」

「あー……大人になってからこういうとこ来ると、大人の財力で一気に100個とか200個とか買いたくなるよなー……」

「そんな子供以下の大人げない真似はやめてくださいね桜井先生」

 未来にはまずないであろう原始的お菓子類を食べさせてやったりとか。

「あの……これも砂糖ですよね?」

「カルメ焼きだっつの。おいしいわよ、意外と。安いし」



 その後行ったカラオケ屋では、

「わー! 上手いですね若葉さん! 本職みたいです!」

「へへへ……そぉ? ありがと」

「ほー……ずいぶん褒めるじゃねーか琥珀。あたしの時にはそんなこと言わなかったのに」

「え? あ、まあその……翡翠姉さんも上手かったですよ、大人の情緒があって」

「褒めてんのかそれ?」

 私がJ-popを熱唱して、八雲は恥ずかしがりながらアニソンをいくつか歌って、桜井先生はデスメタルをノリノリで激唱した(……情緒?)。

 ていうか……

「八雲、あんたよく『残酷な天使の○ーゼ』なんて知ってたわね? 未来でも『エヴァンゲリ○ン』とか流行ってるの?」

「あ、いえ、中学校の時の古典で習ったんです。OPテーマソング付きで」

「マジでか」

 知らなかった……あのアニメ、1200年後には古典の教材になってるんだ……。



 とまあこんな感じで、とにかく何も考えずに遊びまくった。

 八雲は最初こそ戸惑ってたけど、すぐにその『理由とかそういうのがどうでもいい面白さ』を理解したらしく、年相応のテンションで遊びにふけっていた。

 そして、その締めくくりには……



「うわぁ―――!! すごぉ―――い!!」

「こらこら、窓開けんじゃないわよ?」


 と、念願のSLに乗って、その窓から見える景色を見ながらおおはしゃぎの八雲。

「夢みたいです……こんな……動いているSLに乗れるなんて……」

 ヒーローショーで、5人1組で1人の怪人をフルボッコにするカラフルな戦隊と握手できた時の子供のような目でご満悦の八雲を見て、桜井先生はため息。

「ったく……ただの移動手段でど~してそんなにはしゃげるのかね……?」

「男の子ってそういうもんですよ。今も、昔も」

 未来も……かな?

 こいつのこの時代での最後の思い出作りにはふさわしいだろう。そう思って、昨日の夜にダメもとでこの観光用SLに申し込んだら、偶然キャンセルが入っててチケットがとれた。ゆえに、こうして八雲と桜井先生と一緒に1時間ばかり乗ってみることにしたのである。

 さぞ幸せだろう、未来の国宝に乗れて。記念の半券もあげるか。

「さて……そろそろ食うか、駅弁?」

「はい!」

「あ、これも憧れのシチュエーションなんだっけ?」

 えっと……『汽車の中で駅弁』だっけか? まあ、醍醐味っちゃそうかもだけどね……八雲の奴、誕生日ケーキの板チョコの乗ってる部分貰った子供みたく目が輝いてる……。1つ630円で買った普通の駅弁がそんなに楽しみか。

 そういや……ずいぶん前に家族で乗った時もこんな感じで青葉がはしゃいでたっけ。やれやれ……男の子ってわかんないなあ。

 至福の表情で弁当に箸をつける八雲を見ながら、私と桜井先生は肩をすくめた。



 ……そして……


 時刻は……午後8時28分。

 あと30分ちょいで……かえっちゃうんだ、八雲。

 場所は、屋上。テレポートで帰ってきた。

 いつも八雲と待ち合わせした場所で……私と八雲が、実質上初めての顔合わせをした場所でもある。ここで最後の30分、テキトーに過ごすことにした。

「荷物とか、もう送ってあるんだっけ? 超買い物したけど」

「まあ……現時点で送ってあるわけじゃないですけど、僕が帰ると同時に未来に一緒に来る仕組みです。今はまだ、未来の当局が手配してくれた倉庫に」

「そっか……」

 最後の夜にはふさわしく、空は暗いけど、雲ひとつない満天の星空。このあたりは空気が綺麗だから、星がよく見えるなあ……。

 そういえば……あの時もこんな感じで、八雲が降りてきたのを流れ星だと思ったんだっけ。あの時はまだ、こんなSF体験するなんて思ってなくて……青葉のことも、そんな未来の病気だとか、白川先生(あの頃は『白樺』か)が時間犯罪者だなんて思ってなくて……。

 なんか……運命的ね。私が偶然八雲に会えて……八雲に振り回されて……そして助けてもらって……

「あれ? そういえば……」

「? どうしました?」

「その……ほら、あんたが前に言ってた、何で私はステルス張ってるあんたを見れたのか……ってアレ、結局何でかわかったの?」

 知り合ってすぐのころ『他人には僕の姿は見えないはずなのに……』って言ってた。なのに、私は見ることができた。それって……もしかしてホントに私が『選ばれし者』だったとかいう落ちじゃないわよね……?

「ああ、それなら多分……」

 と、


 PPPPPPP!! PPPPPP!!


「「ん?」」

 突然、八雲の腕時計が鳴り響いた。そしてそこに目を落とした八雲が、驚いて、

「え!? ご、5分前!?」

「は!?」

 ちょ……それどういうこと!? 8時までまだ30分近くあるのに……。

 と、今まで黙って遠い空を見ていた葉桜先生が気付いたように、

「あー、そりゃきっとアレだな、お前ら……白川を追いかけるときに時間超えて過去に来たろ? ちょうどこの時間差分くらい。多分それだよ」

「あっ、そっか……タイムトラベルの時間制限は絶対時間だから……」

「ああ……一旦過去に飛んだ分、相対的な期限が早まったな」

 つ、つまり……あの時の白川先生との超時空追いかけっこの果てに、私たちは過去に来て止まった……。『9:00』っていうのは『そのまま、時間とか超えずに7日間過ごした』場合だから……いったん過去に戻っても、この時代に来てから経過した分の時間にそのまま加算されて計算される。『来てから1週間』っていうより、『来てから24×7=168時間』がタイムリミットだったんだ……。

 つまり……あの時20分くらい過去にきて、そのまま私たちは元の時間軸には戻らなかったから……実質のタイムリミットは9:00より20分早まったと。

 ってことは……あと5分弱でお別れ!?

「みたい……ですね、ははは」

「ははは、ってあんたね……」

 相変わらず腹の立つ笑い方を……あんた、もう5分で私とお別れって時に、他に何か考えることはないわけ!?

「ほらほら、にらみ合うな少年少女。最後の最後にお互いにメッセージとかねーのか?」

 と、若干無理やりだが桜井先生が仲介に入ってくれた。グッジョブ……なんだけど……いざそう言われると、なんか見つからないわね……。

「えっと……その……」

「あ、あの……ちゃ、ちゃんと向こうでもご飯食べなさいよ?」

「田舎の母親かお前は」

 やば、パニクって言うこと決まらない……うう、カッコ悪……

 と、

「あの、若葉さん」

「?」

「えっと、その……すごく楽しかったです、この7日間。若葉さんなしじゃ……こうはいきませんでした。おかげで資料も集まったし……忘れられない思い出ができたし……すごく感謝してます!」

 と、まっすぐ目を見て八雲は言い切った。

 その顔は笑ってたけど、すごく真剣で、それゆえに私は嬉しかった。役に立てたから……とか、そういうのじゃないわね。そう……これは……友達がうれしそうにしてると、自然とこっちも嬉しくなるって言うか……そういうやつだ。この感覚は。

 やれやれ……たった7日間でねえ……。

「こっちこそ、一生忘れられないような体験、一生分させてもらったわよ。楽しかった。それに……ありがと、青葉達を助けてくれて」

「あ、はい。それでその……よろしければこれを」

「? これは?」

 と、八雲は何やら薄いカードみたいなものを取り出して、私に差し出してきた。何かしらこれ……ぱっと見テレホンカードみたいだけど……

 私がそれを手にとると、八雲はその中心部のマークを指で円を描くようになでた。と、


 ヒュン


「おわ!?」

 ほ、立体映像(ホログラム)!? しかも、画像になってるこれは……今日の私たち?

 花見で食べ歩き、ゲーセンで熱闘、SLで大はしゃぎ……今日の私たちの様子を写した立体画像が、次々とそのカードの表面から浮かんだ。

 もしかしてこれ……未来の世界のアルバム?

「よければ……記念ということで、持っていて下さい。差し上げますから」

「え? いいの? これ、未来技術(オーバーテクノロジー)この時代に置いてくことになっちゃうじゃん。」

「そこはまあ……それ開発したのも僕なんで、職権乱用で何とか」

 問題発言が聞こえた気がしたけど、目をつぶろう。これ、欲しいし。

 後ろの方で『うんうん、わかってきたな』なんて声が聞こえたのも含めて。

 と、


『30秒前です』


 ……そっか、もう、か……。

 ホントはまだまだ話せるもんなら話したいけど、今、もう時間ないし。それに……軽い感じで言いたいこと全部言いあったし、なんかすっきりしたな……。

 今のままのこの感じなら……笑って別れられるな。決めた、このままいこ。

「それじゃあ、この辺で。翡翠姉さん、後よろしくです」

「了解」

「あれ? 桜井先生、帰らないんだ?」

「色々とやることがあるんでな。まずはコイツだけだ」

 先生がそう言いきったところで、ふわっ、と、八雲の体が宙に浮いた。同時に、その体をオレンジ色の陽炎のような光が包む。……それが、はじめの日に見た『流れ星』と同じ色だということに気付くのに、そう長くかからなかった。

「じゃあ……僕はこれで。若葉さん、さようなら」

「……うん、じゃあね、琥珀」

「「え?」」

 と、桜井先生と八雲……琥珀が、今の私のセリフに驚いて目を点にする。……何よ?

「嫌? 私にこう呼ばれんのは」

「……いえ、とんでもない!」

 八雲を包む光が強くなっていく。目を開けているのがだんだんきつくなってきた。それでも……私には、その向こうで笑っている琥珀がはっきり見えた。

 お互いに、もう数秒もない、と悟る。そして、


「それじゃあ、また!」

「ええ、またね、琥珀!」


 瞬間、


 ヒュンッ!


 コンコルドも真っ青のすさまじいスピードで、琥珀は天に上って行った。

 ああ、超長距離の時間跳躍には、成層圏まで飛んで加速する必要が……とか言ってたっけ。それか……。まるで怪獣倒したウル○ラマンみたいに帰ってったわね……。

 にしても……『また!』に『またね!』かぁ……。

 未来人と現代人……もう会うことなんてないだろうに……そう思いたくなくてあの返事、お互いまだガキね。

「……帰るか、常盤。送るぜ?」

「……はい、そうですね」

 あんまりそうしたくないけど……桜井先生の問いに、肯定で答える。

 桜井先生は、何も言わずに私の肩にポンと手を置き、次の瞬間テレポートを作動させ……と、その時、


「あ……」


 流れ星が見えた。テレポート直前の……一瞬だけ。

 それが本物か、もしくはまた琥珀かはわからない。けど……私は願い事をした。


『迷惑じゃなければ……またあのバカに会えますように……』




 こうして、未来人・八雲琥珀と、私・常盤若葉の非日常的な7日間は終わりを告げた。





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