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八雲レポート  作者: 和尚
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夜の砂浜の白学ラン

 夜の海岸。

 街灯も無いとなると、さすがに暗いなぁ……ちょっと不気味。


 隕石が落ちたはずの浜辺には、運良く私以外の誰も探しに来ていなかった。これはラッキー、今の内に回収しちゃおう。肉眼で見えるくらいにあんだけはっきり落ちたんだから、クレーターなり何なり、相当はっきりした痕跡が残ってるはず……見つけるのは簡単よ!


 ……と、思ったんだけど……。


「無いなぁ……」

 クレーターなんてどこにも、影も形もない。そんなバカな、けっこう大きかった風に見えたんだけどな……。

 いや待った、そもそもちょっとおかしいわね……隕石が落下したってんなら、地響きの1つも起こっててもいいはずだし。けど……そんなの全然感じなかった。それに隕石って確か、こんな小さいやつでもその何十倍もの大きさのクレーターを残す……って話だったし。

 極めつけはこの静かさ……NASAでもJAXAでも、衛星か何かでここに隕石落ちたって感知した人達が来ててもいいのに……。

 まあ、そういう人達は組織だから対応が遅いにしても、野次馬の1人もいないって何……? ここ来てから見た人って言えば、イチャついてるカップル数人と、バーベキューしてる大学生数人だし……。

まるで、私以外にこのことにだれも気付いてないみたいな……?

 と、そんなことを考えながらペンライト片手に砂浜を見回していると、

「……ん?」

 その視界の隅に……人影が映った。

 誰だろ……またバーベキュー? それとも今度こそ野次馬? なんか海の方見て突っ立ってるみたいだけど……。

 と、向こうも私に、おそらくは私のペンライトの明かりに気付いたらしく、こっちを振り向いた。私がペンライトを、顔に向けるのは不作法だから足元から膝上くらいまで向けると、その人の姿が暗闇に浮かび上がった。

 ……なんか……変わった服装だな……。

 白い……学ラン? え、白学ラン? ホントにあるんだ、初めて見た……。

 背丈は私と同じくらいだから、170弱かな? 顔は……よく見えないけど、メガネかけてる。髪の色……まではわかんない。男の子で、学生……よね、学ラン着てるし。

 けどこの人、明かりも持たずにここで1人で何してんだろ?

 と、

「あの……」

「え?」

 その人が唐突に口を開いた。

「な、何か?」

「あ、すいません、警戒しないで下さい、怪しい者じゃないので……このへんの……地元の方ですか?」

「あ、はい、一応……」

 まるで自分はそうじゃないみたいな言い方ね……旅行客?

「そうですか、あの、ここ……どこですかね?」

「ここ? いや、青林浜ですけど……」

「青林浜……?」

 聞くやいなや、その人はポケットから何やらケータイみたいなのを取り出した。ノートパソコンを思わせる、横開きの形状だ。

「えっと……あ、やっぱり到着予定地点と大分ずれてるなあ……。プログラムは正常に稼働したはずなのに……」

「……? あの……どうかしたんですか?」

 この人……もしかして迷子? 何かブツブツ言ってるし……。いやでも、迷子になって海岸に出るとかある……?

「あの」

「はい?」

「えっと……今って西暦何年でした?」

「へ? いや……」

 普通に2010年でしょ? ていうか……それが何か?

「2010年……? 時間座標までずれてる……さすがに抽象距離的に遠すぎたのかな……? でも、演算上は問題なかったし、特にシステムに異常も誤作動も見られなかったのに……」

 何か顎に手あててブツブツ言ってるけど……しかも、言ってる内容何一つわかんないし……。

 ……もしかしてこの人、関わっちゃいけないタイプのアレな人? うわ……夜遅くに変なのと会っちゃったかも……。ここは何か変なこと言い出される前に、帰った方がいいって私の第六感が告げてる気 が……。と、とりあえず……


 …………あれ?


 一旦目を離してから再び視線をその白学ランの少年に戻すと……そこには、その謎の少年の影も形もなくなっていた。

「え、うそ……何で!?」

 消え……た……? 足音も何もしなかったのに……っていうか、こんだけ開けた砂浜なのに、見渡してみてもどこにもそれらしき人影が見えないし……第一、足跡も無いよ?

「も、もしかして……おばけ……?」

 一気に背筋が寒くなるのを感じた。やば、これ……リアルに怖い……。

 こ、これはきっと神様が、寄り道しないでさっさと帰りなさい、って言ってくれてるんだわ。品行方正は大事よね、うん。

 あ、青葉には悪いけど……隕石は諦めてさっさと帰ろ……。

 感覚的に寒いのに、背中は汗びっしょりという気持ち悪い感触に耐えつつ、私はこれ以上変なものが見える前に家に帰ることにした。


☆☆☆


「あの人、誰……っていうか、何でここにいたのかな……? 僕の姿は、誰にも見えないはずなのに……?」

 もしもその時、常磐若葉が一瞬でも頭上の星空を見ていたら……見えたかも知れない。

 その白学ランの彼が……地上5、6mほどの位置に、ふわふわと浮いている光景が……。





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