夜、ヤンキーと遭遇
俺が塾を終えて帰り道を歩いていると、急に電話が鳴った。
「誰だ?」
相手を見れば、母親だった。
「もしもし」
「もしもし」
母親の声は甲高く、耳元からスマホを外すと、
「何?」
とつんけんどんに聞く。
すると母親は慌てた様子で、
「牛乳とパン、買ってきてくれない? 買うのを忘れちゃったのよ」
「分かった。コンビニでいい?」
「OK」
短いやり取りを終え、俺はLINEを見る。
彼女からメッセージがきており、
「終わった? 大丈夫?」
と心配するものだった。
俺は1人でにやりと笑うと、LINEをうち返す。
「大丈夫。これからコンビニに寄るところ」
速く打つと、歩いて行く。
周りは空よりも明るく、1人で歩いても平気だった。
彼女からLINEが返ってきて、
「早く話したいよー!!」
というものだった。
俺は頰を緩めると、返事を後にする。
コンビニに到着したのだが、入口の周りにはヤンキー達がたむろしていた。
俺と同じくらいか、それとも上くらいか。
しかし俺は怖いとは思わなかった。
ヤンキー達もこちらを見たが、すぐに顔をそらす。
俺の顔は強面だからなと1人で完結させると、ヤンキー達の間を抜けてコンビニに入る。
「牛乳とパン」
店内を探すと、すぐに見つかり、ついでに自分のスイーツも買う。
「ありがとうございました」
店内を出ると、ヤンキー達はまだいて、何か喧嘩しているようだった。
理由は不明だが、掴みかかっているので、俺は一瞬、どうしようかと思い迷ったのだが、仲裁に入ることにした。
「ちょっと待った!!」
両手を広げ、2人を離そうとすると睨まれる。
「何だよ、お前」
「何でもいいだろう? それより店に迷惑がかかるから、喧嘩はやめておけ」
「こいつが悪いんだよ」
「何!! お前が悪いんだろう」
2人がまたぶつかり合っているので、俺は困ったと思ったその時、ぐうとお腹の音がした。
犯人は女の子らしく、恥ずかしそうにお腹を押さえている。
俺は自分の彼女の顔に見えてしょうがなく、買い物袋からスイーツを取り出す。
「食え。お腹が空いているんだろう?」
「え、でも」
「いいから食え」
押しつけると、ヤンキー達はやる気がそがれたのか、空気が穏やかなものになっていた。
ヤンキーになるにも、人には言えない理由があるからなと思い、俺は何も聞かなかった。
するとリーダーなのか、1人が話しかけてくる。
「サンキュ。助かる」
「おう。困った時はお互い様だ」
俺はお人好しだなと思いつつも、はっきり答える。
ヤンキーの連中も悪い人間ではないらしく、リーダーが頭を下げると、皆、頭を下げてきたのだった。
「じゃあ、俺はこれで」
立ち去ろうとすると、リーダーが話しかけてくる。
「俺のLINE、教えてやる」
「え? 何で?」
「困った時はお互い様なんだろう? 何かあったら呼べ」
「そういうことか」
俺とリーダーは、グータッチすると、スマホを互いに取り出し、LINEを交換する。
「ありがとうな」
礼を言うと、スマホが鳴った。
ビデオ電話らしく、俺の彼女が顔を出してくる。
うわ、今はまずいんだけど、と思ったが、嬉しくてつい出てしまう。
「わー!! お疲れ様!!」
「ありがとうな」
少しはにかむと、リーダーが覗き込んでくる。
「誰?」
「俺の彼女。可愛いだろう?」
素直にうなずくリーダーの肩を叩く。
彼女もびっくりした顔をしており、声をかけてくる。
「誰かと一緒なの?」
「今、仲良くなったところ。いい奴だから警戒するな」
「うん」
彼女はこくりと可愛く、うなずいてくる。
「俺の彼女、うさぎみたいに可愛いだろう?」
「そうだな。仲が良いのか?」
「おう。お前の恋人は?」
「今、スイーツをもらった奴がそう」
「なるほど」
納得していると、スイーツを持った彼女が、恥ずかしそうに俯く。
「大事にしてやれよ」
そう言うと、俺はヤンキー達と別れたのだった。
ビデオ電話は続いており、彼女が戸惑っているのが分かる。
「また後で連絡するから。切るぞ」
彼女はバイバイと手を振ってきて、電話が終了する。
俺は牛乳とパンを持った手を上げ、歩くのだった。




