表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全攻略  作者: 山田
1/2

10000回転の先に

9,999回転──


それが、俺がこの牙狼(GARO)を打った累計だった。


3日間、同じ台。

朝から閉店まで、ただただハンドルを回し続けて、出玉はゼロ。


台の前で飯を食い、台の前で居眠りをして、

トイレすら惜しんで打ち続けて、もう3日目。


「どうせここまで来たら、どこまでハマれるか見たくなるだろ…」


ハンドルをひねるたび、金が減る。

精神がすり減る。


そして──10,000回転目。


保留が赤に変わった。


ちょっとだけ、心臓が跳ねた。


牙狼剣が飛び、タイトルは金。演出は激熱。


「さすがに、これは…」


…そう思った。ほんの一瞬だけ。


そして──


ハズれた。


液晶が通常画面に戻り、保留が消える。

演出は、すべてなかったことにされたように消えた。


「……嘘だろ……?」


その瞬間だった。


世界が、止まった。


音が消えた。

液晶の映像も止まり、玉の動きも、ホールの喧騒も、すべてが遠ざかった。


気づけば、俺のまわりには──牙狼の筐体だけがあった。


フロアはない。店員もいない。音楽も光もない。

ただひとつ、牙狼だけがそこにあった。


「……夢か?」


そう思った。


だが、夢にしては感覚がありすぎる。

ハンドルを握ると、現実と同じ重みがあった。


試しに回してみる──

玉が発射され、液晶に保留が溜まる。


「……回せってことか」


自動じゃない。

俺が回さないと、何も始まらない。


1回転、また1回転。

ハンドルを回すたび、保留がチャージされて演出が始まる。


5回転、10回転、100回転。


1時間、2時間……体感でどれだけ回したかも分からない。


「誰もいない」「金も減らない」「でも当たらない」


それでも──ここは、静かだった。


現実みたいに、周囲の爆音も、嫌な視線も、肩越しの圧もない。


ここには俺と、台だけがある。


“当たらない牙狼”を、ただ俺が、回すだけの世界。


それが、最初の“攻略の部屋”だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ