2 人間の女の子 サラ
人間の女の子 サラ
ある日のお昼ごろ、ベルがいつものように深い緑色の街の中で、なにか使えるものがないかといろんなところを探していると、ふと、誰もいないはずの緑の街の、もう木の大きな根っこによって、ぼこぼこになってしまっている、苔だらけの中央通りの少し遠くの道の真ん中のところに、一人の女の子が倒れていました。
その人間の女の子を見つけて、ベルはすごくびっくりしました。
(はじめは、そこに倒れている女の子が、緑の街に差し込んでいる太陽の光りの屈折が作り出している、幻ではないかと思うくらいに、それはもうすごくびっくりしたのです)
ベルは手に持っていた両手いっぱいの戦利品(発掘品)をその場に手放して、そのまま駆け足で、女の子のところにまでいきました。
女の子は十歳くらいの女の子で、金色の長い髪に、白い肌をしていて、白い学校の制服のような服をきていました。瞳の色は目をつぶっていたのでわかりませんでした。
ちょうど、建物よりも大きな巨大な木々の間から、光りが差し込んでいるところで、白い小鳥が一羽、その女の子の体の上に止まっていました。(ベルがやってくると、どこかに飛び去ってしまいました)
「あの、大丈夫ですか?」
ベルはそう言って、女の子の体をゆらゆらと揺らしてみました。
「……う、うん」
と女の子は言いました。(女の子の声を聞いて、ベルははっと、瞳を大きくして、とても驚いた顔をしました)
い、生きている。
この女の子はちゃんと生きている女の子なんだ。
と女の子が生きていることがわかって、ベルは思わず、どきどきとしてしまいました。
女の子は気を失っていて、意識はありません。
体も、とても弱っているようにみえます。
とにかく、まずは優しい放送局まで、女の子を連れて行って、手当てをしなければいけないとベルは思いました。(ベルはいつ、生きている人間や動いているロボットがこの優しい放送局にやってきたり、あるいは通信を返してくれたりしてもいいように、ちゃんといろんなものを毎日集めて、準備をしていました)
「よいしょっと」
そう言ってベルは女の子の体を、小さな自分の体になんとか(よたよたしながらだけど)背負うと、そのまま優しい放送局まで、なるべく急いで(でも、女の子の体をあまり揺らさないように気を付けながら)歩き始めました。
それが、ロボットであるベルと生きている人間の女の子、サラとの初めての出会いでした。
目を覚ましたサラの瞳は、綺麗な空みたいな青色でした。