歓迎パーティー①
三日後の事です。
私はいつものように目覚め、朝日を眺めていると、ふらっと現れたカルアさんが言いました。
「皆でマリアの歓迎パーティーを開きたいんだけど、どう?」
「歓迎パーティー、ですか……?」
楽しそうではあるけれど……。
参加してくれなさそうな方もいらっしゃいますし、一部のメンバーだけだとかなり少数な気もします。
第一、私のためにわざわざパーティーを開いて下さるんですか……?
「因みにティアの許可も下りてるんだけど」
私の考えがお見通しのカルアさんは、私を見たがら親指を立ててグーッとポーズをしました。
「本当ですか……?」
「私に聞かないで下さい」
心配になり、ティアさんがいるバルコニーの方を向くと、ティアさんは面倒くさそうに言いました。
「……まぁ、いいんじゃないですか。皆と食事をするのも楽しいですしね」
ティアさんはバルコニーの柵に肘を着きながら、「今回くらいは私も参加します」と付け足します。
「ティアさんありがとうございますっ! ……あれ、でもどこでやるのでしょう。先日私が会ったセニシエさん、セインさんもお友達なんですよね……?」
私は例の二人が気になり、カルアさんに問いました。
因みに二人のことはお城に戻った後、森の二人、お城の二人、双子、皆共通したお友達だと教えて頂きました。
「そのことなんだけど、二人は不参加だって」
「あら……」
「事情が事情だから、マリアのせいじゃないよ?」
カルアさんは気を落とさないで、と慰めてくださいました。
「残念ですけど、仕方ないですね……」
「うん、残念だけど――」
「次お会いした時にプチパーティーをしますっ!」
「おお、元気だねー」
威勢よく宣言した私を見て、カルアさんはぱちぱちと拍手をします。
……なお、ティアさんはため息をついています。
私は気にせず言いました。
「ふふふ、実は既に予定があるんですよ。なので楽しみが増えたと思えば問題ないのです」
セインさんとの約束を忘れるわけがありません。
セニシエさん次第になってしまいますが、もしセインさんと三人でご一緒できれば、少しの間でも楽しく過ごせるではないでしょうか。
なのでここはまた改めてということにします。
そして、ここは私が主人公の夢の世界です。
皆さんのお言葉に甘えて歓迎パーティーに参加させて下さい。
「じゃ、早速なんだけど……森へゴー!」
「え、展開早くないですか? 準備は……?」
「大丈夫。いちにのさんっだから」
「そこはファンタジーなんですね!」
やっぱり、この世界はツッコミどころ満載です。
「私も髪の毛セットし直したら行きますので」
「あ、はいっ! よろしくお願いします!」
ティアさんはそう言うなりバルコニーを後にしました。
彼の長い長い髪の毛は、どのようにして結われているのでしょう。メイドさん、でしょうか。
お一人でやるにはかなりの長さですが……。
「よし、じゃあマリア。オレの手握って」
「え、まさか飛び降りるとかないですよね」
私はカルアさんに恐る恐る手を伸ばしながら聞きました。
「そのまさか、かもね」
そう言ってカルアさんは、私を横に抱きかかえると、
「そーれっ!」
「ちょ、心の準備がっ――きゃぁあっ!」
ぴょんっと柵を乗り越えて飛び降りました。
以前も言いましたがもう一度言います。
ここは三階です。
「――はい、地面」
「あ、あひぇ~……」
心臓が早鐘を打っています。
ドキドキではありません。ドドドドドッと爆音で鳴っています。
ですがよかったです。今回はカルアさんが抱きかかえて下さっていたおかげで、無事です。
この世界に来た時は木の上に落ちましたから、えぇ、この作品のヒロインとしてそんなことがあって良いのでしょうか。
「森へレッツらゴー!」
「いちにのさんって言ったの誰ですか! ていうか、降ろしてー!」
カルアさんは楽しそうに全力疾走です。
振り落とされないようにしがみつく私は、さながら誘拐された人みたいです。
「ねぇマリア。何が食べたい?」
「えぇ、このタイミングで聞くんですか……?」
「丁度よくない? パチンッて出してあげるよ。……モランゴが」
「モランゴくんなんですね」
カルアさんは一体何ができるのでしょうか。飛び降りくらいしかわかりません。
「オレもできる事あるし! 多分!」
「もう、心の声読まないで下さいっ」
ですがどうでしょう。
このやりとりも安定してきた気がします。
……落ち着くってやつですね。
「――あ、カルアさん。私今ビーフシチューとか食べたい気分です」
話は戻り、何が食べたいか考えた結果、パッと思い浮かんだのはビーフシチューでした。
「お、いいね。食べてみたいや」
カルアさんはさらっとそんなことを言いました。
「……? 食べたことないんですか?」
私は首を傾げます。
ビーフシチューといったら定番な気がしますが……。
「うーん、まぁね。……あ、でも夢なら沢山食べれるね」
「……確かに、お腹いっぱい食べれちゃいますね!」
少しだけ引っかかりましたが、カルアさんもそこまで気にしていない様子だったので、深くは考えないでおこうと思います。
「それとさ、きっとシラユキがアップルパイ焼いて待ってると思うんだ」
「わぁ、アップルパイですか。いいですね!」
「うん。ぜーったい美味しい気がする!」
カルアさんは、私以上にウキウキワクワクといった調子で森の中を進んで行きます。
どんどん進み街がうんと遠くなってきた頃、ほんのり甘い香りが漂ってきた気がしました。
これから、私の歓迎パーティーが始まります。
きっと、すごくすごく楽しい時間になるんだろうな。
そう私は思いました。




