出会い④
「――ここが、とりあえずマリアさんの部屋になります」
ところ変わって、ティアさんに案内されてやって来たのは、私がこれからお借りするお部屋。
ちなみにティアさんのお部屋はここの左側に位置しています。
(とはいえ、扉と扉は結構距離があるし、言うほどのことなのかしら)
「お邪魔しまーす……」
鍵を頂き、ガチャリと音を鳴らします。
扉を開けて見ると、そこには夢のように、いえ、ここは多分夢ですが。広い広いお部屋が現れました。
「わ、わぁぁっ」
「どうです?」
「凄いです! これがゲストルームなんですか!? わーっ、わーっ」
「走り回らないで下さいよ。貴女ならやりかねない」
「やりませんよ! わっ! バルコニー!」
「あっ! コラ! もう、言ったそばから…っ」
「すごーい! 景色一望できますね! あ、割とすぐ近くに隣のバルコニー……」
「だから嫌なんですよ」
「す、すみません……」
なるべく、バルコニーには行かないでおこう。私は心に誓いました。
居候となる身、ここまで豪華なお部屋でなくとも良いのですが、彼ら曰く、かなり狭い部屋の方なんだそう。
「基本、何してても構いません。僕達も業務がある時以外はさっきみたいに結構…自由ですから」
「わかりました」
「あと、食事の時間は――」
ティアさんから一通りの事を教わり、部屋に一人になった私は、ベッドに座り込んでこれからのことを考えます。
「うーん。明日以降、何をしていけばいいんだろう」
夢だもの。突然終わるかもしれないし、長い長い夢になるのかも。そもそも私は何故、双子と出会ったんでしょう。
とりあえずシラユキさん、シェルディさんにもお礼をしに行きたいですし、明日はご挨拶が最善ですね。
そんなことを考えていると、バルコニーの方からコンコン、と音が鳴るのが聞こえました。
(バルコニーから……?)
そう思い、恐る恐る振り返ると、笑顔のカルアくんが窓を叩いていました。
「やぁ」
「やぁ、じゃないですよ! 怖いです!」
「いや、なんていうか、これからの事考えてるかと思って」
「当たっていますけど、さっき帰ったんじゃ……ていうか何処から」
「オレ、神出鬼没だから。突然現れて、突然消えるのは得意なの」
そういう問題なのでしょうか。
ここが三階だということは、夢だからで済むことなのでしょうか。
カルアくんを中へ入れながら、
「これからのことは少し、気になりますけど……」
と答えます。
「だよね! さっき伝えるの忘れててさ、あ、言わなきゃって思って」
「もう、大切なことは忘れないでくださいっ」
「あはは、ごめんね」
カルアくんは頭を掻きながら笑って、そして、真剣な表情で向き合います。
「あのね、マリア」
「はい……」
「俺はね、皆が幸せであってほしい。ずっと、ずっとそう思ってる。皆が笑顔で……、特にマリアが笑顔ならすごく、すごく嬉しい。それが俺の唯一の願い」
「………」
「マリアなら、きっとできるから」
私の両手を握り締めるようにして、カルアくんはそう言いました。
真の意図を掴むことはできませんでしたが、今目の前にいるカルアくんを見たら、どうしてか、何が何でも助けてあげたい。と感じてしまったのです。
「……わかりました。私がこの夢の主人公である限り、幸せをお約束します」
発言として、変かもしれません。
ですがここは夢の中。楽しいハッピーエンドにしてしまえば良いわけです。何より、今かなり楽しいですから。
「……! ありがとう」
「頑張りますね」
カルアくんはぱっと明るい表情を見せると、また、先程のようにぎゅっと抱き締められました。
そしていつの間にか、夕焼けが、部屋をオレンジ色に染めていくのが見えた時には、カルアくんはいなくなっていました。
「……本当に、神出鬼没です」
カルアくんを助けたい、だなんて。
何故そう思ったのでしょう。
この世界は、一体彼にとってどんなものなのでしょうか。
私は夢の中ではありますが、目を閉じて、一旦心を落ち着けることにしました。
そしてこれから先の日々を、最後まで楽しく過ごそう。
そう、心に決めたのでした。




