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出会い③

「……は?」


 ティアさんは私の顔を見ながら、ものすごく面倒くさそうな表情を浮かべました。

 私は酷い! と言ってしまいそうなのを、ぐっと堪えながら改めて伺います。


「カルアさんと、モランゴさんです! 双子で、赤い髪の毛……の」

「それって、俺達のこと?」

「ひゃあっ!」


 それは突然でした。耳元でカルアくんの声がしたと思えば、勢いよく後ろから抱きつかれたのです。

 私はびっくり仰天してしまいました。


「……貴方達はいつも突然ですね」


 ティアさんは、テーブルに載っているであろうクッキーに手を伸ばしながら呟きました。


「…………」


 しかし、自身の分前であるクッキーが無くなっていることに気づいたのか、ひとつ、コホンと咳払いをして隣のシェルディをじっと見つめます。

 シェルディさんは、


「――ぉ、おぉっ、丁度いいところに来たな! 二人共俺達の友達だぞ」


 と、焦りながらティアさんとお皿から目を逸らして言いました。


「お知り合い……?」

「そそ、知り合い」


 離れる気配のないカルアくんは私をぎゅうっとしながらも、少し奥に立っているモランゴくんに「ねー」と、笑顔を向けました。

 モランゴくんも微笑み返してくれて、なんだか微笑ましいといった感情です。

 ところで、男の子の力って強いんですね。


「ぎ、ギブアップです……」


 カルアさんの腕をぽんぽん、と軽く叩きながら脱出を試みます。

 すると、謝りながらぱっと離れてくれたものですから、カルアくんは勢いがあるだけで、とても優しいなと感じました。


「私の知る方々、皆さん既に顔馴染みでしたか」

「うん、ティアとは今のよりもっと豪華なお茶会を開いたりもするよ」


 モランゴくんは答えます。

 初対面の分際で失礼なのは承知ですが、ティアさんって関わり辛そうなイメージが出来ているというか、なんと言いますか。

 でも、案外そうでもないのでしょうか。仲良しさんともなれば、初対面の印象とも違いますし。


「次開く時は是非、私も参加させて下さい」


 お二人に向かって一礼します。

 とはいえ、雰囲気大人しめの方達のお茶会に私のような騒がしい者が、ましてや見ず知らずの、どこから来たかもわからない人間が一緒にお茶会をしていいものか微妙なところですが。

 いえ、でもこれからここに住まわせてもらう身です。少しずつ距離を近づけなくてはいけません。


「気分が乗れば、ですね」


 ティアさんは、表情を変えることなく立ち上がると、


「イバラ、おやつも食べ終わったことです。彼女をここに置くなら部屋を用意しなくては。掃除もしなくてはなりませんし、シェルディさん、お二方も来てすぐで申し訳ないのですが……」


 三人を交互に見ながら言いました。

 三人共素直に応じ、「またね」と私達に手を振りながら部屋を後にしました。


(ここまでが一瞬の出来事だったわ)


 ――夢だから。


(夢……か)


 私は隣にいるティアさんに言いました。


「ここは、夢なんですよね。私が主人公の」

「…………さぁ、僕にはなんとも」


 夢の住人に聞いても仕方の無いことを聞いてしまいました。

 当たり前ですが、ティアさんは今度はなんだ、と言わんばかりの表情を私に向けてきます。

 そして、


「い、いひゃいでふ」

「……痛いんだ」


 と、私の頬を軽くつねりながら呟きました。


「当たり前ですよ! ぎゅってされたらお肉が悲鳴上げますから」

「……夢でも?」

「夢、でも……?」


 そう言われたら、確かにそうかもしれません。

 空から落ちてきた時も痛覚はありました。でも、夢の世界って、痛みを感じないってどこかで聞いたことがあるような。ないような。


「――そんなことより」

「そんなことより!? 大事な事なんですけど!」

「イバラ、泊めるのは良いのですが、マリアさんの部屋は何処にしましょうか」


 あからさまに無視されてしまいました。


「……そうだな。部屋は屋敷の広さと住居者の人数が比例してない分、正直ゲストルーム含め沢山余っているけれど」


 イバラさんはティアさんを見ながら首を傾げます。


「正直、そう考えずともティアの部屋の隣でもいいのでは。と思うけどね」

「それは、何故」

「え、ティアさんとお隣でいいのですか? 知っている人が近くにいると安心します!」

「何故」

「何故って、マリアもそう言っているから。ゲストルームだよ、あそこ。それに何かあった時にすぐ守ってあげられるよ」

「物騒な。大体、近くに男がいる方が迷惑だと思うのですが」

「私は大丈夫ですよ?」

「決まりだな」

「………………」


 そんなこんなで私の部屋はすぐに決まりました。

 心底嫌そうなティアさんには大変申し訳ないと思うのですが、屋敷の中で離れたところで過ごすより、近くにいて下さった方が気持ち的にも寂しくないのでは。そう考えたのです。


「……掃除を頼んできます」


 ティアさんは溜息をつきながらそう言うなり、足早に立ち去ってしまいました。

 残された私は、跡片付けを始めようとしているイバラさんに、改めてお礼とお手伝いをと思い傍に駆け寄りました。

 イバラさんはこちらに目を向けると、


「これからよろしくね」


 と優しく微笑んで下さいました。

 いきなり現れた私に対して親切過ぎるほどの行為を、彼はして下さいました。皆さん、親切で、感謝してもしきれなくて、裏切る事など絶対に出来ないなと。私も、恩返ししなくてはいけません。


「こんな、得体の知れない私なんかに優しくして下さり、本当にありがとうございます。これから、よろしくお願い致しますね。お役に立てることがあれば、何なりと申し付けてください。私でよければ何でもしますから」


 ここは真面目にいかなくては、そう思ったものの、


「さっきの騒がしさ、どこいったのさ」


 と、彼が面白そうに笑い始めてしまい、早くも真面目モードおしまいです。

 それに、少しだけですが、先程までの大人っぽさとは裏腹に、年相応のような柔らかさをイバラさんから感じ取り、ティアさんが戻ってくるまでの待ち時間も、自然と会話が弾んでいきました。

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