束の間街へ
「――たまには街もいいな」
「人混みは嫌だけどね」
「まぁ……、街だから仕方ないっしょ」
二人はそんな会話を繰り広げます。
私はというと、今日もパン屋さんでおやつを買ってしまいました。
パン・オ・ショコラおいしいです――!
いわゆる食べ歩きをしながらお二人の用事を済ませていきます。
「おじさん久しぶり、ワイン作ってきたよ」
「おぉ、頭巾の兄ちゃんじゃないか。いくらだい」
「いつもの値段でいーよ」
シェルディさんは自家製ワインを作って売るのが仕事のようです。
顧客もついてるのですから、先日飲んだワインは相当美味しい部類なのでしょう。
「ありがとよ、またよろしく頼むよ」
「こちらこそまたよろしく!」
お金が入った袋を手にし、シェルディさんは嬉しそうです。
「シラユキは果物買えたか?」
「うん。買えた」
リンゴやバナナなど数種類の果物をバスケットに入れ、静かなタイプなのでわかりづらい表情ではあるものの、こちらもご満悦そうです。
「あと一件ご贔屓回れば今回の資金調達終わり! 後はマリアの好きなところ行こうぜ」
「はい!」
そう言ってシェルディさんは、「あっち」と指差して連れて行ってくれました。
「ども~お久しぶりです」
出入口でドアを鳴らします。
それに気づいた家主である車椅子のおじ様が、奥から出てきました。
「よう、シェルディじゃねぇか。……因みに、そちらの嬢さんは?」
「マリアです。はじめまして」
隣に並んでいた私は、シェルディさんのご贔屓さんに会釈をします。
「……なんだ、彼女か?」
「まだ友達です」
「そーかいそーかい」
“まだ”……?
いやいや、言葉の綾ってやつですね。
車椅子のお客さんなので、シェルディさんはしゃがんで目線を合わせます。
私も隣で目線を合わせると、おじ様はにっこりと笑いました。
「二本でよかったよね?」
「あぁ、とりあえずな」
シェルディさんは「はい」とワインを渡し、お代を受け取ります。
「これで今夜の晩酌が楽しくなるよ」
「ありがとうございます。オレもその為に作ってるんで」
「また頼むからね」
シェルディさんはその一言に頷くと、立ち上がりました。
――その時でした。
風一つない外の空気のはずなのに、ふわり、と深く被っていたシェルディさんのフードが脱げたのです。
「――!」
「っ化け物!!」
私はその一言に、言葉を失います。
目の前のおじ様は、先程までの優しさとは一転、有り得ないものを見るような目でこちらを指差したのです。
いえ、正確には――シェルディさんの“耳”を見ながらでした。




