いざ森へ
歓迎パーティーも終わり、また数日が過ぎました。
この世界へやって来て一週間程度が経ったところです。
そろそろ、カルアさんの言う“幸せにしたい”という願いを叶えるためにも動き始めなくてはなりません。
なんたって、私はそのためにいるのですから。
「……やっぱり最初に出会いましたし、シラユキさん、シェルディさんとお話がしたいかもです」
出会い方は不本意でしたが……。
「さて、今日も楽しく過ごせますようにっ」
私はえいえいおー! と一人、部屋の中でやる気を出します。
そんな時、ふらっとモランゴさんが現れます。
「おはよ、マリアちゃん」
「あ、おはようございますモランゴさん」
最早慣れたものです。私は動じずに挨拶を交わしました。
「カルアで慣れてるでしょ」
「えぇ、かなり慣らされました」
実は、モランゴさんが現れるのは二度目です。
一度目はカルアさんじゃない? と驚いてしまったのですが、二度目はもう大丈夫です。
「一人で森に行くんでしょ? だからこれ」
そう言って差し出してきたのはバタフライナイフでした。
「……何故?」
「何かあった時に使えるでしょ?」
「そんな危険、あの森にあるように思えませんが」
シラユキさんとシェルディさんも住んでいるくらいです。
私は半信半疑になりながらも一応受け取ります。
「でも、何も持ってないよりマシだと思うよ。か弱い女の子だもん」
「…………確かに?」
とはいえ、既にいろんな所へお邪魔している身。
そして、ほとんど死なないご都合主義な夢の世界。
何とかなる気がしますが、彼の言うこともあながち間違っていないでしょう。
「ポケットに入れとくといいよ」
「なるほど」
私は言われるがまま、ドレスに付いている隠れポケットにバタフライナイフをしまい込みました。
「うん、それでよし」
モランゴさんは満足そうに頷くと、
「僕の用はこれだけだから、じゃあね」
と気づいた時には姿が見えなくなっていました。
「…………一体、何に……?」
果物の収穫とか……?
私は考えますが、全然思いつきませんでした。
とにかく時間がもったいないですし、バタフライナイフの事はさておき、私はお城の裏口へと向かいました。
「――門番さん、マリアです。森へ行ってまいります」
「あぁ、いってらっしゃい。気をつけるんだよ」
「はいっ!」
門番さんとも慣れたものです。
私は手を振って裏口を後にすると、少しだけ駆け足になりながら、森の中へと向かっていきました。
森は天気だろうが何だろうが、相変わらず薄暗いですが、何も怖いことはありません。
ここは主に二人が使う抜け道でもありますし、何より、危険なものが出るだなんて聞いた事がありません。
――まだ一週間しかいませんが。
もう、モランゴさんのおかげで無駄に緊張してしまっています。
因みに、お城から小屋まで三十分から一時間の距離ですが、お城以外の所から森に繋がる道はありません。それも、広く舗装された道ではなく、何とか人が通れる程度。
お城から森への出入口もわかりづらくなっている為、一部の人しか知らないのです。
「とはいえ、お二人とも出稼ぎやマルシェの利用の為に時々街中を歩くみたいですね」
詳しいことはまだわかりませんが、モランゴさんが初めて部屋に現れた時に教えてもらったのです。
何故、こんな森の奥深くで暮らしているのでしょうか。
教えてくれる事なのでしょうか。
「まずは仲良くなるところから、ですね!」
私は意気込むと、残りの道を一気に進んで行きました。




