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歓迎パーティー②

「――よし、いい感じだねっ」


 いつもは静かな森の中が少しだけ豪華に飾り付けられた空間に、私達はテーブルを囲みます。

 森に住む動物達――シラユキさんのお友達ですね。数匹来て下さっています。


「マリアちゃんの食べたいもの……ビーフシチューだっけ」

「はいっ、食べたいです!」

「わかった。えいっ」


 モランゴさんは、カルアさんが言っていた通り、パチンッと指を鳴らしてビーフシチューを用意して下さいました。

 ぽんっと現れたビーフシチューですが、どうやら本物みたいですね。おいしそうな香りが漂ってきます。


「……いつだったか資料で見たイメージで出してみた。味、美味しいかな」


 首を傾げながらモランゴさんは言いました。


「きっと大丈夫ですよ。でも、始まる前に一口味見を――……んん! おいしいです! カンペキッ」

「――ほんと?」


 心配そうなモランゴさんに、私はうんうんと頷きます。やっぱり夢の中でもご飯はおいしいです!


「アップルパイもあるから、食べてね」

「ワインもあるぜ!」


 シラユキさんがテーブルに置いたアップルパイ、きらきらで艷やかです。

 そして、シェルディさんが抱えているワインは赤ワインです。

 

「……アルコール飲める人少ないんじゃない?」


 シラユキさんは大丈夫なの? と言ったようにシェルディさんを見ます。


「ふっ……、そう言うと思って葡萄ジュースも用意したんだな~これが」


 テーブルに置いた赤ワインの横に、更にドンッと置かれたのは、マルシェに売られていた葡萄ジュースでした。


「そこはノンアルコールのシャンパンでよかったのでは……」

「葡萄の血が騒いだんだよっ! 第一、カルア達だって多分飲めるぞ! だから問題ないね」

「あははっ飲めるかな~」


 シェルディさんはワインを注いでカルアくん達の前に差し出しました。


「んで、ティアとイバラはまだこれな」

「……ありがとうございます」

「ありがとう」


 無事に合流していた二人は、葡萄ジュースを受け取ります。

 勿論、私も葡萄ジュースです。


「――というわけで、マリア歓迎パーティー開始だよ!」


 カルアさんの音頭でパーティー開始です!


「なぁなぁ、そういえばマリアって空から来たんだよな」

「え、えぇ……まぁ。そうでしたね……」


 シェルディさんの質問に、私はあの時のことを思い出します。

 ちらり、とカルアさんとモランゴさんを見ますが、二人は目を逸らして知らんぷりです。


 な、なんで知らんぷりするんですか……っ。


「ホント怖かったんですよ? 暗闇から落とされたと思ったら森ですよ? 死んでしまうかと思いました」


 あははっと笑ってみるものの、あれは本当に死を覚悟したのです。

 夢とか関係ありません。(まさ)しく、死です。


「大丈夫大丈夫、この世界はほとんど死なないから」

「そこは関係ありませんっ!」


 シェルディさんの言葉は間違っていないとしても……!

 ていうか、ほとんど? 死ぬ場合があるんですか……?

 いや、確かに海の中でも窒息しかけましたけれど。


 ぶんぶんと頭を横に振って、気を取り直します。


「それがどうしたんですか?」

「いや、空ってどんな感じなのかなーって。楽しそうだよなっ」

「夢ですし、そのうち飛べる展開があるかも?」

「ん? ……そう、かな。やってみるか……?」


 シェルディさんは翼を広げるポーズをしてみます。


「――って、ないない。ありえないわ」


 笑いながら断りました。


 できると思ったんですけどねー?


「……そういえばイバラさんとティアさんは、主従関係でしたよね」

「突然すぎませんか」

「ここは私の世界ですから。私が決めるんです」


 これはカルアさんに言われた通りです。

 すると、ティアさんはため息をつきながらも「そうですよ」と教えてくださいました。


「ティアは剣術が優れてたからね、両親が是非ともって頼み込んだんだよ。それに歳も近いから」

「そう、でも付き人になってからはそんなに長くないですね。おそらく顔見知りではありましたけど」

「……なるほど?」

「まぁ僕としては、役に立てているのであればそれでいいですけどね」


 ティアさんはフランスパンを口に含むと、もぐもぐと食べ始めました。


「硬い」

「ははっ顎弱ってんじゃない?」


 ティアさんの呟きにシェルディさんはツッコミます。

 ティアさんはムッとした表情を浮かべて、目の前にあった葡萄ジュースを口に含みました。


 その時でした。


「すまん。気にせず飲んでたが、赤ワインと葡萄ジュース逆だ」


 シェルディさんは申し訳なさそうに言いました。


 べ、ベタ展開……!!


 私は、こうもベタ展開があるなんて思ってもみませんでした。

 思えば赤ワインを飲んだことがないので、葡萄ジュースだと錯覚して全然普通に飲んでいました。


「これ葡萄ジュースだったんだ」


 モランゴさんは「なぁんだ」とつまらなさそうです。


「アッハハ、まぁ気にすることないでしょ。アハハ」

「そうですね、あははっ」


 いやいやいや、ベタに酔っ払ってる人いるんですけど!?


 どうやらティアさんとイバラさんは笑い上戸のようです。


「ねぇ、シェルディのせいでめんどくさいことになってるんだけど……」

「え、面白くない?」

「…………」


 シェルディさんの一言にシラユキさんは頭を抱えます。

 自ら撒いた種を楽しそうに見つめるシェルディさんは、ある意味ドSかもしれません。


「マリアさんほらほら食べてくださいよ~アハハッ」

「せっかく僕達も菓子を持ってきたんだ。美味いぞ~」


 ほれほれと高級そうなスイーツを差し出され、素直に受け取ろうにもなんだか扱いづらい。

 普段落ち着いた二人がこんなにもめんどくさくなるなんて、まだ知りたくなかったです。


「アッハハハ」


 もう、シェルディさん。笑ってる場合ではないですよ!


「カオスだね」

「そうだねカルア」

「ちょっとお二人はこんな時ばっかり何で冷静なんですか!」


 私はイバラさんに捕まれ、ケーキを一切れ食べさせられました。


「おいしいっ! ……けど違くて!」

「頑張れマリアちゃん」

「なんで家の中に入ろうとするんですかっ! そこは助けて下さいよ!」

「疲れたから」

「ちょっとぉ!」


 それから二人に解放されて、全力で謝罪されるまで数時間。

 私はこのめんど――面白い人達と共に時間を過ごしたのでした。

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