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あの命が生る頃に  作者: 青葉時雨
ハンター活動開始篇
1/7

第一話 始まり。

皆さん初めまして。青葉時雨(あおばしぐれ)と申します。

初投稿です。多めに見てください。


『、、、はるか昔、私たちの惑星『カナン』から400光年以上離れた恒星、『ヘレースカ-316』が超新星爆発を起こした。その爆発の『カナン』への影響は当時は無いと考えられていた。しかし、爆発による宇宙線が『カナン』を通過すると、異変が現れ始めた。突如各地に謎の生命体が現れるようになった。それは後に『ユニム』と呼ばれるようになる。そして、、、』


 学習用タブレットの機械音声といびき声が薄暗い部屋に響き渡る。

 この物語はとある青年が過去のトラウマを乗り越えるお話である。


 たまに見る悪夢がある。

 その悪夢は俺が忘れたい記憶を強引に思い出させてくる。

 俺が高校生の時に体験した地獄。


---3057年9月21日---


「フラクト!一緒に帰ろうぜ!」


 学校帰り。校門を抜けて家に帰ろうとしていると、後ろから声がした。

 振り返ると、幼馴染のスフェーがこっちに向かってきていた。


「あぁ、いいよ。」


 疲れ切った僕は歩きながら横に来たスフェーに適当に返す。こんなテンションの奴はこのぐらいの返事で良い。


「なんだよ元気ないな。明日からテストだからか?」


「、、、そうだよ。」


「やっぱりな!」


 こいつとは長年の付き合いだ。俺の考えなど殆ど分かっている。


「ったく、、、提出物が多すぎんだよ。特に数学とかさ。」


「それはお前が計画的にやってこなかったからだろ。」


 なんだこいつ。急に正論言いやがる。


「ま、今まで怠惰を貪る生活をした罰だと思って終わらせろよな。」


「はぁ、、。」


 思わずため息が漏れる。スフェーの言うとおりだが、流石にプリント5枚、ワーク54ページは無理だろ。

 提出物を楽に終わらせる方法がないかを考えていると、スフェーから質問が飛んでくる。


「話変わるんだけどさ、フラクトって結局ハンターになるの?それともそれ以外?」


 その内容はいずれ訪れる今後のことについてだった。

 『ハンター』。この星に生まれた者の3割がなると言われている人気の職業。はるか昔、突如現れだした化物、ユニムを倒すために活動する人たちのことだ。俺の周りにもハンターになった人が多くいるが、その殆どが、ユニムに殺されたり、ちゃんとした生活を送れていない。


「前から言ってるだろ、ハンターなんて面倒くさい事やらないって。俺は医者になるって決めてんだよ。」


 そう返すとスフェーは「そうなんだね。」とだけ返した。

 数秒間の静寂があり、今度は俺から質問をする。


「逆に聞くけど、お前はどうすんだよ。」


「僕はハンターになるつもり。父親がうるさくてね。」


 そうだった、スフェーの父はハンターだったな。


「そうか、頑張れよ。」


 それだけを返す。

 そんな話をしていると、スフェーの家の前に来た。


「じゃ、また明日な。」


「おう。」


 いつもの挨拶をして別れる。

 スフェーと別れてから、将来のことについて考える。スフェーは父親がうるさいとか言っていたが、スフェー自身もなりたいと思っているだろう。


「ハンターか、、、。」


 そう呟いていると、いきなり誰かに視界を塞がれる。


「だーれだ♪」


「やめろ雪夏(せつか)。」


「えー、違うかもよ。」


「嘘つくの下手くそか。」


 そう言うと視界が明るくなった。


「じゃじゃーん。正解!。」


 晴れた視界に映り込んだのは、もう1人の幼馴染の雪夏。スフェーと同じくらい共に時間を過ごしている。負けん気が強く、男子にも喧嘩で勝ってしまうくらい強い。それにいたずら好きだ。


「バレバレだぞ。」


「へへ〜。」


 なんか嬉しそうだ。


「で、なんのようだ。」


 雪夏に問いかける。


「なんか元気なさそうだったからさ。元気づけてあげようと思ってね♪」


「迷惑だ。」


 不機嫌気味に返す。


「なんだよ〜本当は嬉しいくせに。」


「そんな事一ミリも思ってない。」


「本当かな〜?♪」


 なんだこいつ、楽しそうにしやがって。

 幼馴染と適当に会話をして、家に向かう。

 そういえば雪夏もスフェーと同じく、将来はハンター志望だったはず。


「雪夏も将来ハンターになるのか?」


「うん、そのつもりだよ。私のお兄ちゃんがハンターでね。お兄ちゃんが通っているところに行こうかなって。」


 雪夏のお兄ちゃんって言うと雪哉(ゆきや)さんか。


「雪哉さん正式にハンターになってたんだな。最近見ないなって思ってたけど、中央大陸のハンターになってたんだな。」


 そう言うと雪夏は頷く。


「お兄ちゃんは『黎明(れいめい)』所属のハンターになったんだよ!家族の誇りだよ!」


 雪夏は嬉しそうに話す。

 武術都市、『黎明』。

 この世界の種族の95%が住んでいると言われる中央大陸の4つある国の一つ。それぞれの国が別々の役割を持っている。黎明は武を極めたい者が集まり、己を磨き、他者と競い合う、そんな場所と聞く。

 雪哉さんは剣術を駆使して戦うタイプの人だ。俺たちが暮らす島『テオ』で活動していたギルドに加入していないハンターの中では恐らく一番強かった。その剣術を磨くために『黎明』を選んだのだろう。

 そんなことを考えながら、雪夏と話していると、自分の家に着いた。


「じゃ、また明日。」


「うん!またね!」


 雪夏を見送って鍵を開ける。

 ドアを開けて家の中に入ると、妹のリミルが料理を作ってくれていた。


「ただいま。」


「おかえり~。」


 緩い挨拶を交わす。


「ご飯あと少しで出来るから。」


 リミルがスープを作りながら言う。


「分かった。すぐ来るね、ありがと。」


 そう伝えて自分の部屋に向かう。

 5年前、俺が11歳、リミルが9歳の時に『テオ』に人型のユニムが現れた。

 そのユニムは『テオ』で大暴れし、島民の8割を殺した。最終的にハンターが討伐したが、そのユニムは『テオ』に深い傷跡を残した。その時に俺の母親と父親は殺された。それ以来、支援金を貰いながら、妹と2人で生活をしている。家事などは分担している。


 部屋に着いて荷物を置く。

 制服を脱いで、部屋着に着替える。グレーのパーカーだ。

 着替え終わって、リミルのところに向かう。もう料理はできていた。


「いただきます。」


 そう言って2人で食べ始める。美味しい。

 おかわりをして、おなか一杯になる。


「ご馳走さまでした。美味しかったよ。」


 リミルに伝えて、俺は部屋に戻った。

 ベットに倒れこむと、食後ということもあって眠くなる。

 明日はテストだということも忘れて私は眠りについた。


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 、、、『ウウウウウウウウン!!!!、、、ウウウウウウウン!!!!』


 突如警報音が鳴り出す。


「うわぁ!」


 急な警報に驚き、飛び起きる。


『人型ユニム出現、人型ユニム出現、安全な場所に避難してください。』


 島中にある放送用スピーカーからユニムが現れたことを伝えるメッセージが流れる。それとほぼ同時刻、遠くの方で爆発音が聞こえた。


「これはまずい、、、」


 5年前のことが脳裏によぎり、俺はリミルの元に向かう。


「お兄ちゃん!」


 部屋に向かうと、リミルも逃げる準備をしていた。


「リミル!地下室に行くぞ!」


「分かった!」


 この家、というかこの島にはユニムの災害から身を守る為に、各家庭に一つ地下室みたいなシェルターが設置されている。

 俺も避難用の荷物を持ち地下室に行く。家の外では、避難警告やユニムが暴れているであろう爆発音がする。悲鳴や建物が崩れているような音までしている。しかし、外のことなんか構っていられない。俺とリミルは急いで地下室に向かう。地下室まであと少し。地下室の扉を握ったその時。


『バキッ』


 その音と共に俺たちの身体が空中を舞った。何が起こったのかわからないまま、俺とリミルは地面に叩きつけられる。地面に落ちている破片が肌に刺さり、血が流れている。


「うっ、、、リミル、、、大丈夫か、、、」


 そう問いかけるも、返事は返ってこない。辺りを見ようとするが、何処か骨折しているのだろう、身体が思うように動かない。

 砂埃が舞い散る中、必死にリミルに声をかける。しかし、何度呼びかけてもやはり返事が返ってこない。リミルのことを心配していると「ガサッ」と物音がする。なんとか体を動かし、物音の方を見る。砂埃が晴れ、目の前の光景が目に入った。

 そこには身体全体が黒く、顔の中央に大きな一つ目がある人型ユニムがリミルの首を掴んで浮かせていた。


「リミル!!!」


 掴まれているリミルは体に力が入っていないように見えた。


「お前!!リミルから手を離せ!!」


 リミルを助けるため、傷だらけの体を動かしユニムに殴りかかる。

 しかし、結果は分かりきっていた。

 俺の拳がユニムに触れる寸前でユニムの尻尾がもの凄い速度で脇腹に触れた。その瞬間、まるで横からトラックがぶつかったような感覚が走る。俺は一瞬にして吹き飛ばされて、半壊状態の家の壁にぶつかる。壁は耐え切らずに崩壊し、俺はニ軒ほど隣の家まで吹き飛ばされた。骨折が増えただろう。すでに折れていた骨が臓器に突き刺さる。


「(あぁ、死ぬのか。俺。)」


 無謀な戦いを選んだ自分に後悔する。


「ごめんな、リミル。お前のこと守れなくて、、、。」


 あぁ、短い人生だったな。

 そう思った次の瞬間。

 目の前が急に光った。


「おいおい、随分と暴れてんなお前。元気ええな!」


 男性の声がする。

 目を瞑りかけていた俺は眼前に立っている男を見た。

 顔を挙げると、身体から光を放つ男がいた。その青年を見たユニムは掴んでいたリミルを投げ捨てる。


「うぅ、、」


 リミルは力無い言葉を吐いた。


「リミル!!!」


 リミルの安否を確かめようとした時、後ろから声がした。


「待って。」


 声の方を向くと、パーカーを着て猫耳がついている青年が居た。誰だ。この人達。


「誰ですか、貴方達!ここは危険ですから早く逃げて!」


 その青年たちに警告する。

 すると、猫耳がついている青年が答えた。


「僕は頼音(らいおん)、あっちは(らい)。ハンターだよ。救援が出てたから、来た。」


 頼音と名乗る男は淡々と話す。


「ハンターさん、、ですか。でも。」


 俺の言葉を塞ぐように頼音さんが話す。


「君には鎮痛剤と止血剤、そしてリコポーション、つまり回復剤を打った。もう大丈夫だとは思う。」


 そう思えば身体に痛みがない。いつ打ったの?と疑問が湧くが、ありがとうと返す。


「それより、妹がまずいんです!助けてください!」


 唯一の希望、それに懇願する。


「いいけど、今危険。あいつが倒されてから。」


 俺はユニムの方を見る。あの雷というハンターは勝てるのだろうか。そう思いながら互いに牽制状態の戦いの傍観をした。

 すると彼の身体に走っている電流が目に入る。


「電気、、?」


 そう呟いた俺に頼音さんが説明する。


「雷の能力は『雷神』、電気に関する()()。」


 能力。俺たちがユニムに対抗するための矛。

 俺も能力は持っているが、使い物になっていない。


「久々やな。人型は。ま、イケるっしょ!」


 そう啖呵を切って雷は踏み込む。次の瞬間、稲光が走り、とんでもないスピードでユニムに突っ込む。それにユニムは反応できず、雷が持っている刃物に切り裂かれる。


「キョアアアア!!!」


 声、そう言い難い悲鳴が上がる。しかし、切り裂かれた部分が接着し始めた。


「まさか、傷が治っているのか!?」


 初めて見る光景に驚く。たまに見る動物型ユニムはそんなことは起こらなかった。


「人型、半人型のユニムは大半自己再生できる。あれもそれ。」


 頼音が言う。そんなこと可能なのか。


「なら、どうやって倒すんだ?」


 純粋な疑問を返す。


「ん、倒し方は主に2種類。再生させなくするか、()()()()()()。」


「コア、、?」


 初めて聞く単語が出てきた。


「コア。人間でいう心臓。人間でいう血を作るところ。そこから身体を治す液体が作られている。だから、それを壊したらもう再生しない。」


 なるほど、心臓を刺したら人間は死ぬ様に、ユニムもコアを壊せば再生できなくなって死ぬんだ。

 そんな話をしていると叫び声が聞こえた。


「しゃあ!コア破壊!」


 どうやら雷さんがコアを壊した様だ。


「じゃ、これでバイバイ!」


 そう言った雷は電光石火でユニムに突撃して、ユニムの首を飛ばした。すぐさま振り返り、同じようにユニムの上半身と下半身と切り離した。その瞬間、ユニムは溶けて、蒸発した。


「つ、、強い、、。」


 あまりの強さに驚く。人型のユニムはそこら辺のユニムとは格が違うはずなのに。


「はい、終わり〜。」


 仕事を終えた雷がこちらに寄ってくる。


「おつ。」


 頼音が雷を迎える。

 次に雷さんは俺に気づいた。


「あ、大丈夫だったか?少年。」


 とても気軽に話しかけてきた。


「は、はい、ありがとうございました。」


 深く頭を下げる。この人たちがいなければどうなっていたか、、、。そう考えたが、それよりもリミルが心配だ。


「すいません!妹の方にいかせてもらいます!」


 そしてリミルの元に急いで駆け寄る。投げ捨てられたまま瓦礫の上に横たわっている。もうリミルは身体から力がほとんど抜けていた。


「リミル!おい!」


 リミルの肩を揺らすが、リミルからの反応ない。


「あぁ、、リミル、、、。」


 絶望感が押し寄せてくる。俺は最後まで誰も守れなかった。すると、雷さんが寄ってくる。


「少年、ここら辺に病院ってないの?」


「ありますが、、さっきので壊れてなければですけど。」


「とりあえずは応急処置だ。俺は病院を探す。頼音は手当、頼んだよ!」


 雷は駆け出した。


「これ、かなりまずい。」


 頼音はそう言うと、バックの中から、応急キットを取り出して準備に入る。


「頼音さん、リミルが助かる可能性はありますか、、?」


 そう聞くしかなかった。


「うん。助かる条件はある。けど厳しめ。この子の精神力と、雷が早く帰ってきたら助かる可能性はある。」

「そう、、、ですか。」


 それが助かる条件。でももし間に合わなかったらと思うと涙が出てきた。


「俺の力不足でごめん、、リミル、、、。」


 頼音さんは泣く俺を黙って見守った。


  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 眩い光と頬を伝う感触で目が覚める。


「またあの夢か、、、。」


 何回も見た昔の記憶。忘れさせないようにするためか、記憶に鮮明に残っている。そして毎回嫌なところで夢から覚める。

 夢のその後は雷さんが野戦病院を見つけてくれて治療をしたおかげで何とかリミルは息を吹き返した。しかしユニムから投げ捨てられた衝撃で脊椎を損傷し下半身不髄になってしまい、あれから2年経った今でも病院に入院している。雷さんと頼音さんには感謝しかない。

 そして、スフェーと雪夏は無事だったようだが、同級生や知り合いの人が何人か亡くなった。現在俺は助けられたことがキッカケでハンターになろうと決めて、テオにある2年制のハンター養成所、『ハンターズスクール』に通っている。今日は最後のテスト、ハンターになるための最終試験がある。この日のために一生懸命頑張ってきた。

 そう思いながら時計を見る。


 8時16分。


「え゛。」


 16分はまずい。遅刻する。

 俺は急いで支度をする。こんな大事な日に限って何で遅刻しかけているのだろうか。

 4分で支度を終わらせた俺は家を出る。大丈夫だ、走れば学校まで10分ぐらいで着く。家の鍵を閉めて走り出す。

 人生で最も重要な日に寝坊してしまった、生死が関わる瞬間に人間はこんなにも早く走れるのかと、焦りすぎて逆に自身を客観的に分析する。今の状態で陸上競技に出れば、世界記録は余裕で狙えるだろう。そんなくだらないことも考えていた。


 5分ぐらい走った時に近くから悲鳴が聞こえた。何事かと思い、悲鳴の方に駆け寄る。すると、道端で男性が動物型ユニムに襲われていた。


「誰か助けてくれええ!」


 男性は農作業で使っていたであろう鎌を手に持っていたが、動物型ユニムはそんなものでは怯まない。俺はバックを地面に投げ、動物型ユニムに駆け寄る。


「離れろ!」


 ユニムに飛び蹴りを喰らわせる。するとユニムはこっちに標準を定める。その間に襲われていた男性は逃げることができた。

 俺は能力『創造(クリエイト)』を使い、右手に対ユニム用の剣を生み出す。まだ少し雑な仕上がりだが、戦えないほどではない。

 次の瞬間、ユニムがこちらに向かってくる。動物型ユニムは元の動物によるが基本的に動きが速い。俺はユニムの動きから目を逸らさないように集中する。


「ここだ!」


 直進してくるユニムの動きを想定して剣を振り下ろす。ユニムは機敏な動きで剣を躱すと鋭利な爪で攻撃してくる。それをなんとか剣で防いだ。しかし、動物型が持つ破壊的な力に剣が押される。


「嘘ッ、、!だろッ、、!!!」


 剣が軋み、中心部分から折れてしまう。

 ユニムの勢いは止まらずに、そのまま攻撃してくる。

 剣を折られ、後ろにのけ反っていた俺はその攻撃を防ぐことができなかった。


 反応すらできず、ユニムに殴られた俺は後ろに激しく飛ばされ、民家に突っ込む。幸い民家には人はいなかったが、興奮状態のユニムは容赦なく襲ってくる。

 俺は戦い辛い民家を抜け出すために窓ガラスに向かって走る。ユニムが後ろから追ってきている。

 目の前の窓ガラスに向かって飛び込む。窓は粉々になり外に抜け出せた。

 外に抜け出して畑に向かって走った俺は急いで背後を見る。


 そこにはもうユニムが居た。


「速ッ!?」


 予想外の攻撃を喰らってしまう。

 俺は大きく宙を舞って畑に突っ込む。もう動けなかった。


「(あ、、、。終わった。)」


 ユニムが寄ってくる。死んだのを確かめるように一歩一歩ゆっくりと。

 動物型ユニムは他のユニムとは違い、()()()()()。そうやってどんどんと身体を更新していくのだそうだ。

 そんなことを考えながら、昔のことを思い出す。

 テオを荒らしたあの忌々しいユニムのことを。何も守れなかった自分を。


「今回もダメだったな、、、。」


 大きく口を開けるユニムを見て、そう呟く。

 その時だった。


「こんにちは〜〜」


 誰かの挨拶と共に、俺の上からユニムが居なくなる。身体中が痛いが、周りを見る。

 なんと、そこには片手でユニムを掴んでいる男がいた。


「じゃ、ばいば〜い。」


 そう男はユニムに言うと、手足を暴れさせ、拘束から抜け出そうとするユニムの顔面を握り潰した。

 顔面を潰されたユニムはドロドロの黒い液体になり地面に滴り落ちる。

 あまりに衝撃的な光景に言葉が詰まる。


「あ、君大丈夫?」


 男のあまりの余裕ぶりに唖然とする。


「え、いや、、、。」


 大丈夫ではないが、あんなに簡単に勝負を決められると「苦戦した。」なんて言いにくい。


「大丈夫そうじゃないな、病院行く?」


 男が近寄ってくる。赤い色の髪に、赤い目。特徴的な外見だ。


「立てないなら、連れて行こうか?」


「お、お願いします。」


 恐る恐る返答する。男の眼はなんと言うか機械的で、狙われている感じがして結構怖い。

 俺は男の肩を貸してもらいゆっくりと病院に向かった。

 病院に向かう道中、俺は助けてくれた男から話しかけられる。


「そうだ。君ってもしかしてハンターズスクールの人?」


「はい、そうです、、。」


「よかった〜テオのハンターズスクールの道わかんなかったんだよね〜。助けたお礼としてさ、案内してくれない?」


 男は片手でお願いのポーズを取る。この人は命の恩人だ。こんな簡単なお願いを断れるわけがない。


「いいですよ。スクールに何か用が?」


 今どきのスクールに用があるなら、この人はハンターか。


「用事というか、今日の試験の審査員なんだけど、方向音痴すぎて迷ったんだよね」


 え。今この人なんて言った?試験の審査員、、、?

 顔をもう一度確認する。赤色の髪で、目が機械的な20代の男性、、、。


「も、もしかしてロケットさんですか!?」


 俺は足が止まる。


「おう、正解。やっぱり知名度あるな〜」


 ロケット・ユニヴァース、今の時代知らない人はいないであろう。

 ハンターと言う職業で多くのユニムを討伐してきたもの、またそれ相応の実績を持つ者に贈られる『神狩(かみがり)』の称号を持ち、その中でもTopに君臨している男だ。

 今日の試験は神狩の人が観にくる、と先生が言っていたことを思い出す。まさか、ロケットさんだとは思わなかったが。

 予想外の展開に驚いたが、なんか違和感がある。何かを忘れているような、、、?


「あ!やばい!」


 俺は急いで壊れかけの時計を確認する。

 8時35分。

 俺は膝から崩れ落ちた。

 8時30分から学校が始まる。試験が始まるのは45分からだ。

 しかし、今から向かったところで到着するまで10分はかかる。確実に遅刻だ。


「あ、、あぁ、、、」


 悲しむ俺にロケットさんが声をかけてくれた。


「とりあえず病院行こうか。」


「はい、、。」


 俺は悲しみながらも、ロケットさんの言う通り、病院に向かっていった。

 

 俺はロケットさんの補助を受けながら、病院で診察を受けた。

 医師からは命に別状はないが、骨が数箇所折れているらしい。

 他にも、筋肉を痛めていたりと、思っていた以上に身体はボロボロだった。


「無事でよかった。はいこれ。」


 診断結果から、俺はしばらく安静に、と連絡された。そのため、入院中だ。

 そんな俺に、ロケットさんがジュースを買ってきてくれた。


「ありがとうございます。死ななかっただけ良かったです。」


「そうだな。」


 ロケットさんは笑ってくれた。


「ロケットさん、わざわざありがとうございます。」


 俺は迷惑をかけてしまったロケットさんに謝った。


「良いのいいの。ユニムを殺すのがハンターの役目だから。」


 少し間を空けて、ロケットさんは何かを思いついたように話を続ける。


「そういえば、君ってなんて名前?」


 確かに、まだ伝えていなかったな。


「フラクト。フラクト=マグナイトです。」


「フラクト=マグナイト、、、。フラクト君、改めてよろしく。」


 一瞬の間があったが、ロケットさんと握手をする。ロケットさんの手は異様に冷たく、とても硬かった。手が離れたあと、握手をした感触を手を握って何度も確かめた。


「フラクト君。大変なときだけどちょっといいかい?」


 何だか急に空気が変わった気がした。俺とロケットさんしか居ない、無音の部屋の中で、恐る恐る話を聞く。


「君が受けられなかった、ハンターの試験のことなんだけどね?僕から話を通して、ハンター試験は合格ってことにしておいたよ。」


 一瞬何を言ったのか分からなかった。予想外の話と展開に頭が追いついていない。


「何で?って顔してるね。君が、ハンターとしてユニムと戦い、男性を助けた。結果は惨敗であれ、最終的には人を助けた。自身を顧みずに、他人(ひと)に尽くす。これはハンターとしての心構えとして、当然のこと。君が助けた男性からも、感謝の連絡が来たらしいから、ハンターとして合格だって俺が判断した。」


 ロケットさんは少し微笑みながらも、貫くように俺の目を見て話す。ロケットさんから伝えられた言葉に俺は少し照れる。


「いいんですか?俺学科試験とか受けてないですけど、、。」


「大丈夫。ハンターに必要なのは学力じゃなくて、勇気だから。」


 名言のような言葉をもらい、自信が湧く。実際にユニムに挑んだのは咄嗟に身体が動いたからで、何か考えて行動にしたわけではない。それだけハンターになりたいと思う気持ちが染み付いているんだろう。

 そんなことを考えていると、ロケットさんが名刺のようなものを出す。


「君は試験を経て、正式にハンターになった。今後の道はフラクト君自身で決めることだけど、中央大陸で活動したいなら、是非『メカルク』のハンターに。」


 渡された名刺には『中央大陸、メカルク管理人、ロケット・ユニバース』と書かれていた。


「え、俺みたいなのが中央大陸のハンターになってもいいんですか?」


 中央大陸のハンターは全てのハンターが目標にしている。そんなところに行っていいのか。ましてや、この世界の産業を回しているような巨大都市のハンターになんて。


「最近ハンターの人手が不足しててね。来てくれたらそれなりに待遇するから。」


「それじゃ。俺は帰るね。」


 そう言い残すとロケットさんはこちらに手を振って、病室から帰った。

 手元に残されたロケットと記名された名刺を眺めて、余韻に浸った。



 ロケットさんが帰り、2時間ほど経過して日が暮れ始めた頃、病室前の廊下が騒がしくなった。


「おーーいフラクト!元気してるかー!」


「お邪魔します。」


 ドアが勢いよく開き、病室の中に入ってきたのは制服姿のスフェーと雪夏だった。


「スフェー。ここ病院、声でかい。」


「やっべ。」


 恥ずかしそうに口を塞ぐスフェーに呆れていると、雪夏が話しかけてくる。


「フラクト大丈夫?朝学校に行ったら、フラクト教室にいなかったから心配したんだよ。」


「いやーごめんごめん。動物型ユニムと遭遇してさ、、、。」


 俺は雪夏にありのままの事を話す。

 動物型ユニムと戦った事。惨敗した事。ロケットさんと会った事。

 ハンターになった事。

 雪夏とスフェーは時に笑い、驚きながら話を聞いてくれた。


「すげえじゃん!フラクト!あのロケット・ユニバースさんからスカウトされたって!」


 どんどん声がでかくなっていくスフェーに気になりながらも、話をした。


「私達もね。試験に合格したよ!」


 話の中で、2人の試験結果も聴いた。


「やったな!もうどこに行くとかって決めた?」


「私は黎明に行きたいって言って、スフェーはメカルクに。」


「げ、スフェーお前、メカルクかよ〜。」


「良いじゃん!また一緒にやれるな!」


 そんな話をして、3人で笑い合った。もう少しで離れるから。


 空の色が深い深い紺色になった頃、スフェーと雪夏は家に帰った。

 みんなの試験の結果が出て、それぞれが新しい道に進む時期になり、窓から街の風景を見て、別れの季節を想った。

 


 あれから時が経ち、遂にハンターとして過ごしていくことになった。俺の行き先は、ロケットさんが担当しているメカルクに決まった。ハンターズスクールを卒業し、雪夏は黎明へ。スフェーは俺と一緒にメカルクへ行くことになった。中央大陸に住むことになるため、1人暮らしの準備をして、テオに置いていってしまうリミルに挨拶へ向かった。

 相変わらずリミルは車椅子での生活で、看護師さんのお世話になっている。


「ようやくお兄ちゃんの夢が叶うね!ハンターさんとして頑張って!」


 リミルはそう言って旅立ちを見届けてくれた。定期的にテオに戻ることを約束して、病院を後にした。

 そして俺は港に向かう。

 港には、中央大陸に行く大型船と、スフェー、雪夏が待っていた。


「ごめん。妹のお見舞い行ってきた。」


「いいよ、じゃ船乗ろうか!」


 これから起こる旅に向けて、心が躍る。どんなことがあるんだろう。そう考えるとワクワクが止まらない。

 そんな期待を胸に俺たちは船に乗り込んだ。

 船の中で、ハンターズスクールでの思い出話や、いろんな話をして盛り上がった。

 船のファンが回り出す。

 陸がどんどんと離れていき、海と空のみの景色になっていく。

 まるで俺たちの船出を歓迎してるかのような晴天で、俺らの旅は始まった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

気の向くままに書いていたら、1万文字超えてしまってました。怖いですね。

自分で読んでみても思いましたが、稚拙な文章が多いですね。次回作に期待です。

更新は不定期です。やる気があれば5年以内には出ると思います。


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