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キスしようか?

ティッシュで、涙を竹君は拭く。


(はち)は、ネタバラシしたらどないやった?」


「喉仏で気づいてたって。せやけど、気になってたから気づかんフリしてたって」


「やっぱり、両想いやったんやな。それ知れてよかったわ」


竹君はそう言って笑った。


(きゅう)は、(はち)好きになったんやろ?」


「それが、よーわからへん。」


「ええやん、わからんくても。悲しくなったりするんやったら。関わってみいや」


「兄ちゃんの代用品は、嫌や」


(きゅう)は、(きゅう)やろ?(はち)かて、(きゅう)を若のかわりにはしてへん思うで」


「そんな事ないわ」


「それ、本人に聞いたん?」


「えっ?」


固まった僕の頬を竹君は、つねった。


「人の話、ちゃんと聞かんの(きゅう)の悪いとこやで」


「ごめん」


「それは、俺やなくて(はち)に会って伝えなな。ほな、帰るわ。俺も久々にきざと(めい)に会うねん」


そう言うと竹君は、立ち上がって歩き出す。


僕が、アパートの下まで送ると(はち)が立っていた。


竹君は、横目で(はち)をチラッと見ると「頑張って、話すんやで」と肩をポンポンと叩いて行ってしまった。


竹君が、小さくなったのを見届けて僕は、(はち)に話しかけた。


「何の用?」


「あっ、財布忘れてたから」


「ありがとう」


財布を受け取って、帰ろうとする僕の手を(はち)が掴んできた。


「痛いんやけど」


「ごめん。でも、すぐどっか行くやろ?俺、(きゅう)と話したいねん、アカンかな?」


僕は、首を横にふった。


「ここじゃ、あれやからきて」


僕は、(はち)を家に連れて行く。


「お茶いれるから、手離して」


そう言った僕を(はち)は引き寄せた。


「さっきの人誰なん?お茶二人で飲む仲なん?」


(はち)に関係ないやろ」


逃げようとする僕を(はち)は、さらに強く抱き締めた。


「関係あるよ。俺、(きゅう)が好きやから」


ドクンと胸が鳴る。


「おかしいやろ?今日会って好きなるなんて。どうせ、兄ちゃんのかわりなんやろ?」


「好きになるのに、長さなんか必要ないやろ?それに、最初はそんな流れやったけど。クレープ食べた時から、俺の中で(きゅう)がいっぱいになってたんやで」


そう言われた。


「ごめん。痛くして」


(はち)は、僕から離れた。


「全然ええけど。」


代用品を望んだのは、僕やった。


(はち)に、ドキドキした時に兄のかわりでもいいからって思った。


(きゅう)は、俺が嫌い?」


僕は、首を横にふった。


「俺と付き合うとかは、考えられへんよな?」


「よー、わからへん。ドキドキするけど、これが恋かなんかわからへん。」


「泣かんでや」


(はち)は、僕の涙を手で拭ってくれる。


「とりあえず、あがってや。玄関やし」


「ほんまやな」


僕は、(はち)をベッドに座らせた。


(きゅう)、これ乾いたから」


さっきから、下げていたビニール袋から空色のセーターを差し出してきた。


「着せて」


僕の言葉に、(はち)はサクラ色のセーターをゆっくりと脱がして空色のセーターを着せてくれる。


(きゅう)の事、大事にしたい」


僕は、首を縦にふる。


(きゅう)の気持ちが何かわかるまででええから、付き合ってくれへん?」


「はい」


僕は、(はち)に返事をした。


「キスしてもええかな?」


「ええよ」


僕の言葉に、(はち)の顔は明るくなった。


(はち)は、ゆっくりと唇を重ね合わせて長い長いキスをしてくれた。


そのキスに、胸がドキドキと反応する。


(はち)、僕ね。


きっと、これが恋のそれやって気づいてるんやと思う。


だけど、まだ気づかないフリをしていたい。


いつか、(はち)の中から兄ちゃんがちゃんといなくなった時に気持ちを伝えるから…。


だから、ずっと僕の隣にいてほしい。



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