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借金展開ですか⁉

 ッシャオラ!

 おっさんに話を付けるぞ!

 

 ……という訳でやって来ました冒険者ギルド。

 まだ昼前だが、冒険者ギルドは大量の人で賑わっていた。

 ちょうどいい所に昨日の受付嬢がいたので、声を掛ける。


 「【白銀の龍】のペインさんはいますか?」


 「モロハさんですね、お待ち下さい」


 丁寧に一礼すると、受付嬢はカウンターの奥へと消えていった。

 昨日の今日かも知れないけど、名前覚えられちゃってるよ……

 程なくして戻って来たかと思えば、巨大な水晶玉を両手で抱えている。


 「何ですか、それ?」


 「連絡用水晶です。冒険者証明には文字を転送できるんですよ」


 マジか。

 メールが送れるとか、ハイテクな世の中になったもんだ。

 ただのファンタジーアイテム兼身分証じゃなかったのか。


 「はい、送信しましたよ。ペインさんが来たらモロハさんに連絡しますね」


 あっ、待つのね。

 肝心な所がアナログなのか……

 冒険者証明の意外な機能に驚いていたが、そんなに便利でもないらしい。

 見る限り、使用条件はあの巨大水晶が必須であり、やり取りも一方通行のようだ。

 所詮は緊急連絡用か。

 

 ギルド建物内部には様々な施設があるので待ち時間に困らないのは助かった。

 雰囲気が良さそうなカフェに入り、お茶をすすりながらダラダラと待つ。


 「モロハさん……私、緊張してきました……」


 「頑張れミリア。そうだ、事情だけ先に聞かせて貰ってもいいか?」


 「はい……【聖女(セイント)】のお陰で聖属性の魔法だけは得意なんですが、少し制御が難しくて。時々他の方を巻き込んでしまうこともあって……多分そのことだと思います」


 ふむふむ……原因はフレンドファイアか。

 確かに、団体戦闘では御法度だな。


 あれか?

 大事なパーティーメンバーが怪我したら云々とかの感じか?

 この世界はゲームとは違って死ぬ時は死ぬ。

 冒険者とか戦闘職は常に危険と隣り合わせだし、その辺の安全管理に関しては俺の想像以上にシビアになっているんだろうと思う。


 しかしミリアのように、能力(スキル)で苦悩する事もあるんだな。

 持ってたら無条件で使いこなせる、ボーナスステータスだと思っていた。


 少しだけ、何か重要な事実を忘れている気もするが──まあ気のせいだろう。


 テーブル上に置いていた冒険者証明がブブッと震え、パチパチと二回発光した。


 「連絡、連絡。冒険者ペイン、タダイマタイキチュウ。ギルドニコラレタシ」


 ブツッ……とノイズを残して冒険者証明は沈黙する。

 まさか機械音声を流してくるとは思わなかった。


 「行くぞ、ミリア」


 「よ、よろしくお願いします……」


 ミリアの手を引いてカフェを出る。

 受付カウンターの側でペインは待っていた。

 周りを取り囲むように待機している三人のおっさん達は、【白銀の龍】に所属する他のパーティーメンバーと見受けられる。


 立ち話もなんなので、場所を変えて俺達は向き合った。


 「先日は提案を飲んでいただきありがとうございます」


 「ふん、殊勝なこった。きっちり落とし前着けて貰うからな」


 「ええ、覚悟しています。先ずは話を聞かせて頂けませんか?」


 「あぁ。あれは三ヶ月くらい前だっt──ry」


 それから、ペインの話は一時間続いた。

 いやはや、流石はおっさん達。話の長さは超一流の域に達している。

 関係のない合いの手や話の脱線方向、本人達【白銀の龍】パーティーは楽しそうにしていたが、俺には一欠片も面白いと思えなかった。


 何だって「ミリアが凡ミスを連発させるドジっ娘で戦闘で足を引っ張りまくっていた」という、ただの一文五秒で終わる話を、一時間にも延々と引き伸ばされて聞かされなければならないんだ?

 全く……耳がもげていないか心配になる。


 「──とまあ、そんな事はどうでもいいんだ。実際、嬢ちゃんの回復魔法はスゲーから俺達は助かっていたんだ」


 ……は?

 まだ本題にも入ってなかった?

 しかもどうでもいいって。おいおい、今までの時間返せよ。


 「でだ、知っての通り俺達【白銀の龍】は男四人のパーティーで、古参で数えても上位のパーティーなんだが」


 ……いや知らんけど?

 はよ本題に入れや。


 「一週間前の話だ。俺達は十年ぶりにクエストに失敗した……低ランクのゴブリン討伐でな」


 ほうほう?


 「全ての原因は……そこの嬢ちゃんだ。あろうことか、攻撃したモンスターを回復し始めてな……倒せなかったんだ」


 ……雲行きが怪しくなって来たな。


 「そして一昨日の話だ。ギルドの依頼でペク・マダラと呼ばれる白い大蛇の討伐に行ったんだが……そいつも瀕死に追い込む度に嬢ちゃんが回復を入れてな……逃げられた。二十年積んできた俺達の面目は丸潰れだ」


 白い大蛇……?

 ほうほうふむふむ?

 では、あの日俺が死にかけたのも全てはミリアのせいか?

 ふーん……


 「おい、ミリア」


 「は、はい! モロハさん」


 「今すぐ頭を下げて謝れ」


 「で、でも! 私の意思ではなくて、【聖女(セイント)】の暴走が原因で……」


 「いいから今すぐ謝れっつってんだろーがこの、駄聖女ォォォォォ!!!!」


 俺はミリアの後頭部を掴み、強制的に頭を下げさせた。

 もちろん、俺も頭を下げる。


 「どうも、すみませんっした!!!!」


 「あ、あぁ……分かってくれればいいんだ」


 俺の勢いに圧されてか、ペインもたじたじになっている。

 ここは一気に畳み掛けるべきだろう。


 「完全にミリアが悪いっす! どう始末を付ければ納得してくれますか!」


 「そ、そうだな。一週間分のクエスト報酬……ざっと百万モネで手打ちにしよう」


 「きっちり、耳揃えて持って来ます! えっと、百万っすね! ……ぇ、ヒャクマン?」


 「そうだ、百万だ。迷惑料も入れてな」


 ニヤリと笑うペイン。

 「よろしくな」と言い残し、表情を凍りつかせた俺を残して【白銀の龍】は帰っていった。


 ……ハッ!?

 いやいやいやいや!

 それはないでしょ!


 ええっと、この世界の通貨価値は日本円の百倍相当だから……一億円くらい?

 やっぱりこの世界、ハードモードじゃないか?

明日も更新します

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