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ドーラが専属案内係って!?




 「とりあえず本題と行きましょうか。既に報酬の準備は済んでいます」


 ドーラが呆れたように苦笑しながらギルドの扉を開ける。

 促されるままギルドへ入ると中は相変わらず騒がしく、多くの冒険者で溢れかえっていた。


 「そう言えば、ドーラって朝から待っていたのか?」


 「それは……今聞くことですか?」


 気になっていたから尋ねたら、ドーラはバツが悪そうに視線を逸らせた。

 もしやとは思ったが、この反応は本当に朝からギルドの前で待っていたらしい。仮に白蛇が希少な魔物だと仮定しても、ただの報酬の受け取り程度で真面目そうなドーラが仕事を投げ出すことは無いと思うのだが⋯⋯まさかドーラ、今日は休みなのか?


 「いや、もしかして休日出勤だったら悪いと思って」


 「そういう事でしたか⋯⋯それならご安心下さい。今日はお仕事の日です」


 「ふーん⋯⋯」


 「何と言っても私は【にぃと】さんの専属案内係ですからね!」


 「えぇッ!?」


 「モロハさんが、いつの間にドーラさんと仲良くなっています⋯⋯」


 ミリアが俺の腕から離れて、捨てられた子犬のような涙目を向けてくる。

 そんな目で見られても、俺もどう反応していいかも分からない。ギルドの受付嬢に専属という概念があったこと自体が初耳で、俺も驚いている。


 「さ、そんなことは置いておいて報酬です。昨日は夜通しで解体作業が行われて、今朝きちんとした査定額が出ました。ギルドの手数料を引いた【にぃと】さんの取り分は三万モネです!」


 「えぇッ⋯⋯三万モネ、ですか⁉︎」


 「昨日聞いた額よりも高いな」


 報酬額を聞いたミリアが、驚き過ぎて固まっている。初報酬であれだけ感動していたくらいだから無理もないのだろうが、いきなりスケールのデカイ話を聞いて理解が追いついていないらしい。

 俺自身も驚いていない訳ではないが、急に大金が入って急に消えていく系のハンティングアクションゲームをやっていたせいか、そこまでの驚きはない。この世界でまともに生活した期間がそもそも短いというのもあるが、まともな装備などを買えばすぐに溶けていくだろうと思う。


 「丁度ペク・マダラの肉を高く買い取りたいという方がいたんです。それと、大金を生身で出すわけにはいかないので、報酬金は一旦ギルドが預かっています」


 「じゃあ使いたい分だけ自分で自由に引き出すのか」


 「そうですね。ギルドの二階に銀行があるので、そちらで手続きして下さい」


 どうやらこの世界にも銀行という概念があるらしい。

 資産には種類が分かれていて、冒険者の働いた報酬は冒険者証明を持っていかないと受け取りができず、万一にも他人が不正に取得することは無いそうだ。


 「昨日頼まれていたペク・マダラの肉が、こちらです」


 「ありがとうございます」


 キンキンに冷やされた大きめの皮袋を渡される。

 このギルドは衛生管理にも手が行き届いているらしく、生の肉を冷凍保存する設備も備わっていると言う。

 この世界は危険だと天使のお姉さんに聞いていたが、むしろ安全なのではないかとも思えてくる。


 「じゃあ、これで失礼します」


 「おっと、肝心なことを忘れていました。ミリアさんも含めて、【にぃと】さんにお話があるのです」


 帰ろうとした間際、ドーラに呼び止められた。

 その目は真剣そのもので、何か重大なものが迫っている事が雰囲気だけでも十分伝わってくる。


 「な、何でしょうか⋯⋯」


 「わ、私もですか⋯⋯?」


 「はい、お二人にです。パーティー結成して早々にペク・マダラを討伐したという戦績に、他の冒険者の方々の期待が高まっているのです」


 「それは⋯⋯何というか、複雑な気分ですね」


 「パーティー結成直後にペク・マダラを倒した話と言えば、()()有名な冒険者パーティーの【勇者】と同じですから、まあ話題になるのも当然なんですが」


 「【勇者】と同じ、ですか。モロハさんは凄いですね⋯⋯」


 すごく明るい表情で話すドーラと、対照的に何故か影のある表情のミリア。

 全体的には【にぃと】が好ましい功績を残したという内容らしい。

 しかし何が飛び出すかと身構えたものの、他の冒険者の風評なんてどうでもいい。逆にあまり目立ちたくないと思っていた矢先だから、あまり嬉しいとは思わないというのが本音だ。

 あの白蛇はそんなにすごい魔物だったのか⋯⋯?


 「と、そういう訳なのですが、本題はそんな世間話ではありません」


 「ええと、つまり⋯⋯?」


 「結論から言いますと、【にぃと】さんへの加入申請が山のように殺到しています。なので、それらを確認して欲しいのです」


 「「ええぇぇぇ──────────ッ⁉︎」」


 衝撃の事実に、俺とミリアの驚愕の声がギルド内に響いた。

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