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聖女に助けられた!

 「ああぁあぁぁぁああぁーーーー死ぬぅぅうーーーー!」


 スカイダイビーング!

 奈落の底へ落ちていった俺こと諸破(モロハ)の運命は、上空ウン千メートルからのフリーフォール。

 暗闇続きだった奈落の空間から、まるでウ○コの如く異世界に放り出された。

 いや、本当に。「スポーンッ!」って効果音付きだぞ?

 無駄な所だけ手が凝っている。


 景色を楽しんでいる余裕もなく、風圧に皮膚という皮膚を震わせられながら、俺は流星の如く地表へと突っ込んでいった。


 物凄い速度で地面が迫っている。


 バガンッ!


 恐ろしい音を立てて突っ込んだ俺は、一瞬の内に身体が潰れ……たりはしなかった。

 インパクトの瞬間だけ、無重力状態になったかのように身体がふわりと浮き上がり、不自然に減速したのだ。

 そのままゆっくり丁寧に降ろされた俺は、無事に異世界に降り立ったのであった。


 ……ドサッ。


 「うぅぉぇぇ……気持ち悪ぃ、死ぬェ……」


 無事だったとは言え、事前告知無しのフリーフォールはあり得ない。

 あまりの気持ち悪さに、俺は四つん這いで倒れてしまった。


 キラキラk……PAUSE(ポーズ)


 Now……Loading。しばしお待ちを。


 「ゼー、ゼー、はぁ、絶対に寿命縮んだ」


 こうしちゃいられない。

 天使のお姉さん曰く、ここは危険な世界らしいし開始直後のデッドエンドは避けたい。

 落ち着いた所で辺りを見回してみると、何の変哲もない山の中のように見える。

 俺の落ちてきた場所は、大きく地面が抉れてクレーターが出来上がっていた。


 「地球にあるクレーターも転生者が関わっているかもしれないな」


 一人で納得し、俺は一先ず山の麓を目指して歩きだした。


 そうして歩くこと一時間……二時間……五時間……夜。


 「ォオ……水ゥ……全然着かねぇ……」


 道すがら拾った太めの木の棒に寄りすがり、俺はゾンビのようにヨロヨロと歩いていく。

 知らない世界で不用意に物を口にするのも憚られしかしそのせいで喉はカラカラで、生唾を飲みまくっている。

 見たこともない植物や昆虫などは数多く見つけたものの、動物は一度も見かけなかった。危険なのは魔物や魔王ではなく、魔法戦争とか国際情勢なのだろうか。


 ガサッ……


 奥の茂みが不自然に揺れ動いた。

 この世界の動物との初遭遇かも知れない。

 注意して茂みを見ていると、ガサガサと音を立てながら俺よりも二倍太い白蛇が顔を出した。

 チロチロと舌を出しながら、赤く光る瞳で俺の瞳を射抜いている。


 これはもう助からない。

 開幕デッドエンドのニオイがプンプンしやがる。


 「こ、こんばんわ……ハハハ……」


 大蛇、マジ無理。

 カミサマ、タスケt……


 神に祈ったところで助かる訳もなく。

 俺が石のようにガチガチになって震えていると、白アナコンダ(仮名)は、ガパリと大口を開いて襲ってきた。


 「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!」


 咄嗟の横っ飛びで蛇の口を逃れる。ナイス反射神経。

 というか、あの自称神とかいうおっさん、マジで許さん。


 『シュルルル……』


 「ヒェッ……!」


 一発避けたくらいで諦めてくれるはずがない事は分かっていた。

 再び襲ってくる白い大蛇に向けて声にならない滅茶苦茶な悲鳴を上げ、俺は正体なくがむしゃらに走り出した。


 襲われてはギリギリ回避し、山の斜面を転がり落ちるように逃げ回る。

 既に肺はパンパンで心臓は破れそうなほど激しく鼓動している。鋭い草木や襲われた振動による転倒などで身体中も傷だらけだが、襲い来る白アナコンダの恐怖の前では全く気にならなかった。


 とは言え、限界は来てしまう。


 「ヒィ……ハァ……もう、動けな……ぃ」


 『シュルルルッ……シュルル!』


 月明かりに照らされた、木々が少し開けた広場で、俺の身体は限界を迎え、もつれるように地面に倒れ込んだ。

 白アナコンダは、チャンスとばかりに俺に近づいてくる。

 生温い吐息が頬をふわりと撫でた。


 (ダメだ、死ぬわ……これ)


 二度目の死を覚悟する。


 「絶対断絶空間プロテクション・アブソリュート!」


 ゴウン……!


 突如俺の前に光のシェルターが現れ、白い大蛇が光の壁に思い切り激突した。

 あまりの衝撃の強さに地響きが鳴り響く。


 「大丈夫ですか?」


 透き通った美しい声がして、誰かが俺の元に走り寄ってくる。


 「ああ……助かっ……た?」


 わぁお……可愛い女の子。

 ゆるふわっとウェーブの掛かった金髪に、一目で大きいと分かる胸。目元は優しそうで、おっとりした雰囲気を感じる。

 修道服を身につけていて、この世界の天然のシスターっぽい。


 「ふふ、大丈夫そうですね。今回復魔法を掛けますから、じっとしていて下さい。回復(ヒーリング)


 「おぉぉおぉ……!」


 シスターさんの女神的微笑みが眩し過ぎる……聖女だ!!

 本当にあった! 異世界に行ったら美少女に助けて貰えるイベント!!

 ……はうまっちオプション料金?


 そんな下らない事を考えているうちにも身体中についていた傷が瞬時に癒えていく。

 まるで逆再生映像でも見ているようだ。


 「これでもう大丈夫ですよ!」


 「聖女様だ……!」


 「その名前で呼ばないで下さい……あっ」


 思ったことを口にしただけなんだが、本当に聖女様なのか、この女神は……?

 というより「あっ」って。

 何かあったのか?


 「大変! 蛇さんも頭に傷が……!」


 そう言って白い大蛇を治療する聖女様。


 「んん~ん?」


 これは慈愛……の、心?

 少しだけ、疑問に思った。

明日も更新します

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