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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恋愛SLG「ラブ・フォーチュン」の主人公に憑依した人たちの話

ある日、隣人(アルマ)がもくもくと乳鉢でいろいろな食材?をすり潰してニタニタ笑っているときの心境を答えなさい

作者: 水城

 ラブ・フォーチュンの主人公キャラであるアルマの好きな食べ物はチキンフリカッセである。


 ご存知ない方に説明すると、フリカッセとは玉ねぎをバターで炒めて肉を加え、ワインやブイヨンを加えて最後に生クリームを入れて仕上げる料理である。シンプルながらおいしく作ろうと思うと非常に難しい。アルマはチキンのフリカッセが好きだが、ビーフや魚介でつくる家庭もある。つまり地域や家庭によって揺れ幅が大きい料理である。


 ラブ・フォーチュンはシミュレーションゲームなので、育成方法は色々あるのだが、どのような育成を経ても、ことチキンフリカッセに関してだけは妥協しない。


 そうたとえ貴族様と仲良くなって貴族の屋敷で出されたものでも、あるいは国王の料理人相手でもチキンフリカッセに関しては妥協しない。如何に材料が良くても、味の調和ができていないと心の中で貶すし(=面と向かって文句を言わない理性はある)、他のキャラからの贈り物なら大抵喜ぶアルマがである。


 余談だが、とある動画サイトにはアルマのチキン・フリカッセ論評集なる合計1時間の動画が存在しているので興味があったら見てみるとよい。このゲーム、頭ちぇるってるイベントが多数あるためか、主要イベント以外は基本パートボイスなのだが、何故かチキン・フリカッセの評価だけはフルボイス仕様である。担当した声優さんは、論評集動画のURLリンクをSNSに貼り、「試食でも積み重なれば」と謎の発言を遺している。


 さて、なぜこんな話をするかというと、此度インストールされたアルマの中の人はとある料理の教信者だったからだ。彼女の中の人は、一年間をその料理の完成にだけ捧げたと言ってもいい。この物語は失敗作を生み続けながら、衆人環視の中、とうとう王子様にアレを食べさせることに成功したアルマの物語である。




「アルマ、お前との約束は破棄する! なんだこれは」


 何言ってんだこの男。アナスタシア嬢も何とかいってくださいよ。殿下は36日前の昼下がりに、アナスタシア嬢立ち合いの下、生命に影響を与えない、権力に関わらないことならなんでも聞いてくれるって約束してくださいましたよね。だから卒業記念パーティにて私の作った料理を食べていただく手はずになっていたはずなのですが」


「そ、そうね約束は守るべきだわ。ところでアルマさん、あの料理はあなた味見したのよね?」


 もちろんですよ。アナスタシア嬢のご実家である侯爵家の交易船から仕入れた食材を使っています。ことこれに関しましては他人の感覚は信用できないので、約2週間、排泄以外は部屋にこもりっきりで調合しました。もっとも同居人の訴えにより、2日目以降は別室で作業していましたが。


「ちょ、調合ってあれは薬なの」


 まあ薬っちゃ薬といいますか、とある国では薬代わりに使われているといいますか。別に腹下しに使うとか、その刺激はあるけど安心ですよ。そもそも私が元気じゃないですか。


「確かに。でもあの色はいただけないと思うの。なんか汚いですし」


 最初に見た人は忌避感を覚えると思います。でもおいしんですよ。これは絶対この国の人間にも受けますってチキンカレーではなく、チキンフリカッセカレー風。宗教上の理由以外でノーという人はほぼ皆無。本家本元から、これはこれでOKといわれてしまった魔改造。ああ私は普通にナンとカレーも大好きですが。


「アルマ、目が怖いわ。それなんか怪しい薬でも入ってるんじゃないわよね」


 いえ気分を高揚させる成分は特に。カイエンペッパー系の食材探しは次年度の目標なので。ただウコン、いえターメリックには脳の老化をボケを防止する成分があるとかないとか。今の私がハイなのは単に脳内物質が出ているだけです。ご安心ください。


「安心する要素なんて微塵もないわよ!」


「そのアナスタシア様。本当に見た目はアレなのですが、食べた限りはそのまずくないというかスパイシーでおいしいです。それにそのごにょごにょ」


「そ、それは本当ですか」


 ええ、まあそっち方面の効能もありますね。それに適度に取れば美容にいいと思いますよ。私は美容にはあんまり興味ありませんが。健康にいいとかそういうのは結果論であって、私はただおいしくそれを食べられれば文句を言わないわけです。美容はともかく痩身については若いうちは睡眠と食生活と適度な運動させえすれば充分可能ですから。


「アルマさんは健啖家ですけど、運動もされますからね」


 良いカレーを作るためには心身共に健康でなければ味覚がぶれますから。普通に空腹になった時に食べるカレーが一番ですかよ。まあそれはさておき、アナスタシア様、食べさせてあげてください。


「わ、私?」


 どうせ嫁入りしたらそんなことはできませんよ。一度ぐらい市井の夫婦みたいなことやってみればいいじゃないですか。何ですか殿下。いいじゃないですか、そういう馬鹿できるのも今だけですよ。私だって殿下が卒業したらそれはもう貴人のごとく扱う予定ですし。ですので学生として門を出る前にぜひご賞味を。もし食べないのであれば、来年学生として門をくぐる弟君とお友達になって布教する所存です。ああ、お兄さんがヘタレと教えて、この国の行く末は大丈夫でしょうかと、ちょっとお姉さん風吹かせてせんの……ゲフンゲフン、いじわるしてもいいかもしれませんね」


「俺の大切な弟を洗脳しようとすんな! いいよ! わかったよ! 食べるよ」


 それは重畳。さあアナスタシア様。とある国では夫婦の最初の作業としてやるみたいなので、ぜひぜひ。


「わかりました。私も侯爵家の女、未来の夫となる方に恥をかかせられませぬ」


 いやいや、腹を切る夫と辱めを受けるならと自害する妻みたいな空気を出すのはご遠慮願います。あっこれどうぞ、少しだけ大きいスプーンです。


「……確かにうん、最初は刺激があって危険かと思われたが、意外といけるというか、これは私の好きな味かもしれん、アルマこれはチキンでなければならないのか」


 特に縛りはございません、とある国だとビーフが宗教的にダメらしいので羊を使っていると聞きますが、うちの国そんなに縛りないでしょう。私は好みではありませんが、イカや貝もうまく調理すれば美味とか。


「ふむ、アナスタシア。これは我が国の食文化に加えても良いのではないだろうか」


「そうですわね、アルマさん。後でレシピを買わせて頂けませんか」


 そうですね、王家には献上いたしますが、侯爵家が商売するのであればカレー粉のレシピを教えますので売り上げの一部をこちらに回してください。


「アルマくん、そのカレー粉というのは文字通りこの料理の材料のことかい」


 そうですよ賢者殿、風味は若干落ちますが、嵩張らずに持ち歩けます。どちらかというと貿易とか……


「ああ、成程ね。それ以上は後で話そう。戦略物資だからね」


 さすが賢者と称されるだけあって頭いいなあこの人。さあ諸君刮目せよ。王子が旨いといい、賢者殿に認められたカレーを国内初めて食べた文化人気取りをできるのは今だけだぞ。




 TIPS

 カレー

 自由度の高いラブ・フォーチュンでは、材料を揃え、製作依頼をすることで大抵の料理が作れるが、カレーは非常に困難な料理の一つと言われている。

 カレーは大前提として「カレー粉」が必要である。カレー粉を作るためにはカレー粉の材料である15種のスパイスの内、絶対必要なスパイス5種に加え最低でも3種を加えなければカレー粉の条件を満たさないのだ。そして今作でアルマがチキンフリカッセカレー風と述べたのは、必須である材料である「火の実」を一年目で見つけることができなかったからである。一応ラブフォーチュンにはカレー製作RTAなる謎RTAも存在することを明記しておく。なお走者は3人である。なおこのルールでは「2位ではダメですか」イベントによる、バグキャラ化はなしとされている。

一作目がぶっ飛んでいるだけで、普通に好感度稼げば王太子殿下もアナスタシア嬢も割と普通なんです。最後の最後で化けのアルマの猫の皮がはがれてカレーを司る人類愛が顕現したら人類はもうパニくるしかないのです。


今回初登場は隣人ちゃんと賢者殿ですが


隣人ちゃんはどれだけアルマが奇行に走っても「もうアルマちゃんに悪気はないのはわかっているけど、気を付けてね」と注意するだけで好感度が下がらない…天使かな?


賢者殿は学院の西にある賢者の塔を任されている賢人の1人で、王国には3人の賢者がいますが、彼が最年少です、金にがめついという欠点はありますが、一応賢者なので、報酬次第で大抵の知識判定が必要な問題は解決してしまう超人です。


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