本田剛
「君たちの中から勇者を選抜します。勇者に選ばれた人にはチート能力を授けます。」
「勇者には生き残る力が必要です。しかし皆さんは元の世界で若くして死んでおり、生き残る力に疑問があります。」
「そこで皆さんの中から生き残る力の強い者を選びます。これから生き残りを賭けたゲームをしてもらい、生き残った人を勇者とその従者として異世界に転生させます。勇者となれる者は1人だけですが、勇者には4人の従者がつきます。そのため、5人を選抜します。」
「皆さんが勇者やその従者として相応しいと選抜した者がいたら、右手の階段を上った先にある扉を潜ってください。その者は勇者やその従者として転生します。扉を潜ることができるのは5人です。」
「階段は一人ずつしか上れません。二人以上が乗ると階段は消失します。」
「時間制限を設けます。毎日23:59を過ぎるまでに、部屋から必ず一人以上減らしなさい。減らす方法は2種類です。先ほどの扉を潜るか、左手にある穴に廃棄しなさい。」
「後方にはこれから勇者として召喚される世界について学習できる教材を用意しました。部屋に5台ずつ用意しましたのでよく学習しておいてください。」
この部屋には、俺たち建設課の男子34人、女子4人の全員がいた。この中から勇者を選ぶんだと。とりあえず学習教材とやらを何人かが始めて、俺もそれを眺めていた。
学習教材からはカードが出てきて、カードを現物と交換できた。手に入ったものはみんなに配られたので俺もパンや水で腹を満たすことができた。
勇者を選抜する方法を決められないままタイムリミットの23:59が近付いてきた。このままじゃあ拙いと思い、手近にいた奴を捕まえて穴に放り込んだ。時計の下の数字が1に変わった。どうやらこれで今日は大丈夫らしい。
他の奴らから人殺しだなんだと騒がれたが、俺がやらなかったら全員死んだかもしれないのだ。文句を言われる筋合いはない。俺のお陰で23:59を過ぎても無事でいられるのだ。だが面倒だから全員ぶっ倒すことにした。片っ端から捕まえて殴り倒した。だが全員を相手にするのは無理があった。
柔道部の本田に捕まった。投げ飛ばされた。そして踏まれた。ロープで縛られた。本田は他の奴らも暴れた全員を縛っていった。俺が倒した奴も縛っていった。全員縛ると、悠々と階段を昇っていった。
扉の数字が4から5に変わった。その瞬間、床が消えた。深い闇の中に落された。