II : レヴェナント大穴500m
「『我々の裏世界である地球から、世界の救済者となる15人がユティクに転移された。アスラ王はこの15人に期待している、とコメントしている』」
「15人が転移された...まさか地球から?」
「そのようだ。まあこの15人、昔みたいに派手にやってくれるだろ。アスラの選んだ奴らだし」
「うん」
レヴェナント大穴の地下500mまで来ていた。ユティクは地下に進んでも酸素が不足しづらい構造になっているため、どれだけ地下へ行っても息苦しくならない。
「あれは...!?」
「普通のオヴシディアだ。一気に片付けるぞ」
「分かった...!」
オヴシディアはアクシメアの地下にしか存在しない、機械の体を持った生物。目が赤く光っていて、剣では傷一つ入らない謎の金属でできたボディを持つ。
ヘンリーは炎のハンドキャノンの引き金を引いた。中から熱の篭った弾の震える音がする。やがて銃口が燃え盛り、炎を纏った弾がオヴシディアの体を貫いた。そしてオヴシディアの体は跡形もなく燃えて消え去った。
「たしかオヴシディアってアクシメアにしかいないって聞いたことがある」
「まさか地下文明の正体はオヴシディア...!?」
「まだ分からない。だがオヴシディアが出没するって事は近づいているって解釈できる。慎重に行くぞ」
「記録しておこう...。後で役立つと思う。今出会ったオヴシディアに固有の名前、付けておこう」
エイダはデータキューブという記録媒体を出し、入力を始めた。
「そうだな...。さっきのは多分一番下の階級だ。あのデカいオヴシディアとは違って小さかったからな...。『トア』でいいか?」
「『トア』。宝石の名前?」
「そうだ」
二人は先程出会ったオヴシディアを『トア』と名付け、エイダは体験を覚えている限りの特徴と共に記録した。
宝石の『トア』は、地球で言うアメジストのことである。アクシメアでは、古代から主にアクセサリーに使用したりしている。
「トアは多分ザコだ。もっと大きなやつが待ってるかもしれない。行くぞエイダ」
「...くっ...!」
「どうした?」
「頭が...っ!!」
エイダは倒れた。激しい頭痛を味わった。目の前が真っ暗になって何も見えなくなる。機械の体をした化け物しかいない暗い世界で彼女は倒れた。炎の銃を持った男は必死に彼女に呼びかけた。
気づけば周りには赤い花が咲き誇っている場所にいた。
「どこ...?」
上を見ると黒くて何も見えない空間が広がり、前を見れば緑色の光が上からさしている。訳の分からない現象が起きている。エイダは周りを見渡した。
「やっと起きたようだな」
「誰...?」
エイダは後ろを見る。
「我々が分からないのか?」
「...?」
「友人でもない、家族でもない、知り合いでもない...」
「じゃあ一体...?」
「我々は...」
「...!」
それを聞いてエイダは驚愕した。目の前にいるのは”あれ”だったことに。