I : 錬成のプロローグ
「『アクシメアの地下に、謎の文明の建造物が発見された。我々の恐れている魔王を遥かに超える力を持った文明推測される』。どう思う?エイダ」
「私はその地下文明の謎に迫らなければならないと思っている...!だけど...」
「だけど?」
「私はそれを超える武器が作れるとは思えない...」
「お前ならできる、信じているぞ」
裏の世界のアメリカ、『アクシメア』。とある森林の秘密基地で、男と女が話していた。二人は政府が発見した奇妙な地下文明の謎を解き明かそうとしている。男の名前はヘンリー・アージェント、28歳のアクシメア兵。女のエイダ・メリアン、23歳の武器職人。エイダはこの地下文明を超える兵器を作ろうとしていた。
この基地は2人しかいないが、広かった。周りには鉱山が連なり、地中にも様々な鉱物がある。そのため、兵器を作る上では適している場所だった。
エイダはかつて父親のマロックの元で武器職人になるために兵器の仕組みなどを教わり、何度も作ってきた。マロックの持つ能力を伝授したおかげか、特殊な武器を作ることが出来る。魔法という概念がないアクシメアでは、貴重な力だった。
「俺はお前の作った兵器だけでこの謎に挑みたい。お前も知りたいだろう?このこと」
「そうだけど...。強力な兵器は作れるか...。ギルドにも行ったことの無い私が」
アクシメアではギルドが存在しない。ステータスシステムも、レベルジェムまで全てがない。これはアクシメア唯一であり、戦力を持っているのは政府か、その政府を抜け出したヘンリーのみである。
アクシメア政府の人々のみギルドに行くことが許されている。魔法の概念がないのはこのためだ。政府はあまり人前にも姿を表さず、ただ政府基地の中で永遠と暮らす。このような政策にしたのは、かつてギルドに行った一人の兵が、首都のドルムで破滅的な反逆を企て、多くの国民が命を失ったのがきっかけであった。
「ん〜まあとりあえず一個作ってみろよ。お前の実力は確かだ。俺の目は間違っていない」
「分かった」
エイダは作業台と向き合い、ハンドキャノンを作った。黒く塗られ、マガジンには白いメリアン家の紋章が刻まれている。
「名前は?」
「『イグニス』。普通の中だけど、トリガーを引いた瞬間に発生する熱を利用して弾薬を火で包む。敵に命中させたら燃えるはず」
「イグニスか。じゃ、これ、俺の相棒にさせてもらう」
「喜んで貰えて嬉しい。あとイグニスにはデータチップが入っていて、何の的に有効かとか、データとしてこっちに送られてくるようになってる。沢山使って武器開発の進展にも協力して欲しい」
エイダはデータ化した情報をもとに武器を作る手法を捨てない。この手法はマロックから受け継いだ。
「了解だ。早く強力な武器を作ってアクシメア政府より先に、行ってみたいしな」
「改めてよろしく、ヘンリー」
「よろしく、エイダ」
2人の地下文明の探索が始まった。静寂の森の中で、炎が灯った。
「行こう」
ヘンリーはハンドキャノンの『イグニス』、エイダはスナイパーライフルの『オルフェウス』を手に持って、近くのレヴェナント大穴に向かう。もちろん、「テレポート」など無いので、徒歩だ。