最初の方針は ~蛍斗視点~
ゲームスタート。
初期兵力は、歩兵が二隊、弓兵が一隊のみ。兵種の内訳はランダムだが、最初はどのプレイヤーも三隊を元手に開拓をスタートする。
歩兵は、剣を武器にした軽装の兵種だ。察しの通り、可もなく不可もない・・・というわけでもなく、実は移動力がわずかに高い。マップの探索要員や、遊撃戦力としては非常に扱いやすい。
弓兵は文字通り弓を主力とする、遠隔攻撃ができる兵種だ。歩兵などで壁を作って、後ろから支援射撃をするも良し、拠点の防衛に当たらせ、敵対勢力の撃退に使うのも良し。攻守両面で活躍するユニットといえる。当然打たれ弱いため、機動力の高い騎兵の突撃などには注意が必要となる。
まずは本拠点となる街に弓兵を配置し、防衛に当てる。残りの歩兵は探索要員として、北と北東へと移動を指示する。
次に、内政としてまずは農地の開拓に全力を注ぐように指示する。都市圏内にある平地を選択し、そこを農業地として開拓せよという指示だ。これを行うことで食料の生産量が上がり、それに比例して都市の人口が増える。その都市の人口が増えるほど、都市圏は広がっていく。そして都市圏を広げると、金や鉄を産出する鉱山を都市圏に取り込んで収入を増やす、あるいは平地を取り込んでさらに農地を増やす、もしくは単純にマップ上の視界を広げるといった様々な恩恵を受けることができる。農地の開拓は、多彩な戦略を練るための基礎といえる。
ちなみに、開拓した農地をグレードアップすることで、さらに収穫量を増やすこともできる。最も、グレードを上げるにつれ、必要な人手や金も増えていくため、無計画に行うわけにもいかない。
また、農地を開拓するという行為にはリスクもある。農地にしたマスは、当然ながら砦など他の施設を建てることはできない。また農地が戦場になると、そこで働いていた農民が死亡して人口の損失となる上、畑も修繕しなければ使い物にならなくなる。一度広げた都市圏は、食料生産量が落ちても収縮したりはしないが、当然賄える人口数の上限は下がる。そのため、戦場となりえる場所を農地とするわけにはいかないというわけだ。
つまり、都市圏の中心に農地を配置し、外縁部には戦闘用の施設を建造するというのがセオリーとなる。
そのセオリーに従い、まずは都市圏中心部を優先して農地の開拓を進める。
軍事、内政を終えたら次は研究だ。研究できる内容は様々で、各種兵種の研究や開発、機具や機械を開発して農作物や鉱山資源の取れ高をアップする、海峡を渡るための軍用船の開発、街道の整備による移動効率の上昇、宗教を広めて人心を安定させる、情報管理を強化し、他国からの密偵を抹殺したり、逆に工作員を送りこんだり・・・などなど。
軍事、内政、それ以外と、多種多様な研究方向がある。
その中からピックアップしたのは、防壁の研究と新型農具の開発、それに水兵の開発だ。
防壁の研究は、都市を守るための防壁を建造するための研究だ。最初は木壁の研究からだが、最終的には鉄製の防壁すら作ることが可能となる。文字通りの鉄壁だ。(もちろん建造に当たっては、鉄資源がごっそりと溶けるが)
防壁は、砦などの前線基地を作った場合にも付加することができるため、前線の安定感が大きく変わる。
水兵についてだが、この兵種は、海上戦闘や上陸戦を仕掛けるときにプラスの補正がかかる。
開始位置が九州である以上、本州へ進行するためには海峡移動は必須。それらに力を発揮する水兵については、あらかじめ研究による強化を施したうえで、九州統一までにある程度の数を揃えておきたい。
それぞれに研究力を30パーセントずつ振り分け、残りの10パーセントで弓兵の強化の研究をさせる。こちらは単純な理由で、使い勝手が良くあらゆる場面で戦力して使える兵種のため。特に、火力面の強化を重視しておく。また、火矢が使えるようになれば、敵拠点への攻撃力も馬鹿にできなくなる。
それらの指示を終え、ターン終了のボタンをクリックする。しばらくの待機時間の後、まずは軍事フェイズが始まる。文字通り、軍に関わることを消化するフェイズで、兵の移動や交戦などの処理が、全プレイヤー一斉に行われる。兵士には、攻撃力や防御力、移動力といったお馴染みのパラメータのほかに、このゲームでは即応力という値がある。これが高いものから、フェイズ内で行動を行うという仕組みだ。
つまり、これが高い部隊であれば、敵ユニットの行く先にあらかじめ布陣させての待ち伏せや、不利な状況からの迅速な撤収などが可能になる。
この即応力に関しては、兵種や武装による違いよりも、その隊を率いる指揮官の能力の差が最も影響する。
優秀な指揮官であれば、指示を受けてすぐに行動に移せるというわけだ。
指揮官は、放浪しているユニットを引き入れたり、仕官してきたものを登用したり、あるいは内政で育成したりといった獲得方法がある。できるなら、主戦力となる部隊には、優秀な指揮官を配置しておきたいところだ。
軍事フェイズが終わり、研究&内政フェイズ(略して内政フェイズと呼ばれることが多い)へと移行する。こちらは、行動順などはなく、各々の指示した内容が、それぞれの都市で一斉に消化される。
農地が二つ開拓され、食料生産量が多少増える。これを元手に歩兵部隊を増やし、マップの探索を効率よく行う予定だ。
脇に置いてある炭酸飲料を一口呷り、俺は次の指示を出すべくインターフェイスを開いていった。