プロローグ&登場人物紹介
その日、俺こと”氷月 蛍斗”は帰りを急いでいた。
日本時間、午後21時10分。本日のアルバイト終了。
午後21時20分。コンビニで兵糧の調達完了。
午後21時40分。自宅到着&自分の部屋へ直行。
パソコンの電源をONに。ゲーミングヘッドセット装着。ログインパスワードを入力、デスクトップ起動。
炭酸飲料を一口。ボイスチャットを起動。並行して、1週間前に発売されたばかりのオンラインゲームを起動。
「お、ようやく来たな」
「待ってたわよ。さあ、始めましょうか」
「自信ねえなあ。お手柔らかに頼むぜ?」
ヘッドホンから、いつもの面子の声がする。皆が、待ちきれずうずうずしているのが、声だけでわかる。
待たせた謝罪の代わりに、第一声を放る。
「よろしい、ならば戦争だっ!!」
モニターに全画面で映るのは、”二ホン統一戦記”と、墨と筆を使ったタッチで描かれただけの簡素なタイトル画面。
熱き戦争の夜が始まった。
二ホン統一戦記とは、戦争に主眼を置いた戦略ゲームだ。
自身の勢力の領土を広げ、内政で物資や資金を蓄え、武器や兵士を生産し、敵対する勢力を潰し、やがて国土を統一するという、よく言えば王道、悪く言えばありがちなゲーム。
舞台は、架空の国二ホン。とはいってもマップの外観は、沖縄と小島や離島がないこと以外は、現実の日本を簡易化したものに近い。(淡路島は存在している)
また、現実での地形は当てにならず、新しいゲームを開始する度にランダムで地形が生成される。長野県が一面平野になったり、逆に東京都が山岳地系オンリーになったりもする。
ただ、プレイヤーの最初の領土周辺に限っては、バランス調整のために補正がかかるようで、平野などの扱いやすい地形が多く生成されるようだ。
では、ここで各プレイヤーの特徴と、初期勢力のスタート地点についてざっくり解説しておく。
氷月 蛍斗
戦略ゲームの類はまあまあ得意。中二病が治りきっていない。敵対する者には容赦しない。戦略は臨機応変。
スタートは、現実の日本で言うと、鹿児島の南端。(南大隅町の辺り)
明石 舞
戦略ゲームの腕前は、身内の中でもトップクラス。内政を重視し、地力で相手を上回った状態から宣戦、圧倒する戦い方を好む。蛍斗と同じく、割と容赦がない。
スタートは、千葉県最南端。(館山市の辺り)
神田 水菜
得意なのは格ゲー。ちまちましたのが苦手なので、戦略ゲーには向いていない性格。戦略としては、初期から軍備を拡張し、周辺の弱小勢力を食らいつくしていくタイプ。
スタートは、北海道の南西。(函館の辺り)
レックス
得意なのはFPS系統。優柔不断で行き当たりばったりのため、戦略ゲーにはやや不向き。とはいえ、バクチ的な手段で劣勢を覆すこともある、ダークホースタイプ。
開始位置は、高知県の南東。(東洋町のあたり)
天海 緋明
通称ヒメちゃん。好きなのはホラーゲームとボードゲーム。メンバー最年少だが、天真爛漫さとシビアさが両立した、奇妙な性格。戦略は情報戦重視。
開始位置は福島県中心部(郡山市の辺り)
星河 蜜柑
大抵のゲームはやりこなす、器用万能ゲーマー。控えめな性格だが、ゲームとなると真摯で本気。戦略は、防衛寄りの臨機応変。
開始位置は島根県北部(出雲市の辺り)
風守 千夏
女性メンバーの中では最も良識人でツッコミ役。可愛い物好きで、プレイするゲームも、ペット飼育や育成系が主。戦略は、防衛重視で善人的。
開始位置は石川県最北端(川浦町の辺り)
風守 春輝
男性メンバーの中では割と良識人で、姉と同じくツッコミ役。得意ゲームはレース系統。戦いは数だよ、兄貴!なスタイルで、安価なユニットの大量生産による物量戦を好む。
開始位置は和歌山県南西(田辺市の辺り)
灯火 百夜
ギャルゲー大好き、3次元の女性もウェルカムな自称肉食系。(リアルでは未だに断食中。おかずは多いが、主食が皆無とは本人の弁)高価なユニットの集中運用による、一点突破の電撃戦を好む。
開始位置は愛知県南部(豊橋市の辺り)
いずれが二ホン統一を果たすのか、戦いの幕は切って落とされた。