二話
おかしいこと、何か不自然なこと…………思えば、最近ほとんど話してなかったな。
最後に話したのは……でも、目覚めなかった前日か。近くに居てもここまで会話ができないとこんな風に感じるのか。本当に、遠い。
あの日のデート、あれが最後のデートになった。
いやだな、何で最後なんて言葉……諦めてるのかな。んなわけ……
やめよう。でも、もう、だったら……あんなのが最後になるのか。
あの日はいつも通り公園で遊んだりしてお腹減らしてから彼女がバイトしてるファミレスで昼食べて、それからちょっとした買い物して……そうだ、あの時は見たい映画も無いくせに映画館行こうなんて言い出したんだよな。
そのせいで変な、というかようわからん道に出てなんだかんだ散策してるうちにラブホ街に出たんだっけ。
そういや迷い込む前に彼女とチーズドック食べたな。話題にはなってたけどあの時初めて食べたんだよな。普通にうまかった。
あの時は結局映画もいかなかったし、これが目的だったりして。ま、その答えは起きてくれるまでわかんないか。
そんな話することに特に意味はないんだろうけど、今はどんな話でもいい……そういや彼女がこのまま起きてくれないのなら結局ああいう場所に入ることは無いんだろうな。まあ、ラブホである必要はないけどな。
そうだ、そういえばラブホの前に出た時変なこと言ってたな。
……確か――『私と最初にセックスしたのっていつだったっけ?』だっけ?
まあそんなところだったか? にしても言葉まで直線で直球すぎるだろからかいやがって。
僕は未だに童貞だぞ。そんな事分かってるくせに。
好きになりすぎてそんな事しようなんて思えないんだよな。大切で大切で仕方なくて自分で触るのも……なんて、こんなん彼女に不安感持たせてただけなんじゃねーか……なんで……なんで近くにいるってのに動いてくれないんだよ。
『浮気したら許せないよ』
なんでそんな言葉が最後の言葉なんだよ。もっとあるだろ。浮気なんてする訳ないんだよ。できるわけないんだよ。もっと違う声を言葉を聞かせてくれよ。
……なんだよ、死んでもいないのにまるで死んだみたいに言うなよ、僕。
起こすことはできなくても、原因くらいは見つけてやるから。
――ドアが開く。出てきたのは彼女の母親だった。
「ごめんなさいね。あの子もあなたと一緒に居たいだろうに邪魔しちゃって」
「そんな事ないですよ。家族の時間も大切なです」
「そうなのかしらね……私は帰らないと。後はお願いね」
「はい……あ、あの、少し伺いたいことがあるんですが目が覚めなくなる前日に何の用事があったんですか?」
それは最後の言葉の直後の事だった。彼女は最後の最後に用事を思い出してそそくさと帰ってしまったのだ。
何かがあるとすればその時の可能性が高い。