「いらっしゃいませ!お客様。あ。オススメの商品があります!これなんていかがでしょう?」
初めて短編小説書きました。思い付くがままに書きました。この小説をきっかけにもっと
自分の小説を読んでくれる人が増えるとうれしいです。
暗い夜の町。ある一軒の店があった。
俺は高校に通っているが、今日は部活で夜遅くまで活動していた。何の店かわからない訳ではない。その店の看板には[お疲れの体に良く効く品。揃えています。]と丁寧にかかれていた。
「ちょうどいいな。部活で疲れ溜まってるし、入ってみるか。」
そうして俺は店の扉を開ける。カランカランと音がなり、目の前にカウンターがある。そこに、一人の少女が立っていた。可愛らしいワンピースで店員とは言えない格好をしていた。そして、彼女は一言。
「いらっしゃいませ!お客様。あ。オススメの商品があります!ゴキブリ入りコーヒーなどどうでしょう?」
「... は?」
その後、数十秒沈黙が続いた。
「えっと、お客様?ご注文は...?」
「...え?あ、注文?あー...普通のコーヒーをお願い。」
「かしこまりました!コーヒーですね!」
「えっと、ちょっと質問が...君、さっきゴキブリとか言ってなかった?」
「言ってない♪」
満面の笑みでそういう。おい。お客様への敬語はどうした?ってか、これはゴキブリと言ったな...
これ以上問い詰めても同じ事しか返されないような気がしたからやめよう...
「あー、取り合えずコーヒーお願いします。」
「少々お待ちください。」
その後、コーヒーがきた。うん。コーヒー。これは...コーヒー?なんかちょっとドロッとしているような...「店員さ~ん、ちょっと小さいスプーンとかある?」
「はい。スプーンですね。はいどうぞ。」
少女は小走りでスプーンを取りに行き、俺に渡す。そして、俺はスプーンでコーヒー(?)を混ぜる。
なんだこれ?絵の具?これ、もしかして水に絵の具を入れてコーヒーを再現してるのか?
水に絵の具を入れただけにしては、凄く上手く再現できている。
「なぁ、これ絵の具か?」
瞬間、少女は体をビクッと震わせる。
図星か...!
仕方ない。飲まずに帰るか...
「俺、そろそろ帰るよ。営業頑張って。」
そう一言残し、帰ろうとすると、
「お客様♪お·か·い·け·い♪」
少女は上半身を前屈みにし唇に人差し指を当て、色っぽくしようとしながら言う。
その幼い顔つきと体は中学生だろう。だからあまり色気は感じない。
「え?あれにお金払うの...?」
「お客様♪お金を払わないなら警察呼びますよ?(笑)」
「全く違う商品+異物混入ということでこの店通報しようか?」
少女は肩をビクッと上げ、慌てるように言う。
「あぁ!すいませんでした。お金はいらないのでそれだけは...」
ため息をつき、俺は言う。
「わかったよ。じゃあ、お疲れ...」
そうして俺は帰路を辿る。
変な喫茶店らしき店に行った後日、俺は昨日と同じように部活をして帰路を辿っていた。隣には友人もいたため、俺はあの店について聞いた。そして、友人の返事を聞き、俺は驚きを隠せなかった。
「あー。あの店か。あの店はスゲーふざけてる店でよ。なんでも、まともな商品を出したことはないらしいぜ。毎回変なこと言うんだよ。例えば... 何を買いに来たのですか?花ですか?なら、この美しいタンポポはどうですか?綺麗ですよ~?
とか言ったりするらしいんだよ。さらに、結構な金額で金取るし。だから、客がキレて店員にふざける行動を止めさせるために暴行に出たらしいんだが、逃げ足も速くて、仕返しは出来ないんだよ。常に客との距離をとっていつでも逃げれるようにしてるんだとさ。っと。もう着いたな。じゃあまたな。」
なんだそれ...そもそも店って呼べるのかよ...。
と、俺は帰路を辿る途中。もう一度店の前を通った。そうすると、みたことのある少女が歩いていた。
「なぁ。もしかして君...」
話しかけようとした途端、店から一人の男性が出てきた。その男は顔が凄く赤く、動きもフラフラだった。
「遅いじゃね~か。さっさと酒を出せよ~...」
「あ。はい。少し待って下さい....お父さん。」
少女は買い物に行っていたのだろうか。買い物袋から酒瓶を取り出す。その刹那...
バシン!!と鈍い音がした。そこを見ると少女が父であろう男から頬を叩かれていた。
「ったく....遅いんだよ!ってか、酒が足りねぇんだ。さっさと金貯めろよ。」
「でも、お父さん...商品が無いから....」
少女が涙を流し始めた。流石に見ていられず、俺は二人目掛けて歩き出す。
「ああ!?んなもんテメェの体でも何でも売れば...」 バシィ!
男がぶつぶつ言いながら少女を殴ろうとした拳を俺は受け止めた。正直めっさ痛い。
「悪いんですが、数分前から話を聞いてましたがあなた。お金がなくて娘に働かせ、仕舞いには娘が稼いだお金を全てお酒に注ぎ込ませているんですか?」
「ああ!?んなことテメェに関係ねぇだろ!」
「関係ない....確かにそうですね。ですが、娘とはいえ暴力はいけません。さらに言うと、これは教育ではなくただのあなたの自己満足のための行動ですよね?これ以上は警察の相手が必要になりますが...?」
男は黙りこむ。そして、舌打ちをし、家の方へと歩いていった。
少女と公園のベンチに座りある程度事情を聞いた。まとめると、彼女の家庭は、母親が亡くなってから父親が働かなくなり、娘にあのような行動に出たこと。
店については、普通の商売よりあのふざけた商売のほうが購入者がいるらしい。なぜかは知らん。
「あの....ありがとうございます。その...凄くかっこよかったです。」
「あのさ、よかったら家で働かない?あと、家で一緒に暮らさない?」
「...え?それって、」
「ほら、家も喫茶店やっててさ。あと家で暮らせば親の暴行もないし。」
頭を掻きながら、少し照れるように言う。
少女は顔を紅潮させ、下を向きながら言う。
「あ、ありがとうございます。でも、父の面倒をみないといけないので。ですので、出来れば商品を分けていただけませんか?そうすると、私も少しはまともな商売ができるので。...あと、同居の件ですが、流石に無理だと思うのでまず...お、お付き合いから...お願いします....」
幼さの残る顔だったので、照れた顔も可愛かった。好きになると、その人の全てが可愛いと思える理由が良くわかった。
そうして、俺たちは恋人となった。
あれから一週間後、彼女の店は順調に有名な店へとなった。
そして俺は彼女のいる店へと足を踏み出す。そうして、店員である彼女は客である俺に言う
「いらっしゃいませ!お客様。オススメの商品があります。こちらの、おいしいおいしいコーヒーです!」
彼女は満面の笑みで幸せそうに働いていく。明るい未来を迎えるために。