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崩壊世界の異能者 ~気づいたら世界が生まれ変わっていました~  作者: 佐藤龍
第一の遺跡 目覚める怨念達≪ゾンビ≫
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第五話 大切な物を見つけたシスコンは変貌する

 時間にして昼の頃、五人はフリッサに辿り着いた。

 フリッサという町は壁に囲まれ、町の北部は少し小高い丘になっている。

 入ろうとすると門番らしき兵士がおり、長蛇の列が出来上がっていた。

 

「大丈夫なのか?」


 初めて来たユウを入れるには警戒されるだろうし、かなりのチェックが入る筈だ。

 そのこともあってユウは心配すると、御者台にいるユズハが答えた。

 

「ああ、大丈夫だ。安心するといい」


 ユズハが自信満々に言うと、馬車は列から外れて隣を進んだ。

 列の隣にも短い列ができていたが、時間が経たずに町の中に入ってせいで列は短い。

 ユズハ達の馬車が短い列に並ぶと、すぐに自分達の番になる。

 

「アンタたちか、入っていいぞ」


「ありがとう」


 すんなりと入れてもらい、町の中に入ることができた。

 普通ならば、簡単に町へ入ることはできないだろう。

 入ることが出来たのは、彼女達の信頼があってこそのことだ。

 正確には違うが。

 

「信頼されてるんだな」


「それは僕たちの信頼じゃなくて、師匠が信頼されているおかげだ」


「師匠、ね」


 ユウの頭に、その言葉が異様に引っかかっていた。

 

 

 

 

 

 馬車はフリッサの中央のとある建物の前で止まった。

 そこは探求者達が集まる施設、ギルドと呼ばれている。

 

「ユウはどうする? ギルドに行く?」


「いや、いい」


 ギルドに興味などないユウは、首を横に振る。

 今やりたい事は身体を休める事。

 そして、一早く大事なアレを取りに帰る事だ。

 

「そう、ならフィー。ごめんけど、送って行ってくれない?」


「え! 私ですか?」


 エンリに頼まれたフィーは嫌そうな顔をするが、しょうがないという顔に変わる。

 

「分かりました。なら、私は先に行ってきますね」


「ええ、お願い」


 フィーとユウの二人は馬車から出て、町の中に進む。

 エンリ達三人はギルドの脇にある馬車を停めるスペースに入れ、ギルドに向かった。

 

 

 

 

 

 ユウとフィーの二人は町を歩く。

 方角は西。

 周りには露店が並び、食材や珍しい物、食事など色々を売っている。

 それらを物珍しそうに見ながら歩くユウだが、フィーは違った。

 

 ユウよりも先を歩くフィーは、どこか怯えたように歩いている。

 彼女はユウが怖いのだ。

 他にはない独特の尖った刃物のような雰囲気に加え、理由は分からないが、本能があれを恐怖している。

 

 あれに近付いてはならない。

 殺される、と。

 

 故にフィーはユウに対して怯え、それは後ろで歩いていたユウも理解していた。

 

「そんなに俺が怖いか?」


 突然話を振られ、フィーはひぅ! と素っ頓狂な声を上げて立ち止まり、ゆっくりと振り返る。

 フィーが立ち止まったのと同時に、ユウも足を止めた。

 

「こ、怖くはないですよぅ?」

 

 恐怖からか声が上がっていて、誰がどう見ても怖いと分からせるようなものだ。

 

「そうか。ならいい」


 ユウはその事を指摘せず、再び歩きだす。

 フィーの隣りに並ぶと、

 

「俺はお前を殺したり食ったりする訳じゃない。慣れていけ」


 短い付き合いでも、これだけ怖がられればフィーも疲れるはずだ。

 それを知って、ユウはフィーに教えた。

 ユウも一度、経験したことがある。

 初めて人体実験され、痛みと恐怖で眠れず疲労が積み重ねってきた。

 その後は誰だって想像できる。

 ぶっ倒れた。

 

 ユウの優しい言葉にフィーは呆然とした様子で先を歩く彼の後ろ姿を見て、先を歩いていたユウは振り返る。

 

「早く来い。俺はどこに行くか知らないんだ」


「は、はい!」


 慌ててフィーは小走りする。

 ユウと短い会話の中で、薄っすらとだがフィーは心にゆとりを取り戻しつつあった。

 

 

 

 

 

 西の外れにやってきた。

 

「ここです」


 目の前にある家は二階建ての普通の民家で、周りも民家ばかりだ。

 

「入っていいのか?」


「どうぞ。あまり大きくないですが」


 フィーが先に入り、その後にユウは家に上がる。

 中は普通で、入ってすぐに二階に上がる階段があり、偏見で玄関がないと思っていると存在し、フィーが靴を脱いでいた。

 

「靴は脱いでくださいね。遺跡の中で変な物を踏んづけてる恐れがありますから」


 フィーが玄関で靴を脱いで、右にある靴箱からスリッパを二足取り出す。

 スリッパの色は茶色とピンクの二色で、茶色の方はカーペットの床に置き、もう片方のピンクはフィー自身が履く。

 

 ユウは言われた通りに靴を脱いでスリッパを履き、フィーのあとを追う。

 玄関から右に扉があり、左はリビングがあるが、フィーは二階に上っていく。

 

 二階に上がれば、左に扉が、右には複数の部屋がある。

 

「そういえばだが、ここは誰の家だ?」


 ここまでついて来て、ユウは今いる家に誰が住んでいるのか全く知らない。

 エンリやフィーの口からは誰の家に向かうの何一つ言っていないが、なんとなくは察することができた。

 

「ここは師匠の家ですよ。師匠は凄いんです。魔法も一杯使えますし、武器を使っても一流なんです」


「魔法ね」


 ユウだって昔はゲームをしたことがある。

 そのため魔法という言葉は理解しているが、間近で見たことはない。

 そのため、どういったものか興味がある。


 魔法に対して異能がどれほど通用するのか、試してみたい。

 戦ってみたい

 

 研究所で繰り広げた殺し合いしか楽しみがなく、故に戦うことだけが楽しみのユウには興味があった。

 

「そうか、その師匠がここにいるのか」


「はい」


 子供のような無邪気な笑顔で嬉しそうに言うフィーを見ながら、ユウは思う。

 もし試せるのなら、戦ってみたいと。

 フィーが扉を二度ノックし、声を掛ける。

 

「師匠。いますかー?」


「ああ、いるぞ」


 中から聞こえたのは、少女の声だ。

 そして、どこか聞き覚えのある声だった。

 喉まで出て来ているのだが、どこで聞いたのか思いだせない。

 

「入りますよー」


 なんとか思いだそうとしているユウに気づかず、フィーは扉を開けた。

 思いだそうとしていたユウは、ほんの一瞬だけ、部屋の中にいる少女を見てしまう。

 

 部屋は応接間のようで、部屋の中央に椅子が机あり、奥に大きな机で師匠は作業をしていた。

 それは明らかな少女だ。

 フィーよりも年上だがエンリ達よりも年下ぐらいで、両側の少しの髪をまとめて垂らした、長い銀髪が似合っていた。

 

 可愛らしい顔付きだが、彼女達から師匠と言われるだけあって、落ちていた様で芯がある。

 名前はワンと言い、服装は少女が似合うようなゴスロリのドレスを着ていた。


 ワンを見て、ユウは呆然と立ち尽くす。

 目を見開き、驚いているようだ。

 来客に気づいたワンが驚くユウを見てフィーに尋ねる。

 

「フィーよ。この小僧は何者じゃ? 驚いているようじゃが」

 

「この人は──」


「アス、カ」


 フィーが口を喋り切るよりも先に、ユウが口を開く。

 どこか聞き覚えるのある声? それもそのはずだ。

 目の前にワンの風貌は、ユウの妹、不治の病にかかったアスカに瓜二つで、声も全く一緒ときた。

 

 それゆえに、ユウは死んだと思っていた妹が生存していたこと知って泣き出そうとしたのを堪え、走って飛び込む。

 

「アスカー!!」


 傍から見れば、ユウが少女に抱き着こうとする変態だ。

 このままではワンが危ないが、

 

「ふん!」

 

「ぐえっ」


 少女とは思えない力で抱き着こうとしたユウを掴み、飛んだ力を利用して身体を回転させて、右の壁に投げた。

 背中から壁にぶつかったユウは、ズルズルと床に落ちていく。

 

 皆はまだ知らない。

 ユウが重の付くシスコンだということを。

ここから徐々にユウが変わります(本性を現し始めます)


次回から遺跡に向けての準備フェイズに入ります。この作品は、遺跡にすぎGOする訳ではなく、準備することを大切にするため、時間がかかります。


次回のお話はその準備フェイズの前、信用を得る所から

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