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崩壊世界の異能者 ~気づいたら世界が生まれ変わっていました~  作者: 佐藤龍
第一の遺跡 目覚める怨念達≪ゾンビ≫
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十四話 遺跡への侵攻

「貴様!」

 

 テンペストに睨まれ、ユウは全く理解できなかった。

 会ったのは初めてだ。

 昔の因縁なんてもの、全くない。

 だからこそ、睨まれることに理解できなかった。

 

 ギルドマスターがテンペストを紹介したためか、ギルドに出ようとしていた探求者達はユウとテンペストをジロジロと見ながら、ギルドに出て行く。

 

 どうしよう、これ。どう対応しよう。

 

 初めてあった人間に睨まれてユウは悩んでいると、テンペストが喋り始める。

 

「貴様は我と同じ神の代理人か?」


「え?」


 誰か、通訳してくれないか?


 テンペストの言葉が理解できずにユウはもう一度問いかけるに聞くと、テンペストの代わりに後ろにいた通訳者が答える。

 

「貴方は私と同じ仲間ですか? と聞いているんですよ」


「仲間?」


 どこら辺が?

 

 テンペストが言う仲間に対して、ユウが理解できないでいると通訳者が右手をトントンと触れる。

 自分の右手に目を向けると、そこにあるのは包帯に包まれた右手があった。

 

 ああ、なるほど。俺が中二病と思われているのか。

 

 考えてみれば、両手に包帯を巻いたユウは確かに中二病だ。中二病に見える。

 

「違う。俺はお前の仲間じゃない」


 ユウが首を横に振って否定すると、テンペストは俯いてしょんぼりとした顔になる。

 

「そうか。すまぬ」

 

 仲間ではないと言われ、テンペストはとぼとぼと去っていく。

 

「意外。てっきり、ユウは神聖シャズヴェリアの生粋の信徒だと思ってたのに」


 エンリの方を向くと、彼女は驚いたような顔をして言う。

 

 神聖シャズヴェリアは中二病と一緒の意味か? そういえば、テンペストは神聖シャズヴェリアから来たと言っていたな。

 

 ユウは思考しながら否定する。

 

「違うさ。それで、神聖シャズヴェリアとはなんだ? 国なんだろう?」


「神聖シャズヴェリアが国というのは合ってるわ。あそこの教会には遺跡から発掘された聖典があって、読んだ人達が感銘を受けてテンペストみたいな恰好になるというのは良く言われているわ」

 

 それって、中二病ということじゃ……そうなると、聖典は黒歴史の詰まったノートなのか。

 

 神聖シャズヴェリアにある聖典に、ユウは見たくないと確信した。

 

 

 

 

 

 馬車はとことこと動いて行く。

 五十二名の探求者を乗せた馬車は一列になって、ゆっくりと遺跡に向かって進む。

 ギルドが用意した馬車の数は二十台と多く用意されており、一パーティーに一台の馬車が乗ることが出来るように用意されている。

 

 一パーティーで一台の馬車を使うにはかなりの余裕のスペースがあり、そこにはかなりの食料と乾いた木の枝が大量に積まれていた。

 又、ギルドマスターが乗る馬車には医療品が多く積まれている。

 

 長期戦覚悟ということだろう。

 知っている情報はゾンビということだけあって、建物の中は待ったく知らない。

 それ故に、大量に持って行っている。

 

 ユウの乗る馬車にはエンリ達四人とワンが乗り、御者はユズハが務め、他の五名は馬車の中で雑談をしていた。

 


 

 

 

「そうえいば、他の町から探求者は来ないの? こんなに危険なんだし」


 フリッサから遺跡まで約六時間ほどでつくほどに近い。

 それ故に、フリッサが探求者を募集して向かっているが、ギルドマスターが他の町に応援をするはずだ。

 流石に、これを自分の町だけでしようとすれば全滅する可能性の方が高い。


「うちのギルドマスターが頼んでいない訳だろう」


 ワンが何故か自信満々に言う。


「そうなのか? で、返答は?」


「可及的速やかに向かう、出来るだけ早く行く、だそうだ」


 うわぁ……。

 

 ワンの言葉を聞き、その言葉の意味を理解できてしまったユウは顔を引き攣らせた。

 向かうとは言っているが、それが何時かは明記していない。

 本当に助けに来てくれるのか分からず、ユウが他のギルドに落胆しているとエンリの顔が晴れやかになる。

 

「助けは来てくれるのね」


 上がるエンリの言葉に、ユウは助けに来てくれる事を信じていることに気づいた。

 そのことを知り、ユウは親切心で教えてあげた。

 

「そうだね、助けには来てくれるね。何時かは」


「どういうこと?」


「助けに来るとは言っているが、いつ来るかは行っていない」


「確かに……」


 ユウから教えてもらい、エンリは恐ろしいというような顔をした。

 相手からすれば、嘘は付いていないのだ。

 

「こんな危険な時に、どうして助けに来ないの……」


「死んで減らしたくないからじゃろう」


 信じられないという顔をするエンリに、ワンが教える。

 

「村や町の探求者が減れば、それだけ町の収入源がなくなるということじゃ。それに、遺跡からゾンビが出てきた場合は守る人間がいなくなるということも理由じゃろうな」


「それだけのために……」


 自分の町から死人を出さないがために、助けに来ないことにエンリはまだ信じきれていなかった。

 

「それだけ、ということじゃがこれでも十分な理由じゃぞ。他人の事を気にしている暇がないんじゃろう。既に、あの遺跡では約四十名の探求者が死んでいる。それだけの被害を出して尚、遺跡に助けを出す余力はないんじゃろう」


「なら、もし私達が失敗したなら……」


「その場合は国にでも救援を求むんじゃろう。それで助かると信じておる」

 

「安易だな。考えが」


 ユウはワンの言う他の町のギルドのトップの思考を聞き、馬鹿にするように言う。

 攻略班が死ねば国に救援を求め、助けに来るまでどれほどの時間がかかる?

 それまでに、遺跡にいるゾンビは何をしている?

 

 予測できる未来は、救援が来る前に滅びる姿しかない。

 それが分からずに、救援が来ないのは馬鹿だ。

 来ないのならそれでいい。来なければ、それ相応の追及が待っているのだから。

 

「他の町の探求者達は、私達が死ぬと考えているということ?」


 今まで黙って聞いていたリリーが口を開く。

 

「そういうことになるのう」


「なら、絶対に成功させたいですね!」


 フィーが明るく言うと、それだけで今までどんよりとしていた空気が軽くなったように感じる。

 

「ええ、そうね! 成功させましょう」


 救援に来ないからこそ成功して見返してやる、とエンリは逆にやる気を漲らしていた。

 どんよりとした空気が続かなくてよかったと、ユウとワンはホッと一安心した。

 

 

 

 


 遺跡の前に辿り着いて馬車から探求者達が出て行くと、ギルドの関係者も一緒に出て来てテントを張る。

 テントは二種類があり、一つは雨風が凌げる物と壁がないものだ。

 後者のテントには横に長い机を設置し、その上に配る予定の聖水の通信機器を並べると探求者達が列になって並ぶ。

 

 その光景をユウは外から見ていると、話しかけられた。

 

「君がワンの言う頼もしい助っ人かな~?」


 振り向くと、そこにいるはギルドマスターがいた。

 しかし、ユウは名前を知らないためただの偉い人という印象しかない。

 

「あんたは……」


「私はギルドマスターだよ、偉い人! それで、貴方はワンの言う助っ人さん?」


「助っ人かどうかは知らん。だが、ワンからは色々とやってくれたらしい」


「そうか、助っ人さんか~。いや~このご時世、犬でも猫でも手を借りたいほど忙しいからね、よろしく頼むよ~」


 パタパタと手を振り、ギルドマスターは列ができているテントに向かって行く。

 その後ろ姿を見たユウは、不思議な人だ、という印象しかなかった。






 ギルドから渡された通信機は、片耳のヘッドホンとマイクの一体型の物だ。

 ヘッドホンから聞こえるのは、リーダーのワンとギルドマスターのみ。

 これは同時に喋って相手が混乱するのを防ぐためだ。

 

 又、ワンには全員の声が聞こえるため、情報を整理して全員に知らせる役割も存在する。

 

 ユウは左耳に嵌めると、ワンの声が聞こえた。

 

「テスト。皆の者、聞こえるか」


 左耳から聞こえるワンの声に、ユウは頷く。

 同じように、頷く者や答える者がいる。

 ワンの周りにいるのは十五名の探求者とユウ。

 彼らが、今回のワン率いる一つの班だ。

 

 少し離れた場所に、グルットとテンペストの残り二つの班が存在する。

 ユウは買ったバッグを下し、中身を再度確認を行う。

 一度入れば出るのに班全員に迷惑をかけるため、そういったことが起きないように確認をする。

 

 ユウのバックに入っているのは食料のみ。

 硬いパンと干した肉と保存食で味はそれほど期待できるものではない、とエンリ達は言っていた。

 

 少し楽しみだな。

 

 食べた事ないものに、ユウはほんの少し期待を巡らせる。

 もし不味ければ、次は美味しく食べれるように自分で作ればいい。

 そう考えていると、通信機からギルドマスターの声が聞こえた。

 

「はい、みんな聞いてー。外には一応怪我人用のテントがあるから怪我したら来てねー」


 遺跡を攻略する時、怪我人を介護するほどの余裕はない。

 そんな足手纏いは不要であり、遺跡に残せばそれだけ安否の確認に思考の何割かが埋め尽くされる。

 それだけ攻略に集中できていない、ということであり、魔物に後れを取るかもしれない。

 

 それを防ぐために、外にギルドが作ったテントがある。

 怪我人用のテントとは別の屋根のあるテントの机に、重々しい機械が置いてあった。

 この時代にはないような機械で、ユウは知らないがそれは通信機を使うために必要な物だ。

 

 ギルドマスターがマイクを持って喋り出すと、左耳からギルドマスターの声が聞こえる。

 

「さてさて、今回の攻略の達成目標をもう一度説明するよー。今回の目的はゾンビを産む原因の調査、出来るのなら破壊、撃滅。ゾンビが生まれないようにすればいいから、頑張ってー」


 トップから発せられる気が引き締まるような緊張感は一切なく、それ所かトップとすら思えない。

 しかし、それだけ気が楽になるというものだ。

 

「了解」

 

「やってやるよー!!」


「よっしゃー!!」


 周りから探求者達の戦意を引き上げる声が発せられ、騒音のようだ。

 ヘッドホンからはワンとギルドマスターの声しか聞こえないため、耳は無事なことだけが救いである。

 

 ユウもロケットを取り戻すために右手を力強く握ると、ワが近付いて来る。


「やる気はあるようじゃのう」


「当り前だ。俺は取り戻す、そして、次は守ってみせる」


 ユウは握っていた右手を緩め、ワンの頭に乗せて撫でる。

 ワンはアスカではないことはユウも知っているが、やはり重ねてしまう。

 不治の病を治すために人体実験を受けたユウ。

 

 しかし、救うことはできなかった。

 だから今回は、ワンを救おう。

 次は守ってみせる、とユウは決意する。

 

「儂はお主より強いと思うんじゃがのう……」


 年下に年下扱いされているワンは不貞腐れたような顔をした。

やっと遺跡に行けました。


次回、遺跡に入ります。ゾンビはでてくるのでしょうか

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