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崩壊世界の異能者 ~気づいたら世界が生まれ変わっていました~  作者: 佐藤龍
第一の遺跡 目覚める怨念達≪ゾンビ≫
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第十三話 同じ何かを感じた中二病

 今日は待ちに待った遺跡の攻略。

 ようやく、ようやくあのロケットを取り戻すことができるのだ。

 ロケットに入っているアレを思い出すだけで、力が湧いて来る。

 起きたユウは顔を洗って服を着替えて整え、机の上に置いてある包帯をキツく縛り上げた。

 

 この包帯は大事だ。

 もし緩んでいてしまえば、死ぬかもしれないぐらいに大事だ。

 いつもならこんなにキツく縛り上げないのだが、今日は別だ。

 あのロケットを取り返すため、ユウは鬼神にもなれる。

 

 ユウが部屋を出て一階のリビングに行くと、ワンが椅子に座ってテレビを見ていた。

 ただし、映るものは情勢や遺跡のこと、国のことだったりと、お堅いものばかりだ。

 

「おはよう」


「うむ、おはよう」


 ユウが挨拶をすると、ワンは返事をする。

 

「決めたのか?」


「いや、まただ」


 ユウは首を横に振る。

 昨日、彼女に話した。

 相談した。

 それでもまだ、ユウは決め切れていない。

 

「今日、遺跡に行く。そこで俺は決めようと思う。あそこは、俺が最後にいた場所だから」


 ユウはワンに近付き、抱きしめる。

 ワンが椅子に座っているということもあってか、頭がユウの胸に当たった。

 いつもならば拳骨を落としたり投げる所だが、ワンは聖母のような優しい笑みを浮かべ、ユウを抱きしめる。

 

「甘えん坊じゃな」


 ワンがユウの後ろに回した手でポンポン、と背中を優しく叩く。

 





 アスカ成分ならぬワン成分を補給できたユウは、なんとか動き出すことが出来た。

 軽い朝食、サンドイッチを作って二人は外に出る。

 向かう先はギルド。

 そこで作戦の概要は全員に話すらしい。

 

 途中、エンリ達四人と出会って一緒に向かう。

 エンリ達は遺跡を攻略するために、色々と持って行く物があるらしく、バックを背負ってきている。

 色はカラフルなものではなく、地味目な色が多い。

 逆にカラフルな色なら、隠れている時などに見つかりやすく弱点になりやすい。

 人によって大きさが違い、前衛のユズハは戦いの邪魔にならないように小型のバックを背負っている。

 魔法や両手槍で前衛を支援するエンリは、中型のバッグを背負っている。

 

 フィーは小柄ということもあって大きな荷物は持てないが、小型のバックを幾つも背負う。

 聞けば、中にはゾンビ対策の聖水など各種色んな道具が持って来ていると言う。

 

 逆に、リリーは後衛と前衛のユズハが魔物の注意を引く分攻撃を受ける確率が低いため、大型のバックを背負っている。

 左右の腰には各種マガジンが詰まっているが、ゾンビ相手にはそれほど効果がない。

 

 ここ、ユウのバック入れる

 

 聖属性について、ユウは練習してはいるがまだなんともいえない状況だ。

 使いこなそうにも、聖水でしか知ることができないため進歩がまだ見えない。

 これならいっそ、聖属性の大本である光属性を使った方が良いとさえ思い始めていた。

 

 どうしたら聖属性が使えるか。

 今すぐには無理だな。

 聖属性は使えないが、二つの属性は同時使用が可能ということが分かっただけでもマシか。

 

 六人がギルドに入ると、ワンとは途中で分かれた。

 なんでも、やることがあるらしい。

 ギルドの中には隙間がないほどに多くの人間が集まり、多くの探求者達が雑談をしているためか騒音のようだ。

 

 その中で、正面の大きな机を一纏めにした場所にギルドマスターが登ろうとしているのが見えた。

 登っていく姿に、女性の落ち着きやおしとやかさは全くない。

 どちらかというとおっさんくさかった。

 

 女性が登り切ると、ギルドの中に広がっていた騒音が徐々に静まり始め、手にマイクのような物を持った女性が話し始めた。

 

「えー、こほん。五十二名の探求者の皆さん、遺跡攻略に参加してもらいありがとうごいまーす」


 その言い方は軽く、ユウはふざけているのかと感じて他に感じた者がいないか周りに目を配ると、ふざけているのではなくどちらかというと呆れの方が多かった。

 

 慣れているのか……。

 

 その姿にユウはなんとなくだが察しが付くが、話しはまだ始まったばかりだ。

 

「今回は他の探求者達もある程度情報を得ているでしょう。魔物の全てがゾンビでさらに上位種という話ですけど、皆さんは準備してますかー?」

 

 ギルドマスターが尋ねると、周りにいた探求者は頷く。

 

「それは上々。こちらでも一応、心許ない数だけど一人一個の聖水を用意してるから貰ってねー。それと、連絡用の道具もあるんで、それも貸しますよ」


 ここまでギルドが支援することは滅多にない。

 それだけ危険な事だと、探求者達は考えた。

 

「まず、今回の探索の目的はゾンビの殲滅とその原因を調査。ただし、殲滅できないようならしなくてもいいよ。後日、万全の準備をしていけばいいから。それで、今回は三班に分かれて探索するんだけど、そのリーダーとして、三人。ご紹介します。どうぞ!」


 ギルドマスターが両手を右に大きく伸ばすと、右側からワンとグルット、テンペストが現れ、ギルドマスターの前に立つ。

 三人の内、最後の一人を見たユウはその格好に頬を引き攣らせた。

 

 あれはやばい……。

 中二病だ。中二病患者がいるよ。

 

 テンペストの恰好は左目に黒い眼帯に黒い指ぬきのグローブ、黒いマント。

 その姿は正しく中二病しかない。

 

 ユウの動揺にエンリが気づいていると、ギルドマスターが自己紹介を始めた。

 

「みんなも知ってるとおもうけど、一応自己紹介をしておくね。ワンは魔法と接近戦が強いロリッ娘だよ」


「ロリッ娘は余計じゃ」


 ギルドマスターの一言多い自己紹介に、ワンは辟易した顔をする。

 

「次はグルット。腐属性魔法が得意のお爺ちゃん」


「お爺ちゃんとはなんだ!? 吾輩はまだ老けておらんぞ!」


「いえ、師匠はもう歳なんですから無理はしないでください」

 

 グルットが顔を真っ赤にして反論すると、前の方から諭すように話す者がいる。

 人混みで見えず、頭を左右に動かしてなんとか人混みの僅かな隙間から覗く。

 そこにいるのはローブを着た探求者で、師匠と言ったことからグルットの弟子なのだろう。

 

 弟子の言葉を聞き、グルットは面白いという顔をする。

 

「そう言うぐらいだ。吾輩より強いのだろう? ん?」


「いえ、それは……」


 弟子は師匠のグルットの言葉を否定できず、言いにくそうな顔をしていた。

 無理しないでくれと言った手前、グルットの方がまだ強く無理させてしまうため、弟子が代わりにはなれないからだ。

 

「はいはーい。グルットお爺ちゃん、落ち着いてー。お弟子ちゃんを虐めちゃ駄目よ」


 威圧するグルットに、ギルドマスターが仲裁する。

 その言葉、動きにグルットは毒気が抜かれた。

 

「もうよい。話を続けよ」


「はーい。それで最後は神聖シャズヴェリアから来たテンペスト君です。その姿を見れば誰だって分かるでしょう」

 

 ギルドマスターが言うには、中二病の恰好が神聖シャズヴェリアで分かるらしい。

 絶対にその国には行きたくない。

 

「テンペスト君はここに来たのは何かいう事ある?」


 こくり、とテンペストは静かに頷くと口を開く。

 

「我は漆黒を纏いし神の代理人なり」


「「「は?」」」


 誰もがテンペストの言葉を理解できず、口がポカンと開いたままの状態で立ち尽くしていると、ギルドマスターが口を開く。

 

「はーい、テンペスト君ありがとう。では皆さん、頑張っていきましょう。班分けと通信機、聖水はあっちの遺跡でしますよー、通信機はなくされたら困るからねー。馬車は町の外に待たせてるから行っきましょう!」


「「「うぇーい」」」


 集まっていた探求者はやる気のない声が発せられ、周りの探求者が外に出て行き、ユウも外に出ようとすると後ろから服を掴まれた。

 振り向くと、そこにいるのはテンペストだ。

 

「貴様!」

 

 テンペストは威圧のように睨まれた。

 

 何? どうゆうこと?

 

 それがどうしてなのか、全く理解できない。

 そして、テンペストの後ろで彼の保護者である通訳者がニコニコと笑っているのが怖くてしょうがなかった。



長くなるので、分割になります。

最近、こういうのが多い気がします・・・


次回こそ、遺跡に向かいます。

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