第三話 よく見た草原
「はぁー疲れた」
予定外の出来事で、幸か不幸か地獄の猛獣を仲間にしてしまった。体は擦り傷だらけだし、食後に全力で運動しただけあって眠気が襲ってきた。どこを見ても草原しか無くて周りに誰もいない世界で、言葉は話せないけど仲間が出来ただけで多少気持ちが和らいだようだ。
「おいチュン吉、俺は少し寝るから回りを見ててくれよ」
「チュン」
男同士の勝負に勝ったためか、先程からスズメのチュン吉は俺の指示に素直に従っている。
「暗くなる前には起きるから」
スッと目を閉じると、うっすらとまた草原が浮かんでくる。
(一日中この草原しか見ていないから、目を閉じてもこの景色じゃねえか)
寝る前に今後のことを考える。
(箱買いした食料の運搬はチュン吉が仲間になった事で解決したな。あとは今後の食料確保と人がいる場所を探して、とりあえず誰かに出会うまではここがどこなのかって事は置いておくか)
そしてまぶたに焼き付いた草原をしばらく眺めていて、ある事に気付く。
(これ俺が今日見ていた草原と少し違うくね? 左側に小高い丘があって綺麗な青空で、あっよく見たら雲も動いてない)
「ってこれパソコン初期設定の壁紙やないかい!」
俺の一人ツッコミにチュン吉は驚くが、今はかまっていられないので無視して再び目を閉じる。
(ぐぬぬ……)
真ん中にマウスカーソルがあったので、意識して目を動かすとカーソルも一緒に動く。
(なんだこりゃあ。壁紙は初期の草原になっているけど、デスクトップにあるソフトとかショートカットは俺がパソコンに入れていたやつだ。クリックとかも出来るのか?)
とりあえずいつもの流れで、デスクトップにある『伺か』をダブルクリックするように意識してみた。
……。
…………。
「なにも起きないんかい!」
二回目の一人ツッコミをして目を開けると、俺とチュン吉の間に青いリングが現れてクルクル回っていた。
「これって起動中とかに出る砂時計の……」
と言い掛けた途端、青いリングを中心に光が広がりだす。やがて直視できないほどの光が俺達の周囲に広がり、ようやく収まった頃にはその場所に一人の女性が立っていた。
俺はその姿を見て思わず息を呑む。
腰まで流れる、ゾクッとするほど真っ黒で艶のある髪。端正な顔立ちに雪のように白い肌。白と黒の調和はまさに芸術の域で、見るもの全ての心を奪う。薄ピンク色の唇がえろい。
そして、その身を包む服もまた白と黒のメイド服。服の上からでもわかる豊満な胸と、きゅっと締まった腰。女神かよ。
まさに俺の理想。上から下、右から左まで全部百点満点。メイド服のデザインなんかも俺が昔考えて描いた……。
「ご主人様っ!」
バルンッ! いきなりメイドが俺に抱きついてきた。
あぁんっ、おっぱいの効果音って「プルンッ」の上位は「バルンッ」なんだねっ! もう他のことなんでどうでもいい! この体に当たる感触を全力で脳に刻み込んだ。