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第二話 うすしお

「うめえ! ポテチうめえ! んはぁっ! コーラうめえ!」


 空腹も満たされ落ち着いてきたので、さっきの出来事を思い返す。


 あのドアとか猫耳娘は何だったんだ。それにこのダンボールに印字された企業名『gamazonガマゾン』っていう胡散臭い名前にガマガエルのマーク。


 でも商品は俺が昨日時間指定をして注文したものだった。


「もう一回荷物が届けば色々聞けるんだけど、あとは何も注文してないんだよなぁ」


 とりあえず偶然食料と飲み物は確保できたものの、状況はほとんど改善していない。しかも目の前に食料があるから、今はまだいいけど徐々に食料が減っていく不安が追加されて後半精神的にきつそうだな。


「さて、どうする?」

「チュン?」


 ……。



「ってお前なんで大事な食料食べまくってんだよ!!」


「ギギャーーーー!!!」


「ギギャーじゃねえよ! 何ごまかそうとしてんだよ! 俺のポテチだぞふざけんな!」


 さすがに、大好物を無断で食い散らかされて黙っているほど温厚な性格ではない。たとえ相手が地獄の使者であろうと鉄拳による制裁を下す。


「持ってくれよ、俺の右腕……! 数多あまたのボクシング漫画を読んで覚えた必殺の! ボディーブロオオオオ!」


 モフんっ


「眠れ。そして夢の中で悔いるがいい」


「ヂュッ! ヂュヂュ!」

 柔らかい体毛に包まれてノーダメージだったスズメは、逆にその硬いクチバシでつついてきた。


「いでっ! ちょやめっ! ポテチの塩とか油とかつくから!」


 クソが! こうなったら殺し合いだ! 血を見るまで俺は止まらねえ!

 お湯がないので手付かずだったカップラーメンを開け、粉末スープをスズメの目に向かってばら撒く。


「ギギャーーーー!!!」


「ふはは! 目が見えないか? 人間様の強さってのはなぁ、腕力だけじゃねえんだよ!」


 念のため粉末スープを数個持ち、スズメの背中に飛び乗る。

 人間対スズメの、互いに決定打がまったく無い泥仕合いはその後三十分続いた。



***********



「はぁ……はぁ……勝った」


「……チュン」


 スズメはガクンと肩を下げ、きびすを返してその場から飛び去ろうとする。


「おい、どこに行くんだよ」


 スズメは振り返る。


「お前の食べ掛けのポテチ、残さないで最後まで食べて行けよ。輪ゴムとか無いから湿気っちゃうんだよ」


 生まれて初めて全力で勝負をし、お互いを認め合った初めての相手。


「仕方がねえからあとでコーラも飲ませてやるよ。チュン吉」


「チュ……チュン!!」



 この世界で最初の友達は、スズメだった。

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