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第十話 俺の魔法は厨二病

「念のため、詳しく検索してみてはどうでしょうか?」

道中、先程の話を説明していたらサクラはこんな提案をしてきた。


 たしかに、さっきは言語がわからないせいで地名を読めなかったが、今は『言語パック.exe』とかいうのをインストールしたら会話どころか、地図の文字も読めるようになった。地名が分かったのなら試しにネットで検索してみてもいいな。


 検索サイトGappoiガッポイを開いて『エデン バベルの塔』と検索をした。


 Wickypediaウィッキーペディアとかも出てきたし。一体誰がこんなの作ってんだよしかもちゃんと詳しく編集してあるしさ……。

 先程聞いた内容と同じことが書いてあるほかにも様々な情報が書かれていて、中でも特に気になった部分があった。


「塔へ挑む時は剣士や魔法使いなどと、前衛後衛を意識しバランス良くパーティーを組み……って、やっぱり魔法とかもある!」


 魔法の部分をクリックして詳しく見てみる。

『魔法とは、五大元素の火、水、風、土、霊があり、それを元に魔力を用いて行使すること。魔力は、この世界の全てのものが生まれながらに持ち、成長や修練など様々に要因によって最大量が増加する』


 うおーー! 魔法きた! 剣と魔法のファンタジーきた! 痛いのも怖いのも血が出るのも嫌だからダンジョンとかマジ論外だけど、魔法だけは絶対に覚えたい! きっと魔力を込めるほど威力とかも上がってくるはずだけどちょっと待て。


「サクラ、魔力ってもしかして」

「魔力を持つものは『この世のもの全て』で、ご主人様や私は別世界のものなので」


 魔力無いから使えないじゃん……。


 終わった。

 川田ユウヤの異世界生活 〜完〜

 先生の次回作にご期待ください。


「いやだ魔法使いたい! クンッ! ってやって街とか一個師団とか吹き飛ばしたい! クンッ! って!」


「私も魔法の存在までは考えなかったので調べていませんが、この世界と繋がっているご主人様のお力ならあるいは」


 それだ。ネットさえあればネット戦士の俺は無敵だった。


『魔法 最強 インストール フリーソフト』で検索。


「うおーーー! でたーーー! しかも五大元素全部あるし!」

 もちろん速攻で全部インストールした。


――さて、厨二病諸君。


 剣と魔法のファンタジーに憧れたことはあるか? 異世界で無双する自分を妄想し、眠れぬ夜を過ごしたことはあるか?


 私は魔法が好きだ。力がほしい。一騎当千の力が欲しい。この世全てを喰らう力がほしい。


 そして、我が身に宿すは最強の魔法――。


「よろしい、ならば戦争だ」

「……ご主人様?」


「ハッ、すまん。封印したはずの厨二病がついに解き放たれてしまった」

「私はその頃のご主人様も知っているので大丈夫です。突然無言になるので、体調が優れないのかと心配してしまいました」


 落ち着け俺。気を取り直して魔法だ。火水風土霊の五種類あり、霊というのは他の四つ以外のその他属性を全部をまとめてそう呼ぶらしい。とりあえず俺は今全種類使える状態だけど、メインで使う属性は厨二病を患った頃より夢の中で決めている。


 そう、見た目が一番カッコイイ『火属性』だ。


 早速火属性を起動。検索ワードに『最強』と入れただけあって、威力の他にも距離や相性による威力減衰など様々な詳細設定があった。もちろん減衰を全部無しにする。これで相性が悪い水属性相手にも効果は抜群だ。文字通り最強。


 そして俺は見つけてしまった。もう一人の俺が望む悪魔の項目を。



『色の設定』



 うわあああ俺の厨二病がああぁぁぁ! ぐっ、やめろおおおおお! 俺の意識が勝手に、色設定のバーをスライドさせて通常の色から青色にした。


 ま、まぁいつでも変えられるしね。今はもう一人の俺に従おう、お前とは長い付き合いになりそうだな。さてあとは魔法を使うだけだ。


「設定完了っと。魔法の威力がわからないから最初は威力設定を弱めで試し撃ちだ!」


 弱めだと十パーセントくらいか?いや、魔法に目覚める時はやっぱり強力な魔法をブチかました後に手のひらを見て「これが……俺の力……?」とか言ってみたいので三十パーセントに設定する。


「怖いから遠くの何もない場所を狙って、ほいっ」クンッ!


――ゴゴオォォォオオオオオッッ!!!


 何も無い平地に突如、地響きと共に地面から天へと向かう蒼炎の柱が現れた。衝撃で砕かれた大地は一瞬で燃やし尽くされ、渦巻く炎は周りの物全てを巻き込み雲を越え遥か天空を穿つ。地を、空を、天を、全てを蹂躙した炎から数秒遅れて俺の所に届く熱風。



「……」



 静寂が訪れると、何も無い平地には本当に何もかもが無くなっていた。炎が消えた跡には直径約一キロほどの大きな底なしの大穴。


「さ、さささサクラさんっ! えらいこっちゃ!!」

「ご主人様っ! 素敵ですっ!!」


 ……はぁ?


「あの圧倒的な威力と美しい炎、私はあれほど美しいものを見たことがありません! やはり私のご主人様は素晴らしく、そして偉大なお方です!」


 あぁ……とか熱い吐息で体をモジモジさせながらウットリしている。おかげですっかり俺は冷静になった。威力設定は一桁でいいのかもしれない。あとは他の魔法使いを見て微調整をしよう。


 その後土魔法で大穴を埋めて元通りにしたり、他の属性も色々試しながら日が暮れる直前にようやく俺たちはバベルの街に到着した。


 そして、その頃には魔法を使って塔に登りたい気持ちでいっぱいだった。

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