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プロローグ4

決断してからの処理は早かった。



 俺の体は光に包まれ、自転車もこのままでは残せないからと回収したらしい。獣だらけの世界に自転車持って行って役に立つのかな?道とか家とかどんな生活をしてるのかすら分からないのに。



「ではまず夏哉さんの体をケモノ世界へ送る前に、女神アルテミア様に修復していただきます。女神様はお優しい方なので心配はいりませんよ!」


 顔以外光に包まれたままで不安を感じていたらミクが答えてくれた。

そうか、優しい方なのか。そもそもケモノの神ってことはどんな獣なんだろ?


「転送します」


 すーっと身体が空に向かって昇っていく。これで地球ともさよならかぁ。

そう思うと悪い事ばかりじゃなかったな。


母さん、姉さん、バイトの先輩達、お世話になりました!




 どんどん上昇し、ついには大気圏を突破して宇宙から地球を眺めている。

すごい……こんな綺麗だったのか。


 そしてやがて月へ向かっているのが想像出来た。これだけ近づけばさすがに分かる。それに、1人で居る事が多かったから町の図書館で小説や漫画を読み漁ってたんだ。異世界転生モノだっていっぱい読んだ!


 そりゃ、期待しちゃうよなぁ。


「異世界チートか……俺にはどんな力が貰えるのかな?」


 思わず声に出た。


 俺の転送に集中してるのか、ミクには聞かれていなかったようだ。あぶねー、期待しすぎてるかもしれないし、しょぼかったら恥ずかしいよね!




「到着しました。あの奥にいらっしゃるのが女神アルテミア様です!」


 いつの間にか真っ白な空間に切り替わり、奥の椅子に座っている女性が見えた。なんか、遠くからだと人型に見えるな。何の獣だろ?



「ようこそ、夏哉。(わたくし)がアルテミアです。期待に沿えませんが私は姿だけは人と同じで獣に属しません。初めに、チートと呼ばれる力を与える事はできませんのであしからず」


 うわー!さっきの聞かれてたのか!?


 女神っていうぐらいだからそういうのは聞き取れるってことか!

やっぱ余計な事を言うもんじゃないなぁ。そっか、チートは無いのか……


「えーっと、死にかけを助けてくれてありがとうございます。それで、俺はこっちで何かしなきゃなんですかね?魔物退治とか?」


 ストレートで腰よりも更に下まで伸びる綺麗な銀髪を揺らしながら緩やかに首を横に振る。そういう仕草も綺麗だ。


「助けたのはそこのミクに請われて許したまで。その感謝はミクに注いでください。それと、これから向かう世界には魔物も魔王と呼ばれるような邪悪な存在はありません。そして……」


 自身の手をこちらにかざしてふっと息を吹きかける。それだけで俺を包んでいた光が消え、怪我をする前の制服姿に戻っていた。潰れた体も飛び散った血も引きちぎれた服もない。すごい!


「私は知識と慈愛を司る女神。力と繁栄は姉であるアポロニアの領分となります。さすがに姉様の神力をお借りする訳には参りませんので理解ください」


 あちこち体を叩いて確認する俺に、少し困った顔でこちらを見る女神様。そうだそうだ、ちゃんと女神様の話を聞かなきゃ!これから生きていくのに何が必要か、何をしちゃだめか確認大事。


「先程夏哉の体を治す際に、加護を付けておきました。これであちらの世界での言葉に困る事はないでしょう。それと、世界を維持する手伝いをしている精霊達とも会話が出来るようひとつ上の加護になっています。夏哉の体は獣民より劣るでしょうが、精霊達に助けてもらえれば日常に問題はないでしょう。

 それと、私に使える慈愛の加護として”心の癒し手”を付けておきました。夏哉が慈愛を持って撫でた者の心を癒す助けとなるでしょう」



 ふむふむ。ケモノ世界には精霊がいて、俺は話して交渉すれば日常は大丈夫と。あとは心を籠めて撫でれば相手を落ち着かせられるってとこかな?


 くいくい。


 ズボンを引っ張られる感覚に下を見ると、器用に後ろ足だけで立って前足で俺にそっと触れるミクがいた。頭をこちらに差し出して上目遣い……


「撫でろってことか?」


 目を細めてにゃぁと言う。そこは言葉じゃないんだ?



 ミクの前に屈んで、そっと頭を撫でる。気持ちよさそうにするミクが可愛くてさらに撫で続けると、こてんとその場に転がってしまった。


「みゃぁ……ん」


 手を離すなと言わんばかりの前足ホールドで絡みつき、腕を舐めて催促する。うわなんだこれ!?ちょっと効き過ぎじゃないか!?


 ちらっと女神様を見ると、少し頬を赤らめていた。


「ここまで強くしたつもりはなかったのですが……おかしいですね」


 口元を隠してぼそっと呟いた。あ、やっぱこれ強いんだ。


「そ、それでは話の続きに戻りましょう。ミクもそこまでにしておきなさい」




 それからはこれから向かうケモノ世界の説明を順に聞いていった。



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