プロローグ3
「えーっと、ケモノ世界?」
「はい!」
「そこに行くか今決めろってこと?」
「はい!人間は1人もいませんが、獣民はいっぱいです!」
「人、いないんだ……」
「はい!でも、獣民の皆さんは優しい方も多いですよ!」
人はまったくいないし、優しい獣だけじゃないと。なにその世界?
「どんな獣民?がいるの?」
「えっと、ワタシ達のような猫の他にも、犬、馬、鳥……動物と呼ばれる獣民でしたらほぼいますね!」
そこへ俺が行ってどうなるんだろ?
「言葉ってあるの?」
「はい!二柱の女神様による加護で、言葉は通じますよ!」
「食べ物や飲み物は?」
「植物はこちらの世界と同じようなものがありますし、お肉は獲物と呼ばれる生き物を倒すとたまに落ちる仕組みですよ!お肉も食べられます!」
なんかゲームみたいだなぁ。あとこの子?テンション高い!
「ちなみに、行かなかったら俺はどうなるの?」
「……それは、このままあの光に轢かれて……死にます」
今までピンと立っていた耳が垂れる。なんか悪い事したみたいだ。
「じゃあ、そのケモノ世界に行ったら、この世界の俺はどうなるの?」
「えっと、存在そのものが消えます……誰の記憶・記録からも」
もし死んだら家族やバイトの先輩達は悲しんでくれるのかなぁ?でも、存在が消えればもし悲しむ人がいても、それに縛られずにいられるのか。母さんや姉さんにはいいかもしれない。
「まだ時間ある?もうちょっと聞きたいんだけど」
「いえ、そんなに時間はありません。いつまでもこの停滞にいる訳にはいかないんです。この世界の神に怒られてしまうので……」
やば、時間制限ありか!先にそれを聞けばよかった!
でももう答えは固まりつつある。どうせ学校ではいい事なかったし、いなくなったら記憶からも消えるっていうし、ただ死ぬよりも俺にもいいのかもしれない。
「あ、そうだ。その世界に飛ばされた後ってどう生活すればいいの?」
「それでしたら大丈夫です!ワタシがサポートしますから!」
さっきまで垂れていた耳がぴーんと立ち、ついでに尻尾まで真っ直ぐになっていた。表情というか、表現豊かな子だなぁ。三毛猫だからメス……なんだよね?
「今更だけど、君の名前を聞いていい?」
「あ、すみません!ワタシったら自己紹介もしてませんでしたね!ワタシは猫族の三毛猫で、名をミクといいます。性別は女ですよ」
ぺこりとお辞儀をする。女だという時に首を傾げるの可愛い。猫だけど。
「ミクか。いい名前だね。俺の事は知ってるみたいだけど、鈴川夏哉。今は死にかけた男だよ。それと、決めた」
潰れた体で姿勢を正すなんて出来ないけど、気持ちだけは正して答える。
「ミク達がいるケモノ世界へ連れて行って欲しい!」
一瞬固まったミクが、俺の顔に飛びついて自身の顔をこすり付けてくる。これ、爪出してないかな?なんか前足でがっちり掴まれて首が動けなくなったんだけど!?