ミクの故郷 神殿3
関係ないのですが、カゴハラ復旧頑張って!
「まずは、アルテミア様の加護を受けている事を、
そのお力を頂いている事を感じてみましょう」
久しぶりに教壇に立つと言っていたミク。
つまり、これは初めてじゃなくここにいた頃にはよくある光景だったらしい。
いつもの元気一杯な感じじゃなくて、落ち着いた声で話す。
広い講堂だけど、一番後ろで見学してる俺にもよく聞こえる。
響き渡る構造なのか、これも精霊の力ってのを使ってるのか……
んー、俺にはよく分からないな。
分かるのは、立ち見を含めて100人以上が受講している中で、
俺と目が合うと慌てて視線を逸らせてる。
俺に見られるのは恥ずかしいらしい。
そんなミクの姿は神殿長には楽しいみたいで、
わざと手を振ってミクの視線を俺の方に向けて遊んでるし。
「もー!神殿長様ひどいです!」
無事に講師を務め、あまり人目の多い場所は避けた方がいいと、
ミクと俺は講師用の控え室で外が静かになるのを待っていた。
その神殿長さんは、ミクをからかって満足したところを副神殿長に捕まり、
業務へと連行されていった。
あの人……いや、獣民か。
仕事サボって見に来てたのかよ!
「まぁまぁ。大変そうだったけど、
ミクはちゃんと講師しえたと思うぞ?いつもと違って凛々しかったよ」
「えっ!そ、そうですか?えへへ〜」
いつもは凛々しくないと言ってるんだが……
うん、まったく気付いてないな!
「ふわっ!?ふわぁ〜〜〜」
おっと。そんなとこも可愛いなーって思ってたら、
無意識に頭を撫でてたわ。
うーん……元の世界じゃ家族以外とまともに話すこと無かったから、
ちゃんと聞いてちゃんと反応してくれるのが嬉しくてつい、ね。
「あ……え、えっと、そろそろ外も落ち着いたようですから、
神殿の中を見て回りませんか?」
撫でるのをやめると名残惜しそうな顔を向けてくる。
でもそのおかげでこれからの予定を思い出したらしい。
「えーっと、まずはアルテミア様の神像を拝観しましょう!」
三毛猫の姿になったミクは、夏哉の左腕に収まっている。
獣人の姿だと目立ってしまうのは分かったから俺から提案してみた。
「こっちでいいの?」
「はい!別の建物になるので、まずは学舎から出て、
ここからも見えるあの一番高い建物を目指してください」
ぐっと首を伸ばしたミクが俺の二の腕に前足をかけて左を向く。
ああ、あれかー。建物も高いが、傍にある木も高いなぁ。
「そういやここはアルテミア様、つまり月光神派なんだっけ」
「はい。ですからアルテミア様の神像が崇められているんですよ」
馬車でこの神殿のある山に来たときは北側からだったから見えなかったけど、南側は全部神殿関連の施設がいっぱいだ。
建物の造りは和風の神社に近い感じだ。トーキョからここに来るまで石や木の洋風な家ばかりだったから、こうやってじっくりと眺めるとここだけ別世界みたいだ。
……いや、この世界自体が俺には別世界なんだけどね!
左右に伸びる木々の間にある階段を上り、
入口前にある受付で拝観許可を貰った。
獣民が途切れる事無く続く列。
でも決して騒いだり走ったりする者はいない。
1組ずつ拝観させるらしく、少しして俺達の番になった。
入り口係らしい巫女服を着た2足立ちの馬の獣民が、大きな扉を開けて中へと案内する。
「おー!アルテミア様に似てる!よく再現できたなぁ」
「当時の彫刻家の皆様が心血を注いだと言われています。
ワタシもここの神像は本当に素晴らしいと思います」
神像の前だからか、ミクが静かに答える。
今は俺の腕から降りて、獣人モードだ。
「さ。お祈りをさせていただきましょう」
「そうだな」
ミクのやり方を真似ておけばいいとのことで、
まず神像の前で礼と2拍したあと手を合わせる。
……あ、これ日本の神社と同じやつだ。
これなら俺も知ってるぞ!
(アルテミア様、現在無事にここまで来れました。
こっちの世界へ受け入れて下さってありがとうございます)
手を合わせて、祈りというよりお礼の言葉を贈る。
隣のミクを見ると、巫女服姿で祈る姿はこの場にぴったりだ。
自然と微笑んでしまうのを誤魔化すように、
また神像の前に手を合わせて、この幸せが続くよう祈った。
『夏哉がこの世界で幸福であれば、私も喜ばしいのですよ』
「えっ?」
「アルテミア様がお答え下さったんです」
「えっ!?直接通じてるの!?」
「はい。神殿の、さらに神像の前での祈りは特にです」
『ええ。夏哉……今はカヤでしたね。
カヤの未来も幸福であるなら、私も嬉しいわ』
気のせいか、神像も微笑んだ気がした。
よく見たら神像がうっすら光ってる?
『ミク、これはあなたの努力と献身が手繰り寄せた絆。
これからは自身の幸せを優先させなさい』
「はい!ありがとうございます!
でも、これまでどおりのワタシでいる事が幸せですので!」
『ふふっ。あなたは変わらないわね。それとカヤ、』
「は、はい!」
『姉様の後始末の苦労を分かってもらえて嬉しいわ。
もし可能であれば、旅先での姉様のおかしな影響は直してください。
私が直接行うわけにはいきませんから……』
ああ、やっぱり苦労してたのか!
それと、神殿じゃなくても俺の心の声はアルテミア様に届いていたのか!
「はい!あまりにもおかしと思ったら、やってみます!」
『感謝します。それでは、
あまり長くここに顕現させるのはよくありませんので、ここまでにしましょう。
ミクとカヤに幸多かれ』
すーっと神像から光が消えていく。
「ああっ!アルテミア様が長時間応じてくださるとは!?
ミク様だけでなく、やはり獣人であるカヤ様も眷属の輪に入られていたのですね!」
入り口に居た馬巫女さんが膝をついてこちらを拝む。
正確には、俺達と神像を、だが。
「待ってください!俺、そんな大層なモンじゃないですから!」
おお、と嗚咽のような声をこぼしながらなんとか立ち上がらせると、
奥ゆかしいだの慈悲深いだの勝手に株が上がってく……
マジでそんなんじゃないのに!
そんなのが広まっちゃったらもう誤解を解くなんて難しくなるぞ!?
特別な力も知恵もないんだからやばいって!
なんとか退室用の扉へ案内してもらって、
そそくさと逃げるようにこの場を後にした。




