馬車旅1
カッポカッポとパカラパカラが不規則に聞こえる馬足。
馬車の中は子馬や犬、猫、鳥と様々だが、大型は牛が2頭くらいであとは中型〜小型ばかりが全部で10頭以上。小型以外は皆2足で椅子に座っているため詰め込んだような狭さは無い。そしてこの馬車は指定席なので当然2人の席も確保されている。
でも、何故かミクは俺の膝の上にいる。
と言っても、猫型に戻っているので見た目には問題ない。
……はずだ。
なんかやたらと擦り寄って甘えてくるのが気になって仕方ないわけで。
そう、周りの生温かい視線が一番気になるわ!ニヤニヤこっちみんな!
(俺が気にしすぎなのかなぁ?)
そう思いながら片手でミクを撫で、窓の外の景色を眺めていた。
「おおー速い速い!」
馬車ってもっとゆっくりなイメージあったけど、これって自転車より速いんじゃないか?
さすがに車よりは遅いけど、それでもかなりの速度だ!
えーっと、確か地元から都心まで電車で2時間だったはず。
あれが時速80kmくらいだとして、160kmくらいか。
この馬車が時速30kmくらいだとすると、休憩なしでいけたら5時間くらい?
半日かかるって言ってたから休憩も同じくらいの時間休憩するのかもしれないな。
「カヤさん、どうかしましたか?」
ぼんやり計算していたら、どうやら撫でる手が止まってたみたいだ。
ミクが催促するように手に頭を押し付けてくる。
「どれくらいで着くのかって頭の中で計算してみたんだよ」
「道中の休憩で名産もありますから、そちらも楽しんでもらえたら嬉しいです〜」
また撫でてもらえるのが嬉しいのか、弛緩した声でミクが答えた。
「へぇ〜。じゃあそっちも楽しみにしてるよ」
「はーい。んふぅ〜……」
いくつかの町を横切り、大きな川はかなり立派な石橋を渡った。
まるでテレビで見たヨーロッパの中世の橋みたいだ!
「凄い……こんな大きな石橋、初めて見た」
「そうか、兄さんは初めて見たのか。
ここはナカヤマドーだから道も整ってるんだ。だから橋も立派なもんを建てたんだよ。
俺もここに石材を運んだんだ。懐かしいねぇ」
声からするとおじさん。
黄昏ながら橋を見つめる牛の獣民。
「へぇ……そうだったんですか。運ぶ量も凄かったんだろうなぁ」
こう見ると、ちゃんと表情ってあるんだなぁ。
なんて、別な事を考えちゃってぼーっと橋を見てた。
って、また何か変な事言ってたよな?
「ここ、ナカヤマドーって言うんですか?」
「ああ、この道の名前だな。ナカヤマドーだ」
「ナカセンドーじゃないんですね?」
「んー?聞いた事ないな」
「そうですか……またですか……」
どうせこれもアポロニア様命名ってやつだろう。
きっと中山道の読み方間違ったんだろうなぁ。
うん、これからもこういったのがいっぱい出てくるんだ。
どうせそうなんでしょう?きっとそうだ!
「坊主。もうすぐネオサイタマの中心に着くから1度目の休憩だ。
客待ちするから、土産や手洗いもゆっくりでいいからな」
「あ、そうか。そこも馬車ターミナルなんですね」
「ああそうだ。ウツミへの乗り換えもいるからな!」
そうして到着したおそらく大宮は、初めのターミナル並に活気に溢れていた。
県の中心だからそれもそうか。県じゃないけど。
「ミクはどうする?」
「はい、せっかくですのでご案内しますよ?
席は指定ですから、居なくても券を無くさなければ大丈夫です!」
「そうだなぁ。見に行ってみるか」
「はい!」
ミクは返事をしてぴょんと俺の膝から飛び降りた。
それと同時に光を纏って獣人へと変化する。
うん、やっぱり見えないな。
アニメもだけど、謎光さんいい仕事しすぎです。
「では、お手洗いを済ませてから名産品を見に行きましょう!」
「りょーかい」
トイレは思ったほど混雑はなく、お互いすぐに済ませて出てくる。
トーキョを出発して1時間じゃ溜まってないしね。
そして道の駅みたいに雑多に並ぶ野菜や肉、酒、お菓子が見えた。
「ここの名産はお菓子でして、」
「まさかまんじゅうとか言わないよな?」
「あれ?ご存知でしたか?」
「……風が語りかけてきてな」
「すごいです!もう風の精霊さんと仲良しなんですか!?」
いや、違うんだが。
ミクには分からなかったか。滑った感ぱねぇ……
「ま、まぁいいじゃないか!そろそろ戻ろうか!」
「炭酸果汁水もあるので、それだけ買って行きましょうか?
確か炭酸お好きでしたよね」
「おー、そんなことも知ってるのか。うん、炭酸好きだから買って行こう」
「はい!オススメはですね〜」
何で知ってるのかちょっと気になったけど、
この世界でも炭酸が飲めるのは嬉しいから別にいいや。
2人で仲良く炭酸水を買い馬車に戻る。
お互いのジュースを交換するのをミクにさらっとされた。
まさかの関節キスイベント、だと!?
しかもミクは照れた様子も無い。ここでは普通なのか?
実は夏哉は気付かなかっただけで、
夏哉が口をつけた瞬間小さくガッツポーズをするミクがいた。
そしてミクも夏哉のストローに口をつける。
真っ赤な顔でドキドキしながら飲むミク。
それを見せられる馬車の中の獣民は、
全員砂を吐く思いだったのは言うまでも無い……
(((ぐおおおおおおお!!!)))
特に独身獣民には大ダメージだった!




