馬車ターミナル2
幌付きで窓も備わっている。これなら雨でも心配ない。
何より車体が観光バス並みに大きいけど、これを6頭だけで引けるの?
しかも車輪を見ると、ちゃんとゴムタイヤだ!ちらっと底を覗いたら結構金属使ってるんだな。
バネも見えたし、これなら揺れは少なそうだ。
「おお、グンマー行きって書いてあるね。結構大きいなぁ」
「たぶんグンマーに里帰りされる方が多いみたいですね」
「グンマーは馬種が自治区の長なんだよね?」
「はい!種族としては牛族や犬族の方が多いんですけど。
すみませーん!グンマー行きを2枚お願いします!」
馬車の前に立つ馬にミクが声を掛けた。
立つといっても服を着て2足で、という意味だ。でかい……
「おお!獣人のお客とは縁起がいいね〜
……ん?坊主、夕べの宿のか!ハッハー、これも旅の縁ってやつだな!」
「えーっと……もしかして、お風呂で?」
「おうそうだ。体洗うの手伝ってもらって助かったぞ!」
あ、やっぱりそうだったのか。
いっぱい並ばれたから正直誰が誰だか分からないんだけどね。
「それにしても、6頭でこれだけ大きな車を引いて走れるんですね。すごいなぁ」
誰だかよく分からないことを突っ込まれる前に話題転換だ!
「ん?坊主は馬車は初めてなのか?珍しいな。
これくらいは鍛えた体にはなんでもないぞ!さすがに山越えするには車がでかすぎるがな!」
ミクがお金を支払ってチケットを受け取る間、
このリーダーのような馬族と馬車について色々聞いてみた。
サスペンションと言われるバネやゴムタイヤはアルテミア様から授かった知識による技術らしい。
ついでに、劣化したゴムも燃やさず再利用出来るよう知識と管理も技術者に伝わっているそうだ。
話している間にも続々と客がチケットを買いに来ていた。
満員になったら即出発というシステム。乗れなくてもすぐに次の馬車がここに着く。
タクシー乗り場みたいなもんかな?
「カヤさーん!もうそろそろですから、お手洗いや買い物はお早めに済ませてくださいねー!」
「わかったー!」
水や食べ物を買いに行くというミクに慌ててついて行く。
「坊主、いそげよー!」
さっきの馬の獣民も急かしてくる。結構やばいのかも?
トイレと飲食物の確保を手早く済ませ、ミクと2人で馬車に乗り込む。
席は一番前にしてもらった。もしもの乗り物酔い対策だ。
そして先程のおじさん馬ともう1頭が御者台に立ち、残りの6頭が次々と4足歩行へと変形した。
……変形?いやでもあれは変形としか。
こう、トランスフォームするロボットみたいに。
あれ、骨や関節もなんか変わってるよね!?
2足と4足の変わり方なんて初めて見たんだけど、なんだあれ……
そういやミクが獣人になる時はこう、光を纏って変わってたよな?
「なあミク」
「なんでしょう?」
「2足の獣民が4足になるのってあんな感じなの?」
「はい。みなさんああいった風に変わりますね」
「でもミクが獣人になる時って光ってたよね」
「あれは……その、裸を見られたら恥ずかしいので、精霊さんに助けてもらってるんですよぉ」
「そ、そうか。精霊さんか」
そういやいまいち精霊って分かってないんだけど、
ミクのあの光はアニメでよくある謎光や謎煙か……そうか……
いけない。
思考が脱線してしまった。
「あとさ、馬車の御者台って意味あるの?」
そう。6頭の馬が自らの手で鞍を装着し、馬車を引く。
その御者台では2足歩行状態の馬が2頭座っている。
もちろん手綱も鞭もない。
「そこは御者台ではないですよ。従業員の待機席なんです。
途中の休憩で2頭ずつ交代しながら走るんです」
ああー。馬車を引く馬自体に意思があるんだから、行き先も
状況判断もお任せなのか!それなら御者台の意味もないか。納得だ!
「それに、もし獲物が出た時に真っ先に狩りに行ける様に武器もそばに置いてあるんです。
護衛にもなってるんですよ〜」
馬族の方達はお強いですから、
とミクが言った時に前に座る2頭が筋肉アピールしてきた。むさ苦しいな!
あなたたち、ずっと聞き耳立ててたんですね?
随分と軽い獣民だなぁと呆れつつも、雑談のおかげでかなりリラックスできた。
せっかくの馬車旅、楽しまないとね!
そして鞍の装着が終わった馬車は、リーダーの掛け声とともに出発したのだった。




