初めてのケモノ世界7
3階に上がって一番奥。
ミクに案内された部屋に入ると……
テーブルのある部屋と、
その奥には、ベッドが置かれた部屋が見える。
その寝室が2部屋。”しっかりと”壁で区切られていた。
「なるほどね!」
「どうかしましたか?」
テーブルでお茶を注いでいたミクが不思議そうにこちらを向く。
いやまさか同じベッドで寝ると思ってたなんて言えないよね!
「ああいや、なんでもない」
……ん?じゃあミクは何を恥ずかしがってたんだ?
「そういやミクは、寝る時何が見られたら恥ずかしいの?」
「え!?だって……寝顔見られたら、恥ずかしいですよぉ……」
ちょっとお茶をこぼしてしまったミクが、テーブルを拭きながら答える。
寝顔かぁ。それはそれで見てみたいなぁ。
ラッキースケベを期待してたなんてバレても困るので、
色々とこのセカイの事を聞いて時間を過ごした。
晩ご飯はクリームシチュー。
すっごく美味かったけど、この牛乳ってまさかおかみさん……?
いや、これもマナーと怖さの両方で聞けなかったけどね!
俺チキンだよね、知ってた!周り鳥だらけだったけどね!
食べた後は風呂ってことで、せっかくミクが大浴場付の宿を
取ってくれたからゆっくり浸かったんだが……
「まさか牛や馬を洗うの手伝わされるとは思わなかったわ」
丁度洗ってくれる2足歩行の獣民(従業員?)がいなくて難儀してたの見て思わずやりましょうか?
と言っちゃったら、次々並ばれて参った。
まさか鳥まで並ぶとは思わないじゃん?
大きさの違いと力加減でかなりビクビクしたわー。
「あ、おかえりなさい。いい湯加減でした?」
しっとりと濡れた金色の混じった黒髪をタオルで拭くミク。
湯上りの浴衣で幾分上気した顔をこちらに向ける姿はドキッとする。
「あ、ああうん。こっちは獣民がいっぱいで騒がしかったなぁ」
「そうだったんですか。
女湯は混んでなかったんですけど、それではゆっくり浸かれなかったです?」
「さっぱりしたし、大丈夫だよ」
近くにあった水を飲んでちょっと落ち着いた。うん、大丈夫。
他愛ない話、この世界の話、疑問質問……
嫌な顔せず受け答えをしてくれるミク。ちょっと聞き過ぎたかな?
「あ、もうこんな時間か」
テーブルに置いてた腕時計はすでに22時。
普段の生活だったらちょうどバイトが終わった頃。
でもこの世界だと燭台の火をいくつか置いて明かりを確保している。
蝋燭は個人の持ち込みだから、あまり無駄遣いするのももったいないな。
「今日はもう休まれますか?」
「そうしよう。明日は朝早いんだよね?ならゆっくり休もう」
「はい!明日は半日馬車ですからね!」
半日か……乗り物酔い、大丈夫かなぁ?あとは座り心地か。
そんな事を思いながら今日の自分のベッドとなった右の部屋へ行く。
「……ん?なんでミクもこっちの部屋来てるの!?」
「お休みになるまで傍にいますから!」
「いやいや、ちゃんと自分のベッドに行ってね?1人でも寝られるから!」
「いえいえ!これもワタシの務めですから!」
よくわからない押し問答のような会話を繰り返し、
なんとかミクを自身の部屋へと送っていった。すぐ隣だけど。
「それではカヤさん、おやすみなさい」
「おやすみ。もし俺が朝起きてなかったら叩き起こしてね」
「叩きませんけど……ちゃんと起こしますね!」
こうして、初めてのケモノ世界の1日は終わった。
だた……
夜中、トイレに起きたらベッドの縁でミクが俺の寝顔を見てた……
暗い部屋の月明かりで、ミクの目が光ってて超びびったけどね!
なんで居るか聞いたら「寝顔が見たかった」って言われてもさ、
それ、自分は見られたくないって言ってませんでしたか?
「そこはそれなんですよー」
「いいから早く自分の部屋に戻りなさい!」
こうして今度こそ1日目が終わった。




