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初めてのケモノ世界5

「ミクの故郷って俺が居た世界と同じような場所ってことはグンマでいいの?」


「はい、グンマーですね!」


 ……ん?


「グンマ、だよね?」


「グンマーですね!」


「……あのさ、なんで語尾伸ばすの?」


「えっと、グンマーという地名だから?」


 グンマー……語尾伸ばすのがデフォ、だと?



「ミク、もっかい地図見せてくれ」


「はい!ここがカントー地方ですね!」


 何度か見せてもらっている地図をじっくりと見る。

地名は書かれていないが境界線はちゃんと書いてある。


 よし、別に変わった所は無いな。


「ここがトーキョでいいんだよね?」


「はい!ここから馬車でグンマーに向かうので、今すぐ出発ですとまずはネオサイタマで1泊する事になりますね!トーキョで泊まって朝一で出発したほうが」


「まてまて。ネオサイタマ?なんだその厨二病みたいな地名は!?」


「?」


 何を言われてるのか分からず首を傾げるミク。

くそ!背の低い猫耳がやるとやっぱ可愛いな!じゃなくて……



「あ、あー……ここがネオサイタマなんだな?じゃあここは?」


 地図の千葉を指差して聞いてみる。


「ここはチーバですね!」


 はい、なんかゆるいのが出て来そうなのいただきましたー。


「じゃあここは?」


 次は茨城を指差す。バラキか?イバラ?いや、イーバとか。



「ミートですね!」


 なんで肉になるんだよ!?しかも県名から取ってないじゃん!


「そしてこっちがウツミでこっちがハマーですね!」


 栃木も県名からじゃないし、神奈川に至っては車になってた。

そして命名はやっぱりアポロニア様だそうだ。


 あの女神様適当にもほどがあるぞ!?

他の地名を考えすぎて飽きたのか、初めから適当命名だったのか、どっちもありえそうでなんとも言えないわ……




 ミクと相談した結果、馬車ターミナルっていうのがあるジャポニ橋の側にある宿で1泊して翌朝出発予定にした。ジャポニ橋って日本橋のことなんだろうな。あれか、日本の道はここからってのを守ったのか?変に律儀というかなんというか。


 1時間くらいかけてのんびりと切り開かれた丘をいくつか越えると、その先に建物が密集した町が見えてきた。あれがジャポニ橋だろう。

 歩く道がやたらと丘の上り下りの坂だらけなのは、東京の建物がすべて無くなったらこんな感じなんだろう。坂多過ぎ。平原ってあまりないもんなんだな。


 ふう。やっと次の町に到着だ。

バイト始めてからはジョギングしてないから体鈍ったかなぁ?




「へぇ。馬車ターミナルが近いだけあってこの辺りは宿と飯屋がいっぱいあるのか。でもさっき飯だったし夕飯にはまだ早いし、どこかで時間潰すか」


「今は……15時ですから宿にチェックインだけ済ませて周りを観光しましょう!」


 ミクが胸元から懐中時計を取り出して時間を見る。


「時計ってこっちも変わらない、いや、時間も変わらない、のか?」


「時間といいますと……ああ、1日は24時間、1年は365日、の事ですか?それなら同じですよ!だから夏……カヤさんの腕時計もそのまま持ち込めたんです。携帯はさすがに地球の神から反対されまして……」


 俺がこの世界に移る時鞄が無かったから気にしてなかったんだが、ミクの方は気にしてたんだな。落ち込むと耳が垂れるから隠し事苦手なんだろう。よしよし。

 優しく撫でてやると徐々に耳に力が入り、今度は別な意味で垂れる。おっと。これ以上はダメだ!



 俺の腕時計はバイトの時便利だから着けてたやつだ。

自巻きだから電池交換もない。そのおかげで持ち込みが許されたのかね?


「スマフォなんてこっちに持ち込んでもネットも通話も、電気だってないんだからいらないよ。それより、ミクの時計もいいね。こっちにもそういう時計あったんだ」


「はい!これは手先の器用なフクロネズミ族の作品なんですよ!」


「へぇ、時計職人てわけか」


「時計以外にも鍛冶師のオリックス族と共同で様々な物を作ってますよ」


「オリックス?」


 脳内では野球しか出て来ないわ……

どの道、フクロネズミってのも分からんけどね!


「牛種のオリックス族ですね。暑さに強い一族ですよ!」


 知らない動物がこれからも出てくるんだろうなぁ。

あ、動物っていうかここはケモノ世界だっけ。




「さぁ、先に宿を取りましょう!

いい宿は早く埋まってしまいますからね!」


 そう言って俺の手を掴んでぐいぐい引っ張っていく。

ミクってこういうスキンシップ多いよなぁ……


 彼女?幼馴染もいなければ、学校ではいないものとされてた俺にいるわけないじゃん!姉と母だけの家庭だったから苦手ってわけじゃないけどさ。



 そんな俺は、若干強張ってしまった体がミクにバレませんようにと思いつつ、

引っ張られるままに町の中へ入っていった。


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