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初めてのケモノ世界4

「うん、まぁ鉄筋やビルを期待していたわけじゃないんだけどね」


 塔に着く前に見えてしまった。


 方角からすると東京タワーのある位置。


 そこに、天にも届けよとばかりに伸びる塔。





「あれは何度も崩れてはまた獣民が建ててるんですよ!」


 今回は思ったより高くいってますね〜などと、ミクが暢気に答える。


「へぇ。じゃあいつかは天界?女神様のとこ?に届くのかなぁ」


「あ、それはないです!

あまりに高く積むとアポロニア様がじゃまだー!って倒しちゃうんです」


 三途の川の石積みじゃないんだからさぁ……


 アポロニア様は女神なのに大人気ないなって思ってたら、

太陽神派の獣民は、倒されるのを含めて楽しんで建てているらしい。


 うん、まったく分からん!



「では塔へ」


「いや、見れたからいい!」


「まだ遠いですよ?」


「だって崩れるんなら危ないじゃん」


「そこはアポロニア様が誰も怪我させずに綺麗に倒しますから!」


 なんでそこで無駄に力入れて綺麗に倒すんだろうねぇ!?


「あー、それならさ、どこか美味い飯屋行こうよ。何か腹減ってきたし」


 もう塔はいいです。




「おお、これだよこれ!」


 塔へ行かずに市場を散策してみたら、見た目はどの食材も同じに見えた。

まぁ裏世界として作ったって言うんだからそんなに変えてないんだろう。


 そして見つけたのが海鮮丼!海が近いだけあって魚介類がよく出回るって話だ。

なんでもツキヂから仕入れてるって胸を張って丼を出す割烹着のゴリラ店員。


店に入った時、

「ラッシャーイ!」

って大声で言われた時は「何故ゴリラ?」なんて思ったけど、そんなことはいいんだ!

出てきた丼がぷりっぷりで脂が照り返す鮮度のよさ。それで十分だ!


 唯一残念なのは箸が置いてないことだ。

やっぱり猿種のような人と同じ手を持つ獣民は少ないらしく、箸じゃ食べられないって使われないそうだ。


 そもそも、スプーンは置いてあるけどどうやって持つの……?



 チラッ


「もっきゅもっきゅ」


 ヤギっぽい奴が椅子に座って丼に直接顔突っ込んでた。



 チラッ


「ガッガッ」


 牛っぽい奴は座敷かと思ったら4足歩行の獣民用スペースで、

丼じゃなくて桶のような器に出された物を食べていた。


 スプーンすら使ってねぇじゃん!



「皆醤油も使わないんだな……」


「素材の味を楽しんでるんだよ」


 ぼそっと言ったらヤギ(声からするとおっさんか?)が答えた。


「へぇ。草食とか肉食って区別もないんすね」


「そういった拘りを持つ獣民もいるさ。俺は女神様が下さった食材を無駄にしたくないと思って食べたら美味くてハマったんだよ」


 顎鬚に付いた米粒を器用に舌で舐め取って、


「おやじ、ごちそうさん。それじゃ若いの、食事を中断させて悪かったな」


「こっちこそ話し相手ありがとうございました」


 器用に蹄で小袋から硬貨を出して手(前足?)を振って出て行くヤギ。



「うん、ほんとに美味い」


「ワタシもお魚大好きです!故郷は海から遠いので、ここまでいい鮮度の物は故郷を出てから食べられたんですよ〜」


 あー、ミクはこっちの世界に来ても俺と同じ出身地扱いって言ってたから、

それじゃ海は近くにないよなぁ。


「あ……こっちの世界での地元行きたいな。ミクの故郷も見てみたい」


 獣人になっているミクはスプーンで食べていたが、

はたと止まってこちらを見た。何か変な事言ったっけ?


「はい!是非うちの親にも紹介させてください!

夏哉さ……カヤさんなら大歓迎ですよ!ああ、母さん喜ぶだろうなぁ」


「よかったな、嬢ちゃん。坊主、仲良くしてやれよ!」


「お客さん、これはあっしから」


 牛の客とゴリラ店員からも喜ばれた。よく分からん。

ミクはニコニコと上機嫌でもらった刺身を頬張っている。



 ……まあいいか。

とりあえず次の目的地が決まった。


 北カントー地方へ行ってみよう!






 夏哉は知らない。


 獣民にとって「相手の故郷へ挨拶に行きたい」と言うのは鉄板のプロポーズであることを。

来たばかりの夏哉では、そりゃあ知る由も無いわけで。



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