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otomarikai

作者: azurey
掲載日:2014/08/23

 林道によく知る人影が見える。

「コウくん、おっはよ~!」

 今日の雲ひとつ無い青空のような、元気な挨拶が響いてきた。

 天高く掲げた腕をぶんぶん振って、イチカはにぱーっと白い歯を見せる。

「今日に限って早いじゃねえかよ」

「それがトモダチを待たせた人の態度ですかー」

 イチカがほっぺたをつつこうとしたのを肩透かす。

「いつも待ってやってんのは、俺だよな~」

 踏鞴を踏んでいたイチカの頭をぐりぐりしてやる。

「ぃたたっ、いたたっ、ひどいよーやめてよーコウくん」

 イチカの声に驚いてか一匹の蝉が、手前の木から飛び去った。

 夏の盛りだ。

 今日と明日、村役場では年に一度のお泊り会がある。寺子屋の矢崎先生主催の一大イベントだ。

 いつもは眠い目をこすりながら、約束の時間を平然とオーバーするイチカがこんなにも来るのが早いのはそのせいだろう。

 イチカは今日をそんなにも楽しみにしていたのか、ぐりぐりされても、笑みがこぼれる。

「――ぷ、うふっ、あはははは!」

「うわっ!なんだよ突然笑い出して、ひくわーお願いだから近寄らないで」

 わざと冷たい視線をイチカに送ってから、俺は走り出した。

「もうーコウくんのいじわるいじわるー」

 そう言いながら、俺の背中をべたべたさわってくる。

「勝手に触らないで、菌がうつるー」

「なんでなんで、べつにいいじゃんーイチカとコウくんのなかでしょ!」

イチカをからかいながらも、俺も胸の奥から込み上げる笑いを必死に耐えていた。

なぜって今日からお泊り会。朝から晩まで友達と一緒に生活するのだ。

楽しくないはずがないじゃないか!

一週間も前から、何をするかなど想像してきた。きっと今年もおもしろいことが起こるぞ!

 そう思うと、自然と俺の口からも笑い声が聞こえてくるのだ。



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